(cost5minutes) hedonism story
まぐわいの最中にあって、誰もが遊蕩の気に囚われる瞬間というのはあるものだ。そして世の不条理の大半は、大抵そんな時に唐突に意味もなく起こる。
ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネはその日、遊びに行った邸宅で、同席したとある夫人――アンナ・カヴァン――を口説き落とし、閨房にて事を致していた。寡婦であった彼女は、昔においては類まれ無い美貌を振りまき、多くの男性を淪落させたように思われたが、今となっては、普遍的なひとりの男性のままにされるほど、彼女もまた落ち目にあった。
彼女は恭順で、彼の、醜悪な、偏りのある癖に、なされるがままに成っていた。夫を亡くしてからというものの、幽きものが彼女の辺りに漂うようになり、それが一層、男性の気を強めた。当時の華やかな風合いは形なくしていたものの、代わりに得た婀娜っぽさが、それ独特の妖気を醸していた。ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネは、そんな彼女の雰囲気に惚れ込んだ一人だった。人いきれから抜けだした二人は、また別の、それ特有の匂いを立たせて、睦み合っていたので、幾ら声を押し殺そうとしたところで、宿泊した客人たちにそれは筒抜けだった。そして翌暁には、その噂がまたたく間に広がっていた。当然であった。なにせ彼女と彼は、敵対した隣国同士の陛下と女王であったのだから。