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「―――――――自分を偽ってるのは―――」
と、俺が言った瞬間、道の角から何者かぎ俺達に襲いかかってきた。
ガキッン、ガキッン、
ブオォワ。
俺は前から来た二人の剣を受け止め、後ろからは強風が防がれた音が聞こえてきた。
『あれ?後ろからは三人の気配を感じるが、何で一つしか音が出てないんだ。まさか!』
俺が後ろを見ると、シエラが手に持っている蛇腹剣を伸ばし、生き物のように空中を漂わせていた。
『凄いな、あんな使い方があったなんて。それに、音を殺して受け止めるって、どんな凄技だよ。―――と。』
俺が後ろに気をとられてる隙に蹴りが跳んできた。
「まて!その方たちはリコの命の恩人だぞ!」
「ですがケイン様、この者達はケイン様の幻術を見破るほどの手練れ。お姿を見られた以上生かして置くわけにはいきません。」
「確かに手練れかもしてないが僕を狙うのであれば、正面からわざわざ言う必要がないだろ。剣を納めよ。」
「‥‥‥はっ。」
と、ケインが命令すると護衛らしき人達が剣を納めた。
それに伴って俺も剣を納めた。
「先程は私の護衛が迷惑をかけた。どこか怪我はしていないか?」
「俺は大丈夫だ。シエラは?」
俺が後ろを振り返ると、黒髪の猫の獣人がシエラに向かってうつむきながら立て膝をついていた。
「シエラ?」
「うん?どうしたのレイ。」
「あ―――えっと、怪我はないか?」
「別に無いけど‥‥‥それがどうして?」
「いや、無ければいいんだ、無ければ。」
俺はまた振り返り、ケインに
「だってさ、俺らは何ともない。」
「そうですか、怪我が無くて何よりです。」
「俺から質問してもいいか?」
「‥‥‥はい。」
「お前は何者だ?」
「何者‥‥‥ですか。」
「この期に及んでなにを言うか!」
「いい、落ち着きたまえ。」
「くっ‥‥‥」
「場所を変えてお話ししましょう。」
「了解。 」
ケインからの提案を飲み、貴族街よりの店に寄った。
終始、護衛が俺のことをにらみ続けていた。
店に入るなり別の護衛が店員と話をつけ、店の奥の個室へ案内された。
「時間が無いのでなるべく早く終わらせましょう。」
ケインがそう言い護衛を下がらせ、俺達は個室の中心にあるテーブルに腰かけた。
「では、まず私から自己紹介を。私の名前はカールズ・フォン・ベルウッド。このレッドファリア王国の第二王子です。」
「‥‥‥は?マジで?」
「ここで嘘を言っても私には何も特がないでしょう。と言うより私の素性を知って幻術のことを言ったのでは?」
「いや、まて。俺はただ単にお前の素性を知りたかっただけだ。多少縁のあるやつに幻術を使って会ってたから怪しと思っただけだ。ほら、知っているやつの側にそんな奴がいれば心配するだろ?」
「はは。まあ、確かにそうですね。」
「んじゃまあ、お前のことも何となく分かったし、俺らは帰るとするよ。じゃあな。」
「私が王子であると疑わないんですね。」
「嘘を見破るのは得意なんでね。」
やっぱり、カールズ(呼び捨てで構わないらしい。ただし、プライベートの時だけ。)はリコに好意を抱いている。
と言うより、直球で「あいつの事が好きなのか?」と聞いてうなずいたから、絶対そうだ。
シエラが咳払いしてたが‥‥‥
「ま、リコのやつは王子さまに任せればいいか。」
「そうね。ちゃんと大切にしてくれそうだし。」
その後、宿にかえってセレナに付き合って欲しい、と言ったら「明日空いてるしいいよ。」と、冒険の話と勘違いされ、勘違いを訂正したら、挙動不審になったあと顔を赤らめながらうなずいた。
シエラはあっさりとokしてくれた。
カールズ(ケイン)
金髪 蒼眼
レッドフォリア王国の第二王子
ケインは城下にいる時の偽名