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多謀善断、裡を露に

武田が動いた。


あ、若狭の武田かいらいじゃないよ。

甲斐の方ね。


うちと甲斐武田は、準同盟を結ぶ間柄。

東では水野と松平が遠江を取って、武田が駿河を取った。


武田としては、駿河と一緒に遠江にも侵攻したかったんだろうけどね。

水野と松平に援軍を押しつけて、一気に雪崩れ込んでその隙を与えなかったんだ。


それを恨みに思ったみたいでねー。



諏訪にやった奴から結構な内容が送られてきてるんよ。


やがて武田は今川を滅ぼし、嫡男を幽閉。

その嫡男は自害して果てた……。



表向き、そう言うことになってる。

実際はうちに居る。


うん、いずれ何かに使えるんじゃないかと思ってね。

拉致ってみたよ!



いや、ホントは説得して自発的に逃げて貰いたかったよ?


でも拒否られたからさ。

仕方ないよねー。


まあ結局は、幽閉先が変わっただけだ。


武田に気付かれないよう、厳重に密封してる。

でも噂の発露や流布は、ある程度はしゃーないな。


そして誰もが薄々は感付いている。

信長も、武田も。


でも証拠はないし、敢えて詰問もしない。


ホントだった場合、色々困ったことになるからね。

信長も、武田としても。



ま、それはいい。



ここにきて、遂に武田が上洛の意思を示した模様。


対策として、武田嫡男の存在を仄めかす出所不明の怪文書をばら撒いた。


あっさり動揺する甲斐信濃の者たち。

特に武田と同盟してる北条の動揺はでかいっぽい。



「そんな訳で、水野と松平に援軍を差し向けて欲しい。」


「貴様が送れば良かろう。」


「や、こっちは信濃から下りてくる輩が居るからね。」


「…ふん、まあ良かろう。」


「俺の方からも多少は送るから。頼んだぜ!」



信長と共同で対武田戦線を構築。

畿内が落ち着いてるから出来ることだな。


なお、朝倉には手を出してない。

若狭の一件以外。

周囲にこれと言った盾がない分、向こうも安易な動きは自重してるようだ。


俺はと言うと、若狭を確保したのち丹波と丹後に進出。

信長も河内・和泉から摂津まで確保した。


このままだと、俺が確保出来るのは丹波までだろうなー。

それとも山陰に進める様に交渉してみるか?


北陸があるから、うまうまとはいかないかね。


朝倉の動向と始末次第か……。



野望は語ったが、手は出してない。

凌ぎを削るライバルの存在は大きい。


どっちが先に手を出すかなー?


俺としては、信長だと思うんだけどね。

将軍様を放逐したら、いよいよかなって。


信長が放逐したら、隙を見て殺すことは決めてる。

絶対邪魔だもん。


天下の形は将軍だけじゃない。


なんなら、某小説のように任官しなくてもいいくらいだ。

ま、それは行き過ぎか。

時代が追い付かないよなー、流石に。




速報!

武田の当主が病死したらしい。


確定じゃないけど、多分ホントだろ。

早速だけど、駿河に手出してみるか?


なんなら、再び武田嫡男(前)の噂をばら撒いてみても……。



とりあえず、水野を先頭に駿河へ進出。


北条も出てくるかなと思ったけど、同盟があったせいか出てこなかった。

動揺してんのかな。


同じく動揺してるであろう武田だったが、案外激しく抵抗してきた。

お陰で西半分しか取れなかったよ。


ま、ここはじっくり行くとしよう。



ところで、そろそろ武田嫡男(前)の使い道を確定させた方が良いよな。

信長に教えたら殺されるかな?

織田家としては、諏訪四郎改め武田勝頼に養女を嫁がせてる訳だし。




「と、言う訳で武田義信がうちに居るんだ。」


「……。」



久々見たな、信長のキレッキレ本気モード。

ひょっとしたら半ギレ状態かも。


遅まきながら報告することにした。

隠し通すのも無理…じゃないけど、何かもう面倒になってきたから。


大事な話があるって呼びだして、冒頭の説明。

武田嫡男(前)こと武田義信がうちに居るよーってね。


そしたら流石は英傑。

瞬時にして鋭い空気を醸し出してやんの。


すごいよねー。



「今まで貴様はそれを隠し通して来た訳か……。」


「そう、俺の采配でね。」


「理由は?」


「表沙汰にならない為の処置、かな。」



上下織田家は並び立ってるとは言え、実質の当主は信長と認識されてる。

京洛にあって号令してるのも信長だしね。

だから諸侯の使者が赴く先は基本的に信長のところ。


それで、知ってるのを知らないと押し通すのと、そもそも知らないのとでは感触そのものが違ってくると思うのだ。

現に今までも、公式・非公式問わずに武田や北条から使者がやって来てた。

俺のとこに来たやつも居たが、そいつ等はシレッと信長の方へ回送した。


そんな感じで今がある。



「そんな訳さ。」


「……ふんっ」



俺に出し抜かれたのが気に食わないようだ。


ひっひっひ。

かの英傑・織田信長を出し抜いてやったぜ!


ヒャッホーッ



「まあ、それは良い。それで、どうするのだ?」


「あ、うん。どうしようか?」


「オイ!」




結論。

武田義信を公にするのはもうちょっと待ってみよう。


既に確証無き事実として存在しちゃってるけど、そこはそれ。


証拠あんのかこらぁ!?

って言えば、みんな黙るしかない。



むしろ証拠を掴まれたとしても、開き直って正統性を訴えれば良い。

甲斐武田が本来継ぐべき者だぞーって、言い募って。

今更だけどね。


でも武田勝頼は元々諏訪の子。

不満を抱く家中も多いと聞く。


このタイミングで不安要素は欲しくないだろう。



ま、それはそれとして。


まだ使わない理由。

それは、武田と和睦を結ぼうとしてるからだ。


駿河に攻め入ったのは、先代当主が無策慮に遠江に進軍してきたから。

迎撃して、勢い余って逆襲しちゃっただけなんだよと。


後を継ぐ勝頼は織田の婿。

未来へ向けての関係性を再構築しよう!


なんて訴えかけてる。


公には先代の死は秘匿されてる。

だから突っぱねられる可能性も高い。


誇り高き武田が織田ごときに云々。

そんな思いもあるかも知れない。


どっちでもいい。


和睦の条件は現状維持。

つまり、駿河西半国は頂く。


あと裏の条件として、武田義信の存在をこのまま抹消する。



転じて、和睦が結べなければ武田義信の出番となる。


ホント、どっちでもいいんだよ?

俺はね。



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