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用和為貴、その術は

上杉滅亡。


それは、他国へ出征することで国を保つという施政の限界を示していた。



でも限界には達したのは、何を隠そう俺のせいかも知れない。

だが謝らないし反省もしない。


これを機に、武田とは正式に同盟を結んだ。

信長じゃなくて俺が、な?



北信濃で武田が上杉から奪った領地はそのまま加算。

それ以外の、奪えなかった上杉領は俺たちが頂いた。


ま、上野の上杉領は武田と北条で上手く分け合ってくれたらいいよ。



ふと気付くと、俺の領地だけで半ば武田を囲むことになってしまった。

なんか変な感じだね。


北条とは同盟はしなかったけど、武田を仲介役として仲良くしとこう。




信長は順調に中国路を進んでいる様子。


足利最後の将軍様は、完全に籠の鳥状態だ。

まあ、それも一つの平和な人生じゃないかな?


早々にやらかして、信長に放逐されたら討ち取る積りだったが。

どう転ぶか判らんもんだ。


俺が武田と結び、上杉が滅び、朝倉も動かず。

三好は斜陽、毛利も信長に攻められつつある。


九州や関東は遠いし、そろそろ諦めて余生を謳歌すれば良いと思うんだが……。


ま、将軍様の人生は将軍様のもの。

俺がイチイチ口出しすることでもないか。


例えその結果が無残なものであっても、な。




中央と西は信長に任せるとして……。


いや、ホントは俺も西に行きたかったんだよ?

山陰だけでも、とか思ってたのにさー。

信長の奴が……



「なあ、丹後から但馬に進んでいいか?」


「駄目だ。」


「えっ…、山陽と四国、九州も任せるからっ」


「却下だ。」


「……えっと、」


「貴様には北陸と東を任せる。」



取りつく島もないとはこのことか。

俺は絶望した。



仕方が無いから領地の整備をしつつ、北へ進む。

関東甲信は北条と武田に任せて、出羽から会津、白河を経て常陸まで。


ほら、夢想するのはタダだから。



おっと、伊達は早めに潰しておきたいな。

独眼竜が覚醒するその前に。


その為にはーっと。

蘆名と相馬を取込んで、佐竹は……北条の仇敵だったか。


房総と上野で我慢して貰えるよう、交渉してみるか。

ダメならその時。

佐竹と不可侵結んで北上すれば良い。


いや、待てよ。


佐竹は上杉と近しい。

その上杉を滅ぼした俺のことも、敵視するかも?



ま、その時はその時。

腹案も多数認めておけば、大丈夫だろう。



同盟した武田にも軍勢を出してもらえば……。

そう思った時、ハタと気付いた。


武田に出口がない。


完全に、俺と北条に塞がれてる。


駿河で海に接してるけど、大した水軍も持ってないし。

上野でも陸奥に抜ける程の力はない。



いずれ、遠くない内に武田は破綻・暴発するかも知れない。


今はまだ青色吐息の状態だが。

国力を回復しきったり、抑えきれない程の不満が噴出した場合。


矛先はどこへ?


長年の同盟相手、北条には向かうまい。

やっぱ織田だよな。


それも、南……。

まずは俺たちに奪われた駿河西部か。


水野と松平だけで支えきれるか?

無理だな。


北条の援軍も居るかもしれないし。


予感でしかないけど、対策は考えておいた方が良さそうだなー。


やれやれ。

次から次に……。


自業自得とか言いっこなしだぜっ。




とりあえず、上杉滅亡の折に捕えた前関東管領。

コイツを北条に貢いでおいた。


今更感もあるが、多少の点数稼ぎにはなるかな。



なんてことをアレコレ考えて、実行したり断念したり。

上手く行ったり挫折したり。

継続は力なりとも言うけれど、中々難しいものだった。



そして予感は当たる。



「駿河西部と北信濃を返せ、か。」


「文面はもっと丁寧で、遠回しな表現だったけどな。」


「そんなことはどうでも良いだろうが。」


「まあね。」



北条との盟約を強化した武田が、勢力回復を目論んで来た。

善後策を練るべく、久々に信長と面会対談。


信長は着々と天下人への道を進んでいる。

お互い、決着を付ける時が近いと言う感覚がある。


その為には。

不確定要素は、可能な限り摘んでおかねばならない。



「それで、どうするのだ。」


「北信濃はともかく、駿河西部は渡せない。」


「信濃もダメだろうが!舐められるばかりだぞ。」


「うーん、悩むね。」


「何を悩む。」


「何をって、対処をだよ。」


「そうではない。」



何時の間にやらキレッキレの本気モード。

まあ今回は俺が責められてる訳じゃないし、普通に対応するけど。


てーか、ばれんの早すぎ。


苦笑を禁じ得ないってな。



「分かるか?」


「分からいでか。」



ま、そーだよな。

永い付き合いで、俺だけが信長のことをよーく知ってるってこたーないか。

向こうだって、俺の事は熟知してるだろう。


ばれたってんならしょーがねぇ。

大人しく白状してやんよ!



「盟約破棄の名目を、誰に押しつけるかだよな。」


「最初からそう言え。」


「いいじゃんか別に。」



武田の将来に不安を感じてるのは、何も外部の俺だけじゃない。

内側にも、むしろ内側の方が沢山居る。


大部分は突き上げて当主を動かした考えなしの有象無象だろう。


しかし中には、敢えて織田に擦り寄る奴も居るのさ。

そいつらの大半は武田勝頼に見切りをつけて……、なんて輩なんだが。


極一部、汚名を被ってでも武田を残そうと言う行き過ぎた忠臣も居る訳だ。

香坂とか真田とか、あと穴山とかな。



いや、穴山は武田一門としてってのが起点だから忠臣とはちょっと違うかな。

でも武田の将来を真剣に憂うと言う点では嘘がない。


木曾とは違うのだよ木曾とはっ



そーゆーわけなんでね。

穴山、君に決めた!




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