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「ん?‥‥‥ふんむ、ビオラ‥‥か。それは私の娘の名だよ。」
「シスタービオラって、こ、公爵家の人だったのね‥‥‥」
「ハハ、シスターとなったらもう貴族ではないから、私が君達を罰することは出来ないよ。と言うより元から君達をもてなしたいと思って、こう言った事をしているのだがね。その代わり、ビオラの様子を聞かせてくれないか?」
「それはもちろん!」
こうして、指名依頼を受けたのにもてなされる事になった。
「――――よ。でも、料理するときはとっても危なかしかったわ。」
「ふん、ふん。」
「‥‥‥そう言えば、スバルって言うやつも来たな。」
「あ!そうそう、シスタービオラが来てから‥‥ぐらいだっけ?」
「三日で来たわよ。」
「そうそう、三日ぐらい経ったらスバルさんが来ました。」
「ほーう、その話も詳しく聞かせてくれないか?スバルと言うのはビオラ専属の護衛の者だ。」
「あ、やっぱりそうだったんですか、あれ?でも確か『私はビオラ様の騎手だ!』て言ってたような」
「騎手‥‥‥か。」(殺気が漏れ出る。)
「え、ええ!?(私は何か言っちゃいけないこと言った!?)」
「(いやそんな事はないと思うが‥‥‥)」
「あの者は確かにビオラの護衛として雇ったが、騎手ね。……はぁ、まあよしとするか。こちらとしても居場所が確定しただけありがたい。」
「あ、ありがたい、とは?」
「ああ、実は卒業式の具体的な説明のとき、『せっかくの卒業式の場に学園の生徒以外を入れるのは好ましくない。』と、王子から言われてね。護衛であるスバルは学園に行けなかったんだ。そのとき、運の悪い事に私に急用が出来てしまってね。スバルに着いてくるよう命令したんだ。そして、」
「そして?」
「ビオラが断罪されたと知ったんだ。そのあとは、断罪された証拠をとにかく洗い直して、何とか極刑は免れたが、次は『王族が断罪したのにそれが間違いでは顔が立たん。』と言われて、秘密裏に王都から追放されたんだ。」
「ひどいわね、その王子。」
「全くだ。しかも、秘密裏だったから追放された四日後に知らされるとは‥‥‥」
「う、うわ‥‥‥」
「と、失礼した。やはり娘のこととなるとつい‥‥」
「い、いえ、全然大丈夫ですから。」
「ハハ、そう言ってもらえるとありがたい。おっと、もうこんな時間か、どうかなここで昼食を食べていかないか?」
「え、いいんですか?」
「もちろんだ。」
バイオレットさんは腕時計で時間を確認して、昼食を進めてきたので、その提案に乗った。
「バイオレットさん。」
「うん?何かね、レイくん。」
「そのちっさいのて何ですか?」
「ああ、この腕時計のことだね。まあ、見ての通り小さい時計だよ。これはダンジョン産の物でね、時間が狂ったりしないのもなんだ。」
「へえ~」
「欲しいかい?」
「いや、いらないです。ダンジョン産なら自分で手に入れます。」
「ハハハ。そうか、まあ頑張りたまえ。‥‥‥そうだ、昼食後、二人で話さないか?」
「わかりました。」
こうして、セレナが食べている最中シスタービオラがスバルに手作り弁当を作っていたことを話して、バイオレットさんが今まで以上の殺気を放った(フォークを折っていた)こと以外とくに何事もなく昼食が終わった。