126
「レイ!もう虫はいないよ!」
「は!」
反射的に意識を外し、魔法をぶっ放していた。
「悪い助かった。」
「いいわよ、別に。レイの虫嫌いは今に始まったことじゃないから。それに……あの量が押し寄せてきたら……ね。しょうがないわよ。」
「魔物みたいに大きいやつならまだいけるんだがな……と、そうだった、ここのドロップは自動的にアイテムバックに入るんだったな。一応確認してみるか。」
「そうね。」
俺は腰につけておいた餅巾着のような袋に手を突っ込んだ。
アイテムバックは質量、体積ガン無視で物が入る品物で、イルーシオを出るときに買ったものだ。
もちろんダンジョン産の物ではなく作られた物で、容量もそこそこかつ、遅いながらも時間が流れている品物。
俺たちが頑張ってやっと買えるようには出回っている。
正直セレナの特殊スキル『アイテムボックス』やシエラの時空間魔法で作った『ストレージ』の方がいいが、一応持っている。
と、普通なら手を突っ込めば入っているもののイメージが頭の中に入ってくるのだが、
「なんも入ってない。」
「私も」
「私もよ。」
「収納魔法と、セレナはアイテムボックス、シエラはストレージを見てくれ。」
「「わかった」」
念には念を、収納魔法も確認してみたが雑貨しかない。
収納魔法もアイテムバック同様、イメージが入ってきて、それをイメージから取り出すようにすると出てくる。
よくコメディで、思い描いている吹き出しからそれを取り出すようにだ。
次に二人のスキルによる収納だ。
セレナは四角い黒い空間に手を突っ込み、シエラは丸型の黒い空間に手を突っ込んだ。
アイテムボックスは容量無限、時間経過を遅くしたり無くしたり自由自在。
時空間魔法のストレージは、魔力によって拡張可能、時間経過は入っている物全てに適応されるが遅くしたり無くしたりできる。
……うん、チートだよ。二人とも。
「あ、あったあった。」
「本当か!?よかった〜。」
「私のストレージにも入っていたわ。」
「!シエラの方にもか。となるとドロップアイテムが入る優先順位があるみたいだな。」
「や、私の方にレイの分が入ってきてるみたい。」
「そんなこともわかるのか。でもどうして。」
「ん〜なんとなくだけど、レイにいく分が弾かれて私の方へ流れてきた、的な感じ。」
「無心で殺しちゃダメってことか?まあ、おいおい検証してくか。それで、ドロップアイテムはどんななんだ?」
「あ、えっと……羽」
「羽?」
「倒した虫の羽……いる?」「いらん。」
「即答ね。」
その後進んでいくと下は向かう階段を降り二階層へ
「ずいぶんあっけなく二階層へ降りれたわね。」
「初めのやつは一体なんだったんだよ。」
「本当ね。」
と話をしながらどんどんと降りていった。
このダンジョン、中はそんなに広くない。一階層目は一本道、二階層目も到底迷路とは呼べない雑な道だった。
下に行くごとに若干広くなっているみたいだが、ゆうて若干。
なんでわかるのかって?
セレナの精霊魔法だ。
風の精霊と感覚を共有することで次の階層へスムーズに行けた。
あとこのダンジョンの魔物、D、Eランクでも倒せるぐらい弱いが、やたら虫系が多い。
アリ、ハチ、カブトムシ、カマキリ、チョウ、ノミ
「嫌、ノミ!!!」
「おい、尻尾近づけんな!」
ジュ
シエラがノミのついた尻尾を近づけると、ノミが焼け死んだ。
そういえば、虫が嫌いだから俺の近くに虫が来たら焼け死ぬよう常に魔法を発動してたっけ。
「……」
「……」
「まさか、今まで尻尾を近づけてたのは甘えてるんじゃなくてノミを取るためだったのか?」
「あー……えっとー……甘えてるわよ。」
「よし帰ったらブラッシングな。」
「それだけは勘弁して!」
とまあいろいろあったが無事ボス部屋の前までこれた。
今までは階段を下りれば次の階層だったが、目の前には門がある。
いかにもな門があるとは聞いてたが、降りてちょっと進んだから門があるとは。
「意外とあっさりこれたな。」
「これもセレナのおかげね。」
「ありがと。さ、いきましょ。」
中に入ると自動で門が閉じ、そのあと目の前にボスが光包まれて表れ―――
カサカサッ
「「―――ッ
イヤァァァァァァァァァ!!!!!!」