第一章 始まりの章
数千年の封印が破られ魔王が復活。
王国を蹂躙する寸前でとある冒険者チームが現れる。
◎誤字脱字に関して・・・ありましたらご指摘下さい。何度も確認しているのですが、注意力が足らず見逃しが多いいです。苦手な方はブラウザバック推薦です。
◎ど素人が趣味程度に書いてる作品です。プロの方や本格的にやられている方に比べると酷い構成です、これらも苦手な方はブラウザバック推奨です。
以上をご注意の上、用法容量守ってお読みください。
この世界は危機に瀕している・・・ことはない・・・はずだった。
つい最近、何千年も前に封印された「魔王」とかいう奴が復活したらしいが。それもほとんどの奴は信じていないだろう。神を信仰する奴らは、お告げがあったと言って言いふらしてる様だが。あいつらはいつも嘘か本当か分からないことしか言わない。
でも、俺も含め多くの人間が真実を目の当たりにすることになる。
それは信仰者達が騒ぎ始めてから一週間後の出来事だった。
ここ、プリル王国の首都で都市を飲み込む魔物の群れが突如として「発生」し、首都を蹂躙したのだ。その時、この魔物達を引き連れて現れたのが・・・「魔王」である。
無骨な黒のフルメイルの鎧を身につけ、兜の下に見え隠れする禍々しい骸骨の顔…。おびただしい数の魔物と共に現れたそれは迎え撃つ兵達を薙ぎ払いながら王城へ進軍した。
迎え撃った兵達はほとんどが魔物の餌食になり守りが無くなった王城はあっという間に陥落するかのように思えた。
そこに立ち向かった者こそ、冒険者で生計を立てている俺・・・ミークと。
同じく冒険者でチームを組んでいる大切な仲間達。
巨大斧を扱うゴツい身体だが愛嬌のある顔をしている青年・・・カイリ。
魔術に長け、研究大好きな魔性の女性・・・セシル。
元は貴族の癖して手癖の悪い斥候担当の少年・・・ダン。
そして最年長。50歳とは思えない若さで神官の服をまとい、整えられたヒゲと鋭い目つきのオヤジ・・・ベン。
そう、簡単に諦めない奴は居るのだ。どんな困難にだって常に向かい合って来た。どんなに無理だと思うような障害だって乗り越えて来た。いつしか志を同じくする仲間も増えて共に戦う仲間となった。この俺がな。
「おい、皆して付き合わなくても良かったんだぞ?」
俺はついて来てくれた仲間に嬉しさを隠しきれず、微笑みらしくない事を言う。
「おいおいそう言うなよ。確かにお前は強い。でもな?仲間をほって逃げる様な奴にはなりたくないよ。それに、ストッパーが居ないとやりすぎちゃうだろ?」
「そうだよ!お前一人の手柄になったら報酬が少なくなるじゃないか!こう言う時は、頭数増やして少しでも多くもらえる様にした方が良いに決まってるだろ?」
カイリとダンがそれぞれの思いを俺に言ってくる。カイリとは長い付き合いだけど、こう言ってくれるこいつは本当に頼もしいし嬉しい。ダンはいつも通りのダンだ。本当に貴族か?と言うほどガメツイ。元々報酬なんてもらえるかも分からないのに、その事にしか考えが及んでないらしい。
「本当に坊やはお子様ね、これは依頼を受けてるわけじゃないし、報酬が貰えるかも分からないのに。」
「ふむ・・・まぁ、功績を国王へ献上すれば貰えるかも知れんの。」
セシルがベンの言葉に「なるほど、その手があったわね」と納得している。
ここにいる全員、すでに目の前に魔王が居るにも関わらずこんな調子で会話を続けている。その間に魔王は、ミーク達5人の周りに魔物を配置して取り囲む様に陣を作っている。
「愚かな人間よ・・・我を前に随分と余裕だな。」
今までなぎ倒して来た兵とは違い、余りにも余裕がある彼らを前に流石の魔王も少し驚いた様で。興味本位だったが彼らに対して話しかけた。
それに対してミーク達は驚いた声を上げてそれぞれ思い思いの反応を繰り出す。
「なぁ!言葉が話せるのか!」
「おい・・・マジか。もしかして高位のアンデットなのか?」
「お!なんだ言葉通じんじゃん!ねぇ!魔王取引しない?」
「あらあら・・・これはこれは・・・いい研究材料になりそうね。」
「なんと!我輩も神官の端くれ、迷える魂は神へ送り届けなければならん。」
魔王は感じ取った。・・・・・・・・・こいつらヤバイと。
今までの人間達であれば悲鳴をあげるか錯乱して逃げようとするかのどちらかだった。しかし目の前にいる彼らはそうではない。ただ普通に驚いただけ・・・むしろそれがマシなくらいだ。取引を持ちかけられたり、自分を材料にしか見て居ない者までいる。これは間違いなく本物の余裕だと魔王は見出した。
魔王は瞬時に切り替えて彼らへ攻撃を開始する。周りに集めた魔物を一斉に突撃させ、さらに自分自身が使える最高威力の魔法を集団に放つ。自分で用意した魔物ごと消し去る威力だが全く気にせず躊躇なく放ったその姿はまさに魔王そのものだった。
この様子を文章で表すには難しい。とてつもない轟音と爆風・・・さらにあたり一面の建物が吹っ飛ばされる様は、例えようのない恐怖を感じさせるほどだ。
普通に考えれば、この攻撃で生き残る者は居ないだろう。先ほどまで建物に隠れて見えなかった王城が・・・。その攻撃の後は、建物どころか王城の周りにあった城壁すら消し飛ばし守られていた王城が露わになってしまっているほどの光景を作り上げてる位だからだ。
これほどの威力・・・生きては居ない・・・魔王はそう確信したその時だった。
「全く、なんと言う威力じゃ。守りの魔法でギリギリとわな。」
「助かったよ!ベン!」
「ホント、ベンのオッさんはこう言うのだけは得意だよねー。」
五人は健在だった。
魔王は驚愕した、今まさに信じられない現実を見せつけられている様な気がした。そして、魔王は瞬時に理解する。『今のままではこいつらに勝てない』と。
魔王は慢心などしなかった。自分が封印された時はそれが原因で敗北した。だから魔王は即座に決断する。
「なるほど、今の我ではまだ足りぬか・・・。誇れ、我を退けた力見事なり。いずれ・・・この借りは必ず返す。」
そう言い残し、魔王は瞬間その場から居なくなり姿を消してしまった。
「おい!逃げるな!・・・セシル、追跡は?」
「いえ、無理ね。『瞬間退場』ですもの・・・追跡もできない最高位の転移魔法よ。」
俺は地面を蹴り上げ悔しさをぶつける。
カイリが落ち着かせるようになだめつつ俺を制する。
「落ち着けよ。相手がそれだけ有能だった・・・それだけだ。ベン爺さんの守りを見ただけで戦力を把握したんだ。むしろ今度会った時の方が強くなってる可能性だってあるんだぜ?油断出来ない相手だよ。」
「いやいや、カイリ。これあれだよ?本当のタダ働きだよ?献上する物も無いしどうするの?!」
ダンはすでにお金の事に考えが及んでいるみたいで、タダ働きは嫌だと必死になんとかならないかと頭を使っている。
「そうだ!そうだよ!魔物の死体が王都中に転がってるじゃないか!少し手間を考えると割に合わないけど・・・タダ働きよりは良い!んじゃ、そう言う事で僕は行くね〜。」
さっさと自分の中で結論付け、ダンは音もなく居なくなってしまった。おそらく彼が満足するまで見つけることはできないだろう。
「相変わらずじゃな・・・。しかし、キツかったの~。割と本気で焦ったぞ?」
「あら以外ね。正直・・・大した事ないと思ったんだけど。と言うか、あれ位の敵止められないなんて・・・この国の兵士弱過ぎじゃない?これらなまだ高ランク冒険者達の方がマシよ?」
さほど疲れているようには見えないベンに対して、セシルは辛辣にこの国の兵を弱いと断言する。
実際はそんな事はない、冒険者が特段強い訳ではないし兵隊が弱い訳でもない。目の前に未知の存在が現れ、精神状態が正常じゃなくなればどんなに強い人間でも弱く脆くなる。ただ単にそれだけの事なのだ。
魔王が去った後。王都は蹂躙された痕跡が酷く、無残な有様になってしまったが。ギリギリの所で王城は無傷ですみ、王族や大貴族達は被害を免れた。
魔王を退けた功績は非常に大きいのだが・・・ミーク達の功績は認められなかった。目撃者がいなく本人達も事実を隠して冒険者ギルドに報告したからだ。
これに対してダンは猛反発したのだが、全員の説得とこのチームの目的をもう一度話して納得させた。
チームも目的・・・それは。
「多くの人の助けになるよう行動する。過去の自分と同じ境遇の人々を一人でも多く救い出す。」
ここにいるそれぞれが抱える過去。それを跳ね除けて今がある。力をつけたのは一人でも多く自分のような人を救う為・・・そこに栄誉などいらない。そうやって集まった仲間だ。今回のことだって・・・救えた人の方が少ない。それなのに、胸を張って威張り散らかすことは出来ない。
「・・・分かってるよ。皆んなが言いたい事はさ?・・・でも!万年平凡ランクに居るせいで生活が困窮してるのも事実だろ!」
「あ・・・うん。ダンの言いたいことは分かるよ。」
そう、基本的に功績を求めて仕事をしないため、彼らは実力がある癖に冒険者ランクが低い。大きな事件の解決や強力な魔物の討伐もしたりするのだが・・・ほとんどが依頼の外。どんなに倒したところで、目撃者や討伐した部位がなければ評価はされない。
討伐部位が最も証明になるのだが・・・セシルが研究材料として全て使ってしまうため残るはずがない。
なので彼らは常に金欠なのだ。
「誰のおかげで生活できてると思ってるんだ!僕位がめつくならないと皆死んじゃうよ?!」
「分かってるって、次からはそうする。」
ひとしきりダンの叫びを聞いた後、皆は今後のことについて話し始める。
現在彼らが居るのは冒険者ギルドに併設してある食堂。王都が現在の惨状なため出せる食事が無く開店休業中みたいな状態だ。
あちらこちらで復旧の依頼があるのだが・・・金額が安すぎるため殆どの冒険者達は手を付けていない。もちろん率先して手伝って居る人達もいるが・・・ごく僅かだ。
「さて、俺はこれから街の復旧を手伝ってくる。カイリも来てくれるか?」
「おう!まずは貧民街からだな?」
カイリは気合を入れて予定を訪ねてくる。俺はもちろんと頷いて返す。
「吾輩は傷ついた者を癒してくるとしよう。神殿の奴等はきっと動かん、この罪は吾輩が償う。」
「私は・・・孤児院に行ってくるわ。あそこも今大変でしょう。」
「なんだよ皆して真面目に・・・じゃ、僕は情報持って来ようかな。なんか神殿と王城で面白いことするって聞いたし、それ調べるよ。後は・・・皆の生活費だよね。」
それぞれの方針が決まり、各々行動を開始する。
復旧は思いのほか時間が掛かった。彼らがようやく落ち着いて時間が取れるようになるのはこれから約半年後のことだった。それでも傷跡は残っているのだが、以前の活気ある王都へ戻り始めた。
半年後・・・冒険者ギルドの食堂
「久々に面子が揃ったな・・・、爺さん少し老けてねーか?無理し過ぎだぜ?」
「ふん、これは贖罪だ受け入れるさ。ミークの方こそやつれたのではないか?しっかり食べておらんな?」
互いに軽口が叩けるほど元気があるようなので大丈夫そうだと理解する。
俺は皆んなが思いのほか元気にしてたみたいでホッとした。忙しくしていた時は会う余裕すら出来なかった、仲間の事は本当に大切なんだ何かあったらと思うと気が気じゃなかった。
「ミークは本当に心配性ね・・・でも、そこが良いところなんだけど。」
「セシル、お前も疲れが見えるぞ?今日は早く休めよ?」
お互いに軽い話を交えながら今までの報告をしていく。正直内容はほとんどが個人的な奉仕活動だ。冒険者としての仕事ではなく、あくまでもお手伝いである。冒険者にすら助けを求められない人達が多く、そう言う人達のために動いていた。結構そう言う人たちは多く、ほぼ無限に作業は湧いて出てくる。
そんな無限とも言える報告をそれぞれがみんなに報告する。その表情は満足そうに笑っており、楽しそうに報告を続けている。
「それじゃ、ここら辺で重大な情報を僕から出しちゃおうかな〜。」
皆の話が一段と盛り上がった頃。ダンがズイッと前のめりに身体を乗り出して皆んなの視線を奪う。
「なんだ?そんな大きな情報あるのか?あ・・・ダン、盗みをしたのなら早めに自首しなよ?」
「ちげーよ!カイリは僕をなんだと思ってるんだよ!全く。これは多分だけど僕らにも関わる事だよ。」
前置きをしつつ、ダンはみんなの顔を見渡してタメを作る。早く言えと言わんばかりに俺はダンを見るが、もったいぶってまだ言わない。そろそろ我慢の限界になろうとした時、ダンはスパッとようやく口を開き・・・。
「国王は、異世界から勇者を召喚する命令を関係各所に出した。」
俺たちには、その事の重大さが理解できなかった。
「フフン!」と胸を張るダン。「これはまだどこにも出回ってない極秘も極秘の情報だぜ!」と言っているが、皆はどうもそれがすごい情報だとは理解できない。
まぁ、『勇者』と言うのだからそれは凄いのだろうが。なぜわざわざ異世界からなのか理解できない上に。何故このタイミングで呼び出す準備をしだしたのかがさっぱりわからない。さらに付け加えるなら、ダンの言う、自分達にも関わるとはどう言う事なのかもはっきり言って意味不明だ。
四人が複雑な顔・・・なんとも言えない表情でダンを見る。
当の本人は、思った反応が返って来なくてむしろ困惑した様子になっており。ワタワタと説明しだす。
「いやいや!なにその反応!え?知らないの?!前回の魔王を封印した昔の伝記。僕は学院で習ってたし、有名な話だと思ってたんだけどな。」
「昔の伝記?・・・あ~あれかしら。子供達にせがまれて良く読み聞かせた絵本・・・勇者物語の話?」
ダンはそれだと言わんばかりに答えたセシルへ拍手をする。・・・なんかムカついた。
「あんなのおとぎ話だろ?しかも、数千年も前の話だ。あの物語だって『異世界からの勇者』なんて書いて無かったぞ?」
「ミーク・・・それはあくまで大衆向けに作られたからだよ。本来は『異世界から来た勇者』の一文は確かに存在してるんだ。僕はこれでも貴族学院を出てるからね、一般の教養とは一味違うんだよ。」
誇らしげに胸を張り、鼻を高くして威張る姿は・・・まだまだ子供だなとチームのメンバーは溜息を付く。
しかし、なんとなく理解できた。魔王を再度封印するためには『異世界の勇者』の力が必要だと言うこと。おとぎ話でも最後は勇者の強力な魔力で封印されたと記されている。それも数千年前の話であり本当かどうかも怪しいのだが・・・。こればかりは検証の仕様が無いので、事実を確認するまでは分からないだろう。
だが・・・俺は疑問に思う。・・・・・・・魔王はそんなに『特別』だったようには思えない。
言い伝えで聞いたような残虐な行為をしている事は絶対に許せないのだが。俺らが対峙した時そんなに圧力を感じなかった。強力な魔法を味方事巻き添えに放たれた時は焦ったが、ベンの守りで容易く守れた。
・・・『本当に異世界からの助けが必要なほどの相手なのか?』俺は大きな疑問にぶち当たる。
「ミーク、何考えてるか分からないけど。お前が深く考える必要は無いと思うぞ?まぁ、『無能』どもが何をしようが僕達には関係ないさ。今はやるべきことがまだ沢山ある。それに目を向けて集中しようよ。」
考え込んでいた俺を引き戻す為に肩にゴツイ手を乗せて笑うカイリ。今サラッと凄い事を言ったが、これは彼の過去に関係しているので深く追求しない。今は深く考え込むよりも、俺等の手の届く範囲の事に集中しなければ。
俺は気持ちを切り替えてダンへ話しかける。
「要は、魔王を倒すか封印するか・・・それをするためには『異世界の勇者』が必要だってことは分かった。だが・・・俺らとなんで関係があるかもしれないのかが分からない。」
「まぁ、これは憶測だけどさ。呼び出された『勇者』って文献によると『チート』?とか言う僕も意味は分からないんだけど・・・特殊な力があるらしいんだ。前回の勇者はそれで多くの民を助けたらし・・・僕等の力になってくれるかもしれないってことだよ。」
なるほど・・・そんな特別な力があるのか・・・。
でもな・・・。
「ダン!その考えは止めよ!人であればどんな性格をしておるか会うまでは分からん!安易に希望を持つことは、それすなわち!現実を知ってからの絶望となる!・・・今は考えず、見定められる時まで待つのじゃ・・・。」
ベンは声を荒げてダンに注意する。この爺さんも結構な過去の持ち主だ・・・ある意味今の言葉は重い経験談みたいなもんだ。
それに、同じことを俺も思っていた。ここに集まってる仲間だって初めはそうだった、しっかりと見定められるまではまるで敵同士だった・・・。勇者が本物の志を持っている奴なら、行動や噂で分かるだろう。それまでは俺等には関係ない、おそらく異世界から呼ぶんだから待遇は良いはず、それに『勇者』だ・・・戦いに向かうんだからおそらく常に最前線。普通の市民が間近でお目にかかれることなんか滅多に無いだろう。
「ベンの言う通りだな。ダン、あまり良い方にばかり考えない方が良い。・・・それで?いつ頃召喚されるんだ?」
俺は一度話を切り替える。いい加減話を先に進めたい。今日は集まったのは久々に休日を取る為だ、あまり余計な事に体力を使いたくない。
「観測的希望を話したことについては謝るよ、僕も痛い目見てるし。召喚の儀はおそらくここ一週間以内さ。神殿の神官達が準備出来次第じゃない?なんでも、特殊な魔法を使うらしくて・・・王族の血統しか発動できないんだとかなんとか?あの王族の中で、魔力が豊富な第二王女のハープ王女殿下が行うらしいよ?」
「あら・・・そんな魔法もあるのね・・・。すごく気になるわ、何とかして潜り込めないかしら?」
ダンの説明にいち早く反応したのは魔法の研究大好きなセシルだった。とにかく知識欲が強く、知らない魔法があれば北へ南への大移動すら平気でこなす。かなり危険な橋も渡ったて来た、ある意味『狂っている』魔法使いだ。
「うむ・・・ならば、吾輩の伝手を頼るか?一人くらいなら潜れるだろう。」
「あら、ベン!ホントに?!それならそうして、私は大至急準備するわ。あ!休んでる場合じゃないわね・・・皆、悪いけど私は準備があるから先に失礼するわ!」
ベンの助け舟に喜んで飛びついたセシル。疲れていたはずの顔色はすっかり明るくなり、心なしかハリとツヤが出たような気がする。俊敏な動きでギルドの出入り口まで行くと、あっという間に姿を消してしまった。おそらく『転移』系の魔法だろうが、彼女があみ出した特別製なので実際の所は誰も分からない。
「・・・ベンさん。良かったんですか?セシル本気にしますよ?」
カイリが心配そうにベンを見る。ああなってしまったセシルは誰にも止められないので、もし仮に潜り込めなくなったと言ったら・・・空から大きな岩が雨のように降ってくる。これは物の例えでなくて実際にそうなるのだ。
以前、セシルと大事な約束をした人物が居た。その者が彼女を裏切り、陥れようとした時があったのだが・・・。セシルの逆鱗に触れたその者は、自分の所有していた建物ごと岩で押しつぶされて生き埋めにあった。その光景を見ていた俺達全員は『絶対に怒らせてはならない』そう思ったほどだ。
「ハッハッハッ!問題ないじゃろ。それに、彼女がああして頑張っているのも、ある目的のため・・・。吾輩はそれも応援する意味で後押ししただけだ。・・・どれ、仕事が出来た。用事を済ませてくるとするかの。」
ゆっくり立ち上がったベンはセシルのように俊敏にとまでは行かないが。しっかりとした足取りでギルドを後にしていく。
残された三人はと言うと、それぞれの顔を見て考える。
「・・・俺達は休むか。せっかくだしなんか食って行こう。」
「あ!ミーク!ここでは駄目だよ。食事ならいつもの店で!ここ高いんだからー、どうせなら皆で行きたかったけど・・・仕方ないね。」
「ハハハッ、僕等のお財布ダンに預けてて正解だね。・・・それじゃ、行こうか。」
報告は皆一通り済んでいたし、この後は食事に行くつもりだった・・・が。セシルはあの様子だし、ベンも準備で行ってしまった。全員揃っての食事にはならなかったが、三人で久々にのんびり出来るだけでも良しとするか。
「・・・と言うか、ダン・・・お前があんな事言うから。」
「ハァ?!あそこで言わないで何時言うんだよ!もしこれが全部終わってから言ってみろ!・・・セシルが・・・ウッ!考えただけでも悪寒が・・・。」
「ああ・・・ダンお前は間違いなく正しい行動をしたよ。悪かった俺が謝る。」
もし言わないで後からバレてからの事を思うと、ダンもミークも顔を青くして震えあがるのだった。
それから数日後・・・国王から大きな国民に対して重大発表がなされた。国全体に特殊な魔道具を使い響き渡った国王本人の声明・・・。
『我が国は、世界を脅かす存在である魔王を再び眠りに就かす為。『異世界からの勇者』をこの国に召喚した!』
その声明は、魔王と言う存在に怯えていた民達に希望の光を与える事となった。国中から歓喜の声が鳴り、魔王を打倒せと叫び、異世界から来た勇者に感謝する声が上がった。
そのさらに数日後に、ようやく勇者は国民達の前に姿を見せることになる。期待を寄せられている『勇者』は・・・果たしてどんな人物なのか・・・。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
新作・・・と言うほど声を大にして言えるほど作品上げてませんが。・・・新作です。
あくまでメインは別作品、もう一つの方となってます。そちらを優先して書き上げるので、こちらの更新速度は超!超!遅いと思います!
プロの方なら沢山の作品を掛け持ちして書き上げられるのでしょうが・・・ど素人の私には到底無理です!
もし、この作品が面白いと思った方はぜひブックマーク、評価の方して頂けると嬉しいです!作者の励みになります!これからもよろしくお願いします!