八方画策、切り倒す
朝倉、上杉、武田、北条が同盟。
そんな噂が漂ってきた。
あらあらまあまあ。
ぶっころっ!
将軍様は存外大人しい。
水面下ではうぞうぞと動いてるけどね。
自ら挙兵して、なんて軽挙は慎んでる御様子。
チッ、使えねえなぁ……。
信長も不機嫌さを隠そうともせず、キレ気味に床几を叩いてた。
そして小姓の森君がビクッとしてるのが見えたり。
超頑張れ!
俺は遠くから応援してるぜっ
既に畿内は織田家のもの。
西は中国路に足を掛け、東も駿河西半分までゲットだぜ!
飛騨や大和・紀伊、淡路なんかもな。
そんだけ版図に加えてる。
上下織田家併せて、だけど。
なお、上下織田家では外交方針が少し違う。
なんせ信長は武田らと領地を接してない。
代わりに三好や毛利とかの影響がでかいけど。
俺は朝倉、上杉、武田と接してる。
その関係で色んな伝手を持ってたりもするもんだ。
特に武田との関係は深い。
これは、現在の暫定当主が織田の婿であるのも大きいな。
どういうことかって?
武田が織田との和睦を受け入れたってことさ。
いやね?
最初は頭ごなしに拒否されたよ。
でも、小出しに詰めて行ったら徐々に弱気になっていってねー。
遂には武田勝頼との直接会談にまで持ち込めた。
誰が?
俺が。
条件は、まず獲得領土として駿河西部を頂く。
あとは、勝頼を武田当主として認めるっていうもの。
領土については、そのまんまだね。
武田勝頼の当主認定は、要は武田義信を表に出さないよーんって言ってる訳だ。
誰も明言してないけど。
まあそーゆーこった。
だからこそ、四家の同盟ってのに驚いた訳で。
慌てて詳しく探らせたよ。
そしたらさー。
ガセでした!
正確には、大同盟を目指したけど不調に終わったってとこかなー。
始まりは、俺らに圧迫された朝倉が上杉との同盟を目指したことだったみたい。
次に北条が武田に不安を覚えて、上杉とも連携を模索した。
上杉は色好い返事はしなかったけど、四家で使者の往来が発生。
そんなとこらしい。
噂は尾ひれ背びれってな。
簡単には南下出来ない朝倉は、加賀を得るべく北上する。
その為に上杉を利用したい。
だが上杉は越中から能登を臨み、出羽の庄内をも望む。
余所に構ってる暇はない。
武田はゴタゴタ真っ最中。
信濃と上野、駿河がスッキリしない上に先代の負の遺産がうざったい。
北条は西より関東。
要となる上野支配は、先代よりの悲願と言える。
まー、難しいよね。
「と、言う訳なのさ。」
「左様か。」
「で、俺は飛騨経由で北陸へ向かおうと思うんだ。」
「朝倉は放置か?」
「放置で。」
「ふむ。」
とは言え、いきなり加賀を取っちゃうと朝倉と険悪になってしまう。
上杉が後ろに控えてる以上、名目を与えるのは宜しくない。
って訳で、能登に向かう。
その準備を進めようねー。
大っぴらに!
上杉、飛騨へ侵攻。
俺、越中へ侵攻。
これぞまさしくクロスカウンター!(偽)
その隙をついて(?)朝倉が加賀へ侵攻。
同時に武田が信濃の上杉領へ侵攻。
同じく、最上が出羽庄内へ侵攻。
更に北条も、上野の上杉方へ侵攻。
カオス。
なんちゃって上杉包囲網の完成だ!
朝倉はあんまり関係ないけど。
勿論狙ってやった。
最上以外。
北条は武田と同盟を結んでおり、織田は武田と和睦した。
だから織田と北条も接触してみたりしたんだよ。
その結果がこれ。
上杉詰んだな……。
とはならないのが怖いとこなんだが。
さて、上杉はどう動くかな?
一番困るのは、飛騨から美濃へ進軍し続けられることだが……。
そうはならないと予想してる。
だって補給が追い付かないもん。
すぐに干上がるよ。
現地調達なんかしたら、それこそ心中だ。
現実的なのは、越中に取って返して俺を打ち殺すことだろうか。
もしくは信濃の守護に向かうか。
上野と出羽は諦めて貰おう。
特に上杉は関東に対して強い意欲を持ってる。
出来ることと出来ないことの分別は付くだろうが、気持ちは別だ。
せいぜいストレスを感じるこったな。
わっはっはー!
──馬蹄の音。
あ、こっち来た?
よっしゃ逃げろー
どこへってお前さん……。
明日へ向かって全力疾走だ!
さあ、能登へ向かうぞ。
大丈夫、既に準備はしてある。
順調、順調!
俺たちさえ捕まらなければ問題ないっ。
そろそろ、第二陣が飛騨から越中と北信濃へ攻め込んでる手筈だ。
ほら見ろ、若狭から船で回ってた軍勢が陣を敷いてくれてる!
数は少ないけど、俺たちと合流すれば余裕のよっちゃんよっ
諦めんな!
ほわぁっ、矢ァーーッッ
大丈夫。
矢の一本や二本、背中に当たっても矢避けがどーにかしてくれるっ
お前の神を信じろ!
上杉は一旦越後に撤退。
すぐさま軍勢を整え、信濃に向かったようだ。
その隙に俺は能登と西越中を制圧。
命辛々逃げ延びた訳だが、いや中々に面白い経験だった!
重臣たちは苦い顔だが。
ま、二度も三度もする気はないよ。
さあ、加賀に入るよ。
みすみす朝倉に全部取られるのは面白くない。
向こうさんも苦戦してるよーだし、多少は稼いでおかんとな。
とは言えぶつかる訳には行かない。
そちらの征討を応援してるよーって言い送ってくれ。
なに、朝倉とは先代の頃に共同して美濃を攻めたことがある仲だ。
その時は惨憺たる結果に終わったけどな!
よっしゃ、加賀北部の河北郡と石川郡の東部をゲッツ!
さてさて。
加賀に入った朝倉の御一門とは、抜かりなく誼を通じておくとしよう。