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「やっぱり優しいのね。」
「なんだ、手のひら返して。」
「酷いわよ、そんな言い方。」
「ふっ、悪かったって。そう言えば俺が他に助けたやつの居場所分かるか?」
「うん?うーん、難しいかな人が多いし。知ってるのであればリンゴ屋の子ぐらい?」
「そいつの所に行くか。」
道を移動し、
「本日のリンゴは完売です!買えなかったお客様、大変申し訳ございません!本日から十月の中頃まで一時休業とさせていただきます!理由としてリンゴの収穫時期があります!どうかご了承下さい!」
と、聞こえてきた。
そして「えぇー。」「そんなーー。」と落胆する声が聞こえ、行列がバラバラになった。
「どうする?」
「ま、会うだけ会うか。」
俺達が近づく前に、一人の少年が助けた子に話しかけた。
盗み聞きしても悪いなと思い、感覚系スキルは控え近づいていった。
「――――――。‥‥‥あ、あの!」
気づかれると同時に両手を掴まれた。
「私達を助けていただいた方ですよね!」
直球で確信を持って言われた。
そして俺達はお姉さん(元々リンゴ屋をしてたおばさん)のはからいで
「ええっと、はじめまして。ですよね?私の名前はリコって言います。こっちは妹のシーナです。」
「‥‥‥ふん!」(プイッ)
「こら、シーナ。助けていただいた人なんだから。」
「ええっと、僕の番かな?僕はケインと言います。」
と、自己紹介したのは茶毛、茶目、のさっき少年だ。
見た感じスピサで決闘した少年達と同じぐらいだが、幻術で本当の姿を隠している。
本当の姿は金髪、蒼眼、だ。
「俺はレイだ。冒険者をやってる。」
「私はシエラって言います。はじめまして。」
「それで、この人が本当にリコ達を助けた人なのかい?」
「そうよ。あ、そうだったは、これを。」
と、言いながら差し出されたのはお金が入った袋だった。
「ふん。‥‥‥大銀貨三枚分か。」
「はい。ちゃんと返さなきゃと思ってたので。」
「な!おねーちゃん!こんなやつにお金なんて返さなくていいじゃない!」
「こら!シーナ!もらったお金でもちゃんと返さなきゃいけないの!」
「そうだな‥‥‥返されてもなぁ‥‥‥」
「ほら、返されて困ってるじゃない!」
「それでもよ!」
「‥‥‥そうだ、これをお前にやるよ。」
「え!僕?!」
「ああ、ただしそいつらのために使ってやれよ。」
「そ、それはもちろん‥‥‥」
「えぇー、なんなら私たちによかったじゃない!」
「ちょっとシーナ、黙ってて!」
俺はケインに袋を渡した。
「今さっき隣の人が渡したものをそのまま受けとるのはどうかと思いますけど、ちゃんと使わしてもらいます。」
「ああ、そうしてくれ。」
その後、少々雑談。
「あの、二人は付き合ってるんですか?」
「付き合ってか‥‥‥そうだな、付き合ってと思いたいな。」
「何いってるのよ、昨日今日とデートしてるじゃない。」
「で、デート?!」
「でも、俺からちゃんと付き合ってくださいなんて言ってないからな。」
「全くもう、あなたのことが好きでなければ冒険者なんてやってないわよ。」
「ふっ、ありがとう。だが、それはそれ、これはこれだ、今日帰ってから改めて言うよ。」
「ふふ。」
「そうだ、お前らはどうなんだ?」
「どう、て何がですか?」
「だから、付き合ってるのかどうかって聞いてんだ。俺が見た感じ、ケインがお前のことを気にしてるように見えたからな。」
「え!?」
このケインって少年は、俺をリコが見つけたときから警戒してた。
「まあ、少なからず好意はありますね。」
と、ポーカーフェイスでいい放った。
いやまあすぐ近くに『好きと言ったら襲ってやる』と言う雰囲気を放っているリコの妹、シーナがいるから選択肢としては正しかったのかもな。
と、その後も雑談、そして
「じゃあ、僕はこれぐらいで帰らせて貰おうかな。」
「あら?もうそんな時間なのね。ごめんなさい、私の長話に付き合ってもらって‥‥‥」
「いいや、僕は好きで君の話を聞いていたんだ。本当ならもっと聞いていたかったんだけどね。」
「そう?じゃあまた今度お話ししましょ。」
「ああ、約束するよ。」
「‥‥‥それじゃ俺達も帰るとするよ。」
「はい、また今度。」
俺とシエラとケインが家を出た。
「あの、ありがとうございました。貴殿方がいなければ僕はリコと出会わなかった。本当にありがとうございました。」
「いいってことよ、俺の自己満足のためにしたことだ。ただ、自分のことを偽ってるのは―――」
と、俺が言った瞬間‥‥‥