109
『来たな‥‥‥だが遠すぎる。ここは様子を見るか。』
だが感知したやつはこちらの様子を伺ってるのかなかなか近づいてこず、シエラとの交代時間になってしまった。
シエラ達は人を殺したばっかなのでここは俺が片付けようと思い、シエラを起こした。
「シエラ、時間だ。(気になる気配がある。そのまま寝たふりしてくれ。)」
「‥‥‥ん‥‥もうちょっと寝かせて‥‥‥」
「シエラ。」
「んん~‥‥‥」
「はぁ。」
シエラの演技(演技だよな?)によって俺がまた見張りをすることになった。
今の行動に動揺したか、さっきよりも慎重に近づいてくる。
そしてやっと目で見える範囲来たのを確認して、俺のいる場所に幻影魔法で俺自身を作り出し、奴の背後に向かった。
シエラは俺が幻影を作ったのと同時に幻術魔法で俺の幻影に幻術を重ねた。
あの~、シエラさん?
他人の基本魔法以外の魔法に自分の魔法を重ねるってめちゃくちゃ難しい、それこそ三属性以上の混合魔法よりも難しいってルーデンスさんのところで習ったはずなんですが‥‥‥
カイザーと戦った時は左右で魔法を発動して三属性ぽくしたり、風で回転をつけたりしたので厳密に三属性混合魔法とは言えない。俺は一応干渉魔法を使って三属性の混合はできる。
ちなみに幻影魔法と幻術魔法との違いは
幻影魔法が実態は無いが気配はある
幻術魔法が実態はあるが気配が無い
である。(どういう原理か知らんが)
これが合わさるのだから高レベルの感知系スキルや龍眼を持ってなければ見破れない。
『と言うかこうも仲間が凄すぎると自信なくすな‥‥‥四属性使えるだけで結構凄いはずなんだけど‥‥‥とと、今は様子を確認しなきゃな。』
俺は気配を感じた奴の背後にまわった。
見た感じ男で村人と同じ服装のぼろぼろになったものを着ていた。
『擬似神眼』に統合された『龍眼』のお陰か夜でも見えやすいのでその事ぐらいは分かった。
『さてどうしたものか。あからさまに私は盗賊ですって格好してくれればありがたかったんだけど。まあ、前世でも泥棒するときは普通のサラリーマンの格好でやるって聞いたからな‥‥‥村人の格好なら迷子になったとか言い訳ができるし‥‥‥俺『擬似神眼』で嘘わかるじゃん。捕まえるか。』
「おい。そこで何してる。」
「ひっ!」
俺が声をかけると男は尻餅をつき、そのまま木に背中が当たるまで下がった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「うるさい。」
バチッン!
周りにこの男以外の気配が無いことを確認して防音壁で辺りを包み、男の耳元で指パッチンをした。
「あ、ああ‥‥‥」
『こいつ失禁しやがったな、『クリーン』。反応からみて迷子みたいだな。これで盗賊だったらたいした演技力だ。』
「おいいいかよく聞け。お前は盗賊か?」
「いやいやいやいや俺は、断じて、盗賊なんかじゃない!むしろ盗賊から逃げてきたんだ!」
「逃げてきたって?」
「ああ、今この森にいる盗賊からだ。」
「武器を持ってないお前がか?」
「それが、急に要らなくなったからって言われて解放されたんだ。」
「他に仲間は?」
「俺と一緒に二人女が捕まってた。俺もあいつらも昨日捕まった。」
『全部嘘じゃない。』
「‥‥‥まてよ。なんで男に需要があるんだ?労働力にしてはお前ひょろすぎだろ。」
「知らねーよそんなこと!どうせろくでもない女や男趣味のやつとかだろ!」
「あー‥‥‥なるほど。とにかくお前が盗賊から逃げてきたのは分かった。ついでに逃がしてやるよ。」
「ついでに‥‥‥逃がす?どういう意味だ?」
「お前が捕まってた盗賊が最近出来たもので村を襲ってなかったから今のうちに村人全部を避難させようとしてんだ。」
「は?嘘だろ‥‥‥なんで勝手ににげんだ!」
男は大声で叫んだ。
だが防音壁を張っているので外には聞こえない。
「勝手に逃げんなってどういうことだ?」
「!そ、それは‥‥‥」
「言え!」
「は、はいぃぃ‥‥」
男から聞いた話はこうだ
捕まったあと急に盗賊呼ばれ、「次に森ん中にある村を襲うから偵察に行ってこい。そしたら見逃してやる。」と言われのこのこやって来た。
昼頃に解放されたが道に迷って夜中になっただけだそうだ。
と、男にもう無いか?と問い詰めてる最中、空に魔法が打ち上げられた。
「こ、今度はなんだ!」
「あれは‥‥盗賊が攻めて来たって合図か。」
「は?!見逃してくれるんじゃ―――」
「もういい黙ってろ。」
バチッン!
俺は雷魔法で男を気絶させた。
『捕らえた奴をただで解放するわけないよな。その点を村への偵察て形でただではないことにしたのか。もっと考えれば村からどうやって盗賊に情報を流すかとか、どうやって村から出るのかって考えられるが、パニクってただろう。仕方ないか。‥‥‥‥‥‥あ!盗賊のアジト聞いてねぇ!』
「おい!起き―――」
「レイ!」
「シエラの声。チッ、今は処理が先か。」
俺はキャンプをしていたところへ男を担ぎながら戻った。