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数日、村の近くにテントを張って子供達にいろいろ教えていた。
だが、目的も達成したし流石にいつまでもこの村にいるわけには行かない。
「お前ら本当行っちまうのか?」
「ああ。この村にもうようは無いからな。」
「勝ち逃げなんて許さねえぞ!」
「俺に負けるようじゃ、まだまだだな。」
「いっちゃいやだ〜〜」
「本当にごめんね。でもお姉さんたちにも用事があるから。」
「お姉さんに言われたように、魔法頑張って。ね。一人でも頑張るんでしょ。」
流石に子供達に肩入れしすぎたか……
子供達の親がなんとか宥めてやっと出発できる。
この馬車を逃せば次は五日後、そこまで付き合ってはられない。
「レイさん、セレナさん、シエラさん。ありがとうございました。」
「いえいえ、私達も初めてのダンジョンがあれで……よくはなかったですけど、これも経験です。」
「私も騙すようなマネをして申し訳ありませんでした。ボスがボスですので……」
「仕方ないさ。それを知ってちゃ誰も来たがらないだろうし。」
「ありがとうございます。」
これも冒険の一つ。
今度は本命、『ダイナ』に潜る。気を引き締めたかないとな。
村を出て早一日
何事もなく、平和な日だ。
暇だったので馬車の人と話していたら面白いことがわかった。
盗賊が自治兵のような役割をしていることだ。
国といってもいくらでも兵士がいるわけではなく、当然、兵だけでは国民の安全を守れない。
そのため、盗賊が街道に出た魔物を狩り、道の安全、国民の安全に役立っているらしい。
だから、道の安全を確保している盗賊にはお金を払って通してもらっているようだ。
もちろん盗賊の頭が変わり、料金が高くなったり、好き勝手に馬車や行商を襲う盗賊もあるんだとか。
そういう時にギルドから盗賊の討伐依頼がくる。
なら冒険者に頼めばいいと思うかもしれないが、そうすると依頼という形になり、失敗すれば当然罰金、ギルドの評価も落ちることになる。
だから盗賊が成り立っている。
狩った魔物は冒険者登録していなくてもギルドが買い取ってくれるしな。
魔物がいる世界だからこそ……か。
「ねえ、レイ。」
「どうした、シイラ。」
「レイって、いつも虫殺しの魔法を使っているのよね?」
「ああ、今も使ってるが?」
「それって『フライ』時にも使ってた?」
「うーん。多分使ってたんじゃないか?ほぼ無意識に使ってるし。」
『フライ』とはほぼ魔力を消費せず使える。属性に縛られず空中を自由に飛ぶ魔法だ。
宮廷魔導士の上位の者しか使えない魔法。
ぶっちゃけ魔法と言うより魔力の技術だと思うが……
セレナは精霊の力を借りて、シエラは高速には動けないけど使えている。
俺だけが風属性の力で飛んでいる。
「ちょっと試したんだけど、レイの使っている虫殺しの魔法を使いながらだと『フライ』が使いづらいの。だから、レイも虫殺しの魔法を切ってから試してみたら?」
「なるほど、魔法同士が作用しあっていたのか……ダイナに入ったら練習してみるよ。」
「…………あなた方は、宮廷魔導士か何かですか?」
「ただの冒険者だ。」
といい、静かにのポーズをする。
コクコクと頷いてそれ以上詮索はしてこなかった。
相手がどう思おうが、変な噂が立つのはやめてほしい。
俺は一度も宮廷魔導士とは言っていないからな。
幸い馬車には俺ら以外乗ってないが、後でシエラに一言言っておこう。
『それにしても、虫殺しの魔法がフライの邪魔をしているのはほぼ確定だな、後一歩、何が足らないとは思っていたが、足らないじゃなくていらないとは。』
風属性で飛ぶと慣性がすごく、止まろうとしてもすぐには止まれず、使用時間魔力を消費し続ける。
フライも魔力を消費するが、こちらは燃費がよく、極めれば全く魔力を消費しないし、すぐに止まれる。
完全上位互換だ。
ヘンシム村に行ったのはよかった。
いろいろ知れ、フライのこともわかったし。
街に着くまで、のどかな感じを堪能した。