表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第一章 始まりの章 1

ようやく異世界からの勇者側の子が登場です。しかし主人公ではない。

召喚系の主人公は今回あくまで脇役なので、時たまに話に出せて行ければと思ってます。

作者の技量不足で、ダブル主人公何て器用なこと出来ないので。





 俺は野村大翔(ヒロト)高校二年の男だ。

 家が剣道場をしている関係で、小さい頃から父親に厳しく稽古を付けられていた。高校に入ってからは居合の稽古もする様になったりしてさらに厳しくなったんだけど・・・。部活だけは好きな事をして良いと父親が許してくれたので。子供の頃から憧れていたサッカーをする事が出来た。


 入部して早々、剣道で鍛え抜かれた身体のおかげで競り負けない強さと。毎日続けていたランニングのおかげで他の奴らに負けない体力があったのが幸いし。一年生ながらレギュラーの座につけた。

 その甲斐あってか、周りからは注目されて女子からもモテまくった。勉強の方も、悪い点になったら地獄の特訓が待っているので必死にやった。こちらもそのおかげで学年上位をキープ。俺は学校の王子様的なポジジョンに着く頃にとが出来た。


 そんな順風満帆に思えた俺の生活が一変する出来事が起こった。それは、二年になってようやく憧れの女の子、学園のアイドル的存在…さやかちゃんからのラブレターを貰った後だった。

 一年間掛けゆっくりと確実に行ってきた努力が報われ、嬉しさのあまりニヤニヤしながら友達と遊び。気持ち悪いと罵られたのですら気にならない程浮かれてた俺に、突然目を開けていられない程の眩しさが足元から襲ってきた。

 気がつけば薄暗いとことに俺は立っていて、周りには沢山の変な服装の奴らが俺を取り囲むようにして祈るように片膝を着いていた。


 何が起こったのか理解できなくて自然と身についた剣道の構えを取り身構えてしまった。何かあったらすぐに行動できる慣れた構えなので警戒する時はこれが一番良いと思っていた。

 そんな俺に対して優しく透き通るような声で話しかけて来た女の子がいた。綺麗なドレスを着ていて・・・超可愛い。ぶっちゃけ一目惚れも一目惚れだった。一年間頑張ったさやかちゃんへの気持ちはこの一瞬で吹き飛んだ。それくらい最低な決断をサラッとしてしまうくらい、俺は目の前の女の子が可愛くて・・・惚れた。


 この瞬間でこの女の子の虜になった俺は警戒を解いて話を聞いた。

 なんでも封印されていた世界の敵『魔王』って言うのが最近復活して街をめちゃくちゃにしたらしい。散々殺戮を繰り返した後、次の楽しみとしてワザと王城を残して去って行ったそうだ。

 そんでもってその『魔王』はスッゲー強いらしくて、前に封印した時も俺の様に異世界から助けを呼んでしのいだらしい。


 話を聞いて思った事がある。

 これって、俺の世界で流行ってた『小説』のあれに良く似てるなと。俺は読んだ事ないしアニメも見た事がない。ただ、クラスの一部の男達が興奮しながら討論してたのを聞いた事がある。確か『異世界の人に召喚される王道展開』とかなんとか?詳しく聞いてなかったし全然話の内容覚えてないけど、これがそうなのか?

 だとしたら、俺は主人公的立場であり。世界を救ってハッピーエンド真っしぐらか?!


 俺の中で不安よりもこの世界での事を想像するとワクワクとドキドキが止まらなくなり。期待で胸が膨らんでくる。この時点でもう自分の居た元の世界に帰りたいとは思わなくなっていた。

 確かに順風満帆だったが、こちらの世界はまず魔法がある!夢に見たファンタジーの世界が現実になってるのだ。さらに、魔王を倒すのは大変だろうが。将来を約束された立場!目の前のお姫様を自分の手に入れる事が出来る立場になる!金だって問題ない。身の回りの世話をしてくれる使用人も雇える!豪華過ぎる豪邸に住めるのだ!こんなの、元の世界に居たら絶対にかなう事がない。どうせ家の道場を継ぐ羽目になる。

家族や親戚、友達への未練?厳しい事しか言わない父親や僕へ愛情を向けなかった母親なんていらない!友達だってこの世界でまた作れば良いのだ!嫌でも付きまとってくる連中はいる。

 少しばかり都合のいい様に頭の中で解釈して居たけど、結果的には僕の想像に近い物となった。それは、可愛い子に案内されて、この国の国王との謁見した時に僕がそれを望んだから。


 僕は人生で一番の演技をそこでしたと思う。

 泣き叫び、元の世界に返す様に懇願し。それが出来ないと言われ魂が抜けた様に焦燥した様に見せた。そこに居た人達は見事に騙され、召喚魔法を発動させた可愛い女の子、王女が責任を感じてしまい泣き崩れた。

 しかし、俺はそれを待っていた!ゆっくりと女の子に近づいて優しく涙を拭ってやる。最高のスマイルを見せて一言。


 「貴方のせいではありません。」


 この一言で女の子は真っ赤になり顔を逸らす。ここまでは完璧に計画通り!

 後は、女の子を気遣う様な言葉を選んで宣言するだけ。


 「俺の心が弱くて覚悟が決まらなかったから君を傷つけてしまった。許して欲しい。王女、俺は君の為に戦う。君が俺を呼んだんだ!これは運命だ!ならば、君と共に歩む為に俺は戦う事を選ぶ!魔王を倒そう!そして、全てが終わったら・・・。一緒に暮らそう。」


 「ッ!!はい!!ヒロト様!貴方様なら必ずや魔王を打ち倒して下さると信じております!そして、無事に戻って来て下さいませ、私はお待っております!」


 はい、これで王女様は俺の虜。元の世界じゃこうも簡単に行かないもんね、ちょっとだけちょろいけど問題ない。魔王とか勇者とか関係なく。ドラマみたいな展開が出来るなんて、こんなの答え合わせしてるだけの様なもんだろ。

 その後は、国王に対して強気で攻めて金と住む豪邸に使用人などを要求した。当然全てが通った訳じゃないが、金の方は大盤振る舞いで用意してくれると確約してもらった。豪邸などの要求は、魔王討伐完了後に爵位と共に褒美としてくれるとの事。ちなみに王女はもともとそのつもりだったそうなので問題なく許された。


 結構我儘を言ったつもりなのだが、正直ここまで許されるとは思っても見なかった。流石に少しだけ良心が痛んだ、まぁ・・・こうなる様に仕向けたのは俺自身だが。罪悪感が半端なかったので、約束はしっかり守ろうと思う。


 まずはこの世界の事を知る為に勉強した。

 教師をつけてもらえる様にお願いして、時間がある時はほとんど座学をして居たと思う。次に剣術の稽古だ。俺は生物を切ったこともないし模造刀位しか握った事がない。だから真剣で戦うことに慣れる為に必死に訓練した。騎士団の中でも特段に厳しいと言われている人に稽古をつけてもらいどんどん経験していく。初めて人型の魔物を殺した時はマジで吐いた、次に人を切る事への躊躇いをなくす為に死刑の執行役までやらされた。初めて人を殺した時は猛烈に泣いた。

 剣道の経験があったおかげで基本的な動きはすぐに出来た。武器も日本刀じゃない西洋の剣に慣れるのもそんなに苦じゃない無かった。

 とにかく精神的キツかった。生物を殺して解体、魔物を殺して解体、一番キツイのは死刑執行・・・。これを数日間続けた。その間に国民への初めての挨拶と顔出しを済ませた。


 とにかく気が滅入る様な毎日だったが。冷静に考えると、やってることは元の世界で行なっていた事と対して変わらないことに気づいた。

 それでも、精神面が弱ったが。自分が折れなかったのは支えてくれる存在が有ったからだと思う。常に王女様が寄り添い世話してくれたし話も聞いてくれた。もちろん相手の悩みも聞いたし支えてあげた。この王女の存在はとても大きく、俺はどんどん強くなれた。





 俺がそんな生活に少し慣れ始め、月日が二カ月目の入る頃。

 今はまだ婚約者としてだが、事実上、俺の妻となったこの国の第二王女ハープ。愛くるしく少しだけ幼さが残る目元が超絶カワイイ!ぶっちゃけいけない妄想が止まらず襲ってしまいたいと思う時も多々あるのだが。この世界の習わしで結婚するまでそう言った行為はしてはいけないとされており、早まってしまった場合は重罪に処されるとか。特に、王家の血を継いでいるハープは罪が重くなるそうなので。彼女の事を考えて超我慢している。

 正直、連日キツイ訓練や座学。さらに気分が悪くなる処刑をしているので、開放的になれる時などはその反動が強く我慢するのも大変だ。だが、嫌われたくないし・・・そんな事で富と栄誉を手放したくわない。そう思い留まり、何とか今は理性が勝っている。


 今日は一日休日を取ると決めていた日で、俺の愛しいハープとの大切な時間だ。俺にはある意味悟りを極める修行の時間と言っても過言でわない。


 「ヒトロ様、連日訓練の毎日・・・貴方様のお身体が心配です。もう少し休める時間を作ってくださいませ。」


 優雅な振舞で紅茶に口を付け、口を潤してから僕にやさしく問いかけてくるハープ。俺はそれを見ただけで息を飲み、こんな絶世の美女が近くに居ることを神に感謝したくなる。


 「良いんだ、ハープと早く一緒になりたいからね。これでも足りない位さ、俺は大丈夫だよ。初めの頃の様な情けない姿はもう見せないさ。」


 そう、初めの事はボロボロだった。

 だが不思議な事に、僕は自分で驚くほど能力と言うか身体がすごい勢いで成長した。一日目では走れなかった距離が二日目には走破出来て、三日目には全力疾走で駆け抜けた。勉強もすらすらと頭の中に記憶されて行き、今では先生を付けず図書館みたいな所で本を読むだけでありとあらゆる知識を『覚える』と言うより『吸収』しているような感覚だ。戦闘訓練も初めはボロ雑巾になるまでやられてたのに、たった一カ月ちょっとの間に。神殿が用意してくれた一番強いと言われる聖騎士と王国騎士団長を相手にしても引けを取らない位にまで戦えるようになった。

 俺は信じられなかったが、これが異世界から来た勇者の『特殊能力』だと思っている。未だに成長を続けているので、今ではむしろもっと強くなりたくて仕方がなかった。


 「ヒロト様ってば・・・私の気持ちも知らないで。まぁ、良いです。それは魔王討伐に必要な力でからね・・・。そう言えば、ヒロト様?異世界人が所有していると言われている『チート』?なる物はいつお披露目して頂けるのですか?」


 「『チート』か・・・それって、『ズル』することとか『ペテン師』って意味だろ?確かにあのオタク共が『チートが強い方が・・・』とか言っていたけど。俺はライトノベル小説もアニメも見てないから詳しく知らないんだ。ゲームとかの『裏技』みたいなもんだろうとわ思うんだけど。」


 この『チート』・・・訓練隊長や騎士団長にも聞かれたんだよな。

 正直、さっぱり分からない。ズルして得る力は確かに強力で絶対があるだろうけど、必ずぼろが出る。ゲームで言えばバグだったり、アップデートされて修正が入ったり。もちろんその都度抜け穴探すんだろうけど。

 ただ・・・正直、俺に『チート』があるならどんなモノなのかは気になる。強力で使えそうならそれを使ってさっさと魔王を倒して後は自由に暮らしたい。


 俺の悩んでる姿を見て慌ててハープが話題を変えてくる。


 「分からないならば、今はそれで良いんのです!おそらく、何かしらの『力』だと思うので・・・魔王を封印する瞬間、いえ・・・倒す瞬間に放たれるものなのかもしれないわ。それよりもヒロト様の世界にも小説があるのですか?私も読書が好きなの。」


 「ああ、そうだな。俺は授業で習ったくらいしか分からないけど・・・ああ、読書感想文で読んだ奴なら覚えてるぞ。」


 『チート』・・・この件についてはまだまだ調べる必要がありそうだ。あの時真面目に話を聞いとけば良かったな、まさか自分がこんな事になるとは思わなかったし。それに、絶対にありえないと当時は思ってたからな。非現実を見てる暇なんか無かった・・・現実に常に目を向けて結果を出さないと厳しい訓練が待ってたからな。今思えば、充実はしてたが父親と言う存在に完全に支配されていた。


 とにかく!今はこんな暗い考えは頭の隅に追いやろう。愛しの婚約者が居るのだ、今を存分に楽しもう。










 楽しい時間、幸せな時間と言うのはあっという間に過ぎてしまうモノで・・・。俺は今特別に用意された仮住まいの家に帰っている最中だ。

 この区画は貴族達の住まいが多く、それ以外なら金持ちの大富豪や金持ちの高ランクの冒険者達の住まいなどがある。そんな金持ちは極わずかな人数だけしかいないが。


 もう間もなく家に着く距離にまで着て、自宅の前に誰かが待っているのが見えた。その人物は未だに兵隊の身分に居るが、実力だけなら騎士団に入ってもおかしくないの人。俺の訓練隊長『ノーキ』隊長だった。


 「おう!悪いな、待たせてもらった。」


 少し皴が入った頬を吊り上げて笑うその顔は、嫌と言うほど見てきた嫌な顔だ。この顔をする時は、ろくでもない訓練をする時にいつもこうなる。

 年は30代後半・・・すぐに40代に入るが。鍛えている分身体の方はハリがあって力ず良い。まさに筋肉自慢の体育教師と言ったところだろうか。さらに、熱血で根性大好き。気合いと筋肉だけで生きているのではないかと思うくらい脳筋の人だ。

 ただし、そんな人でも一度訓練のスイッチが入れば別人のように頭の回転が良くなる、相手の動きに的確にアドバイスしたり、限界の見極めも上手い。徹底的に追い込んでくるその訓練は、俺の父親までとは行かないがキツイものだ。


 「・・・隊長。今日は一日休暇と言っていなかったか?」


 「ああ、悪い悪い。今日の話をしに来たんじゃねぇ、・・・明日の訓練の予定が急遽変わった。」


 俺は嫌そうな顔を隠さなかった。流石にハープと楽しい時間を過ごしたんだ、余韻に浸りたかった。

 しかし、『急遽変わった』と発したノーキ隊長の真剣さに少しだけ気を引き締める。隊長のこれだけ緊迫した顔を見るのは初めてだったからだ。


 「・・・冒険者ギルドから連絡があった。南にある『古代の森』で魔王軍の兆しがあったらしい。明日の訓練は取りやめ、軍を率いて偵察と掃討を行うことになった。・・・ヒロト、お前の初陣だ。」


 俺に、言いようの無い緊張感が襲う。来た・・・。とうとう来た!初めての本物の戦争。自分の手が小さく震えてるのが分かる、しかし・・・怖がっていられない!そのために訓練してきたんだ!


 「分かった、準備の方は?今からでも登城した方が良いのか?」


 「・・・ふっ、俺が鍛えただけはあるな。まぁ、このくらいで怖気づいたら引っ叩いていたがな。悪いが今日は城に戻ってくれ、すでに部隊の準備はある程度済んでる。明日の朝には街を抜けて出発だ。」


 手短にこれからの行動を聞き僕は来た道を引き返す。ノーキはこれから城下町に降りて冒険者ギルドから共に参戦する冒険者達の顔ぶれを見てくると言っていた。明日の朝までには合流すると言うことなので、それまでは騎士団の指示に従うよう命を受ける。


 どんな戦いになるか想像も出来ない。ただ、今まで訓練した成果をしっかり出せるよう自分を信じるだけ。





 ・・・この戦が、今後嫌と言うほど会うことになる。どこまでも真っ直ぐで、どこまでも我儘な彼らとの・・・初めて会った戦となった。








 ------数週間ほど前の話ーーーーーー



 勇者が民衆にお披露目されてまだ二日・・・城下町や近隣の街は勇者の話題で盛り上がり、未だに熱が冷めない状態だった。


 冒険者ギルドに併設してある食堂では、いつものメンバーが揃い。水だけを注文していつものように談笑していた。


 「ねぇ?冴えない顔してたでしょ?私は召喚魔法の魔法陣に目を奪われてたけど、勇者は第二王女のハープ様に目を奪われてたのよ?しかも、その後なんか胡散臭い『演技』までしてあそこに居た全員騙して・・・ハープ様も見事に陥落してたわ。私はあんな男絶対に無理よ。・・・人を騙して、富と栄誉全部手に入れたのよ?・・・私の一番嫌いな男ね。」


 「ははは、饒舌に語ってるねセシル。でもようやく聞けたよ、君戻って来てすぐに部屋に籠るんだもん。ミークや僕がどれだけモヤモヤしたか分かるかい?」


 そうだカイリ!もっと言ってやれ。

 俺は心の中でカイリを応援する。せっかく勇者の情報が一番で入ると楽しみにしてたのに、セシルの奴・・・研究所に籠って魔法の研究してやがったから話が聞けずじまいだったんだ。むしろ、ダンの持ってくる情報が早くて、真相は分からないが・・・待遇がかなり良く生活してるらしいが・・・しっかり真面目に訓練や勉強をしていて。さらに信じられない速さで成長している・・・と言うことが分かった。

 腑抜けてる奴が来なくて良かったとした半面、恐ろしい速さで戦闘の強さが上がっている事に少しばかり警戒した。それにまだまだ上がり続けるその力・・・使い方次第では魔王を倒した後、どう行動するかによっては危険度が変わってくる。

 さらにさらに、ダンが言うには未だに『チート』なる物を見せていないとのこと。それがどんなものなのか分からない以上・・・勇者の力は未だに未知数だ。


 そして・・・ようやくお披露目されて見た目がカッコイイくらいしか印象が無かったのだが・・・セシルがようやく出て来て話した内容を聞いてある程度印象が決まってきた。


 ・・・見た目は好青年で真面目に訓練して真面目に勉学に励んでいるが。・・・彼は国王らを前に『詐欺』をやってのけた。


 セシルの人を見抜く力は信頼できる。彼女はそうゆう奴らを多くを見ているので、人が『演技』している位簡単に見分けられる。

 だから、勇者が行ったあの場での『演技』の事を聞けて良かった。勇者は富と栄誉・・・そして国一の美女と言われているハープ王女を手に入れるために行動したと言うことがハッキリわかった。


 「ふん・・・やはりな。今勤勉に励んでいるのは幾ばくか残った良心がそうさせておるだけ・・・。それもいずれ無くなり、欲深くなるだけじゃ。」


 「正直、お金に関する事なら僕はちょっとだけ許しちゃうかも、僕達だって必要だし。ただ・・・これがもし『国』が欲しいとか『国王』になりたいとか口走ったら・・・周りが止まらなくなるね。」


 「下手に力があって既に『勇者』の名前だけで力があるからね。本人にその気が無くても、上手く乗せられて、無能共の『操り人形』になりえるもんね。」


 すでに俺以外の皆もあり得る展開を読んでいるのか、それぞれが溜息を付き暗い顔を作る。

 俺もそうだが、どうもこの手の話になると悪い展開ばかりを想像して気分が下がってしまう。少しは前向きな考え方にすればいいのだが、既に習慣付いてしまった事なのでなかなか止めることが出来ない。こればかりはチーム全体の悪い癖だ、改善しなければならない。


 「おいおい、今はそんなこと考えるんじゃなくて魔王を倒せる逸材が現れたことに喜ぼうぜ?凄く強くなってるなら、勇者に魔王の事は任せられるって事だろ?そうなれば、俺達はやりたい事が出来るようになる。国の上層部の事は俺達が悩んでも仕方がない、あり得る未来かも知れないがそれを悩むのは今じゃない・・・違うか?」


 カイリ、セシル、ダン、ベン。皆が俺に注目する。

 わずかに笑ったかと思えば、暗い雰囲気から一変し明るい雰囲気になる。


 「そうね・・・ミークの言う通りね。それじゃ!早速だけど私の研究の話を聞いてちょうだい?!これは結構すごいのが出来そうなのよ!」


 「え˝!!セ・・・セシル・・・?それはまた後で・・・。」


 「ミーク?私の話・・・聞けないって言うんじゃないわよね?」


 俺を睨みつけるセシルの顔は・・・怖かった。

 いつの間にかそそくさと離れ別の席に着き、真剣な顔で話し合っているカイリとダン・・・その輪に今しがたベンも加わった・・・。そしてメモ紙に何かを書いて俺の方に向ける。

 『セシルの話はリーダーのお前に任せた。・・・ご愁傷様。』と、しっかり綴られた言葉の羅列を見て俺は顔から表情が無くなる。

 俺は放心状態に近い感じでセシルの話している事を聞いているが、あまりにも特殊な内容過ぎて付いて行けない。セシルは魔法の研究が終わると時たまそれをお披露目したくなる病気にかかり、常に誰かが犠牲になる。この話は非常に長く、まさに拷問の域にまで達しているが・・・セシルの幸せそうな顔を見ると誰も止められないのだ。おそらくこの瞬間のセシルが一番美しいと表現していい、しかし・・・メンバーの誰もが見たくない顔の一つである。

 今回の生贄となった俺は・・・二日間、ほぼ休憩なく話を聞かされた。食事も・・・風呂も・・・トイレまでついて来る始末。寝る?もってのほかだ!寝た瞬間強烈なボディーブローを放ってくる!気合いで起きてなければならない。


 ・・・満足したセシルは・・・二日目の深夜・・・ようやく眠りに就いた。


 「・・・そこ、俺のベットなんだが・・・ハァー・・・。」









ここまで読んで頂きありがとうございます。

これからの展開は、強すぎる主人公と、主人公に対抗するために修行する魔王。おまけでそれに巻き込まれる異世界の勇者の話が作れて行けたらなと思っております。

果たしてしっかり作れるのか!未だに素人から抜け出せない作者をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ