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その日の帰り際、俺はバイオレットさん別荘(何故かずっと別荘にいる)にお邪魔することにした。
「いや、おめでとう。君が教師をした二人が晴れて結ばれたそうじゃないか。」
『暗に言ってただろ。それと見てたのか。』
「それは二人に言ってくれ。」
「それもそうだね。それで話とは?」
「二人に教えることはもう無いからこれで終わりにして欲しい。」
「ふむ。指名依頼を中断する場合罰金がかかるが‥‥‥今回は特別に依頼達成ってことにしよう。」
「ありがとうございます。」
「レイ君はこれからどこかに行くのかい?」
「‥‥‥監視してたのか?」
これが終われば次に、メイリーズに行く予定だ。
そのためにセレナたちはダンジョンで必要そうなものを買っている。
俺自身なら自分の未熟さゆえだと飲み込めるが、たとえ貴族であるバイオレットさんでも、セレナやシエラのプライバシーを侵害されるのは頭に来る。
「そう殺気を放たないでくれ、老体には辛い。」
「‥‥‥」
「監視はしてない。君がそうでると思ったからね。」
『‥‥‥嘘じゃないな。』
「‥‥‥信じるよ。」
俺の特殊スキルの『擬似神眼』は嘘を見抜けるので、それを使いバイオレットさんが嘘をついて無いことを信用した。
「じゃあこれで。」
「また依頼するかも知れないからその時はよろしく。」
「分かった。」
ギルドに行き、依頼が終わったことを伝えるといろいろ心配されたが大丈夫とだけ伝えた。
やっぱり指名依頼の中断は普通あり得ないようだ。
イーラさんの話を聞くと「指名依頼を中断すると指名した側からの信用が減り、別の人が依頼を出す場合選ばれにくくなる。一回や二回はまだしもそれ以上になってくると、本当に冒険者として信用が落ちる。無理な依頼は受けないこと!」だそうだ。
元々指名依頼を受ける気がないないので、次から全部無理な依頼として断ろうと考えたがイーラさんには俺の考えてることが分かったようで「指名依頼を断り続けのはそれはそれで信用が落ちちゃうよ。」と言われた。
ただ断り続けることで落ちる信用は依頼してきた方なので、ギルドからの信用とは別らしい。
ギルドからの信用は普通の依頼をこなせば上がり失敗すれば下がる単純なものだ、ただこの信頼があればランクが上がりやすい。
「て、こんな話していいんですか?」
「レイ君はギルド職員の仕事してたから特別よ。」
本当にいいのか?
その後いつも通り泊まっている宿へ向かった。
「レイだ。入っていいか?」
「は~い。どうしたの?」
「ちょっ話があってな。」
「バイオレットさんから受けてた依頼が今日終わってな。三日後、遅くとも五日後にはメイリーズの街へ出発しようと思ってな。」
「早く終わったんだね。私たちは準備万端よ!」
「だいぶ早いわね。確か一ヶ月の依頼だったけど。途中で辞めて良かったの?」
「依頼はちゃんとこなしたから大丈夫だ。二人とも準備してあるから三日後ぐらいに出発しよう。」
「了解。」
「分かったわ。」
やっとダンジョンがあるメイリーズに行くことになった。
カイザーとシエラの決闘は俺が教師をやってる間にやったらしく、シエラが決闘場をおこらせて終わったそうだ。