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現在俺は指名依頼を受け、暖かい日差しの中突っ立っている。
前回は初めての一人での指名依頼だったのでお試しで受けたが、指名依頼なんてあまり受けたくないのが本音。だが、「貴族からの指名依頼をこなした方が速くランクがあがるよ。」と言われたのと、依頼主がバイオレットさんだったので渋々受けてみたら。
「いつまでそこに突っ立てるのかしら?私はあなたの指図を受けるつもりは無いわ。」
と、目の前には同い年かちょっと下ぐらいの貴族のお嬢様の魔法の教師の依頼を受けている。
『依頼内容は分かっていたが。まさか、リーンさんが伯爵家の三女だとは思わなかったな。』
一応確認のため、以前お邪魔したバイオレットさんの別荘で話をしていたときに聞いた話しだ。
リーンさんは三女だから貴族の面倒ごとに縛られず、冒険者をしたいと本人からの希望で、伯爵家と絶縁をし今に至る、そうだ。
絶縁と言っても家族との関係は悪くなく、手紙のやり取りしているといった程度、だそうだ。
全部聞いた話しなので本当かわからないが‥‥‥
ただ、バイオレットさんとの話しの最後に面白いが、めっちゃめんどくさい事をお願いされた。
それは‥‥‥今教師をしているお嬢様と、もう一人教師をすることになった人とくっつけることだ。
確かに依頼には一人~二人、と書いてあったから教師をすることに関しては特に問題ないが、前世彼女いない歴=年齢、現世それっぽいことできていない俺にとっては無理難題だ。
『お願いと言っても、暗に言われただけだから、俺の思い過ごしだと思いたいな‥‥‥ん?』
俺が思いに更けていると、メイドがお嬢様に何やら舌打ちをし、驚いたあと中に戻ってしまった。
なので俺はそのメイドを捕まえて話を聞くことにした。
「すいません、今、マグナお嬢様になんといったんですか?」
「はい。先ほどフィネラル伯爵家より、ボーラント様がお越しになられたとご報告いたしました。」
「やっとか‥‥‥」
マグナお嬢様と言うのが、さっきからお嬢様、お嬢様と言ってるお方で、ボーラントと言うのがもう一人の生徒だ。
ちなみに、二人の本名と年齢、容姿は
マグナ・コンラント 17才 金髪、紅と蒼のオッドアイ
ボーラント・フィネラル 17才 白髪混じりの黒髪、黒目
話を戻して、二人への授業をするのはいいが、くっつけるなら一緒にやった方がいいし、いちいちどっか行って授業をするのは面倒なので、一番近かったコンラント侯爵家にお邪魔することにした。
すこしして、化粧したマグナお嬢様と左足を包帯で巻かれたガリガリに痩せた少年が支えられながら来た。
「初めまして。僕はボーラント・フィネラルです。僕なんかのために教師をしてくださって、有難うございます。」
「どうも、俺はレイだ。よろしく。」
そして握手を交わす。
『なんだ、こいつの体は。皮と骨しかないじゃないか。』
「お前ちゃんと食べるのか?」
「はい、えっと―――」
「待ちなさい!今ボーラントの事をお前呼ばわりしたわね。不敬罪よ!」
「まあまあ、落ち着いてください。マグナ様。」
「グッ‥‥‥ふん。私達よりも年下な教師なんて信じられないわ。」
「まあまあ。マンジュリカ公爵家からのお誘いだし、一緒に授業を受けましょうよ、マグナ様。」
「‥‥‥ボーラントがそう言うなら仕方なく受けてあげるわ。いい、ボーラントのお願いだからよ。間違えないことね。」
「はいはい。分かりました。」
「な!あなた――――」
「お、落ち着いて~」
貴族の爵位
王族、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵
絶縁うんぬんに関して
貴族の絶縁は「あなたは私の家のものではない」という意味で、血縁関係をないものとするもの。
ただ、貴族にお抱えの冒険者がいるようにリーンのような場合でも他からとやかく言われない。
という設定もとい意味です。