事上磨錬、際立つ望み
信長が上洛した。
その時俺は、伊勢で近江路を警戒。
尾張には信勝を置いて、東は水野と松平に一任してる。
後顧の憂いなく進軍して、あっさり都に入ることが出来た。
あらすじ。
まず、上洛の大義名分がホイホイやって来た。
それを信長が受けて、道中の大名たちに味方するよう通達。
並行して伊勢に臣従を要請、拒否られる。
浅井と六角、従うことを表明。
道中じゃないけど朝倉にも通知、簡潔な祝辞を貰う。
俺を主将に、信長との合同軍が伊勢に侵攻。
信長、上洛の途につく。
浅井と六角の一部が、三好の誘いに乗って大義名分を襲撃。
信長、撃退して浅井・六角の不義を責める。
反発した浅井の重臣が信長暗殺を謀るも、ひらりとかわす。
六角当主が襲撃に加担と判明、押し込まれる。
信長、浅井攻めを決定。
六角、浅井を攻める信長を背後から襲うべく軍勢を催す。
俺、伊勢攻めを中断して六角を攻める。
六角壊乱、降服。
浅井降服。
浅井、六角の襲撃の中心人物と一族たちを処刑。
俺、再度伊勢に侵攻し北畠を降す。
信長、浅井と六角の仕置きを経て無事上洛を果たす。
俺と信長、自作自演の完遂を悦ぶ。
と、言う話だったのさ!
これは酷い。
だがそれがいい。
北近江と南近江は交換して、俺が北で信長が南を掌握。
領地は地続きじゃないと不便だからな。
伊勢にもちょっとだけ領地を貰えた。
遂に、念願の港を手に入れたぞ!
そんなこんなで信長は上洛を果たし、大義名分も我が世の春を満喫中。
今のうちに存分に楽しむがいい。
俺の領土は尾張・美濃・近江の北や東に広がり、飛騨にも進出を図っている。
でも飛騨はなー。
上杉と武田の勢力争いに巻き込まれそうだからなー。
程々にしとくかなー。
そうそう。
都に入ったら、正式に斯波さんと再会を果たした。
元気そうで何より。
暫くは将軍家や朝廷との繋ぎ役、頼んだぜ!
信長の上洛から遅れること約三ヶ月。
一旦岐阜に帰るとのことで、入れ替わりに俺が上洛。
さーて。
鬼の居ぬ間に、ってことで三好とかが襲ってくるかなー?
襲ってキター!
俺としては別に、将軍様は逝っちゃっても構わんのだが。
流石に信長政権にはまだ必要か。
仕方ないから守っておこう。
べ、別に将軍様のためなんかじゃないんだからねっ
信長に迷惑をかけたくないだけなんだから……。
誤解しないでよね!
やべぇ。
想像以上に痛かった。
掃討完了。
将軍様よりお誉めの言葉を頂く。
思ったよりも真摯な内容だった。
ボンクラなイメージが強かったけど、そうでもないのだろうか。
これが本当の姿であるなら許容出来る、かも?
……。
襲撃の恐怖から出た一過性の感謝だったようだ。
或いは、周囲から上位者としての立ち位置を云々と諭されたのかも知れんが。
そんな錯誤した連中しか居ない時点で終わってんな。
やっぱダメだコイツ。
所詮はその場限りの大義名分でしかない。
まだ使えるから生かしとくけど、遠からず処分することになるだろーなー。
信長に伝えるか迷うとこだ。
端的に事実だけ、伝えとこう。
所感はいずれ、必要が生じたらってことでひとつ。
しっかし、名門って奴はどいつもこいつも度し難い。
メーモンメーモンって鳴き声かってんだ。
生き延びようとする努力は否定しないが、もっと現実を見ろと。
分限を守れと言いたい。
斯波さんだけが例外だ。
御しやすいのもそうだし、分かってて乗せられてるのもそう。
甲斐武田や豊後大友以外の、たいした力もないのにメーモンメーモン鳴いてばかりの輩。
うざったいことこの上ない。
いずれ、今川の如く潰してくれよう!
あ、今川はまだ潰れてなかったね。
メンゴ!
飛騨を勢力圏に組み込んだ。
武力で平定した訳じゃない。
ただ、経済圏に巻き込んだだけさ。
それだけでも、織田家に逆らえなくなる。
都を抑えたってのもでかいけどな。
三木こと姉小路には、飛騨の盟主として頑張って貰うとしよう。
姉小路は名門だが、三木と姉小路に直接の関係はない。
その名門を仮冒するって強かさは中々のもんだ。
系図をちょちょいと弄ってやれば、あっと言う間に三木が姉小路の庶流に!
嫡流が途絶えたから庶流が本流を継ぐ。
珍しい話じゃない。
問題はそれが嘘だってことだが。
それも含めて、珍しい話じゃないから何も問題ない。
系図を弄るのは公家の力であり、公家を操るのは金の力である。
金の出所は姉小路であり、公家に斡旋したのが織田である。
飛騨に所縁のある姉小路(真)は既に無い。
だから、飛騨に所縁のある姉小路(新)が誕生しても誰も文句は言わない。
細かな声は黙殺されるのが世の常。
少なくとも、この時代の武家にあっては罷り通るのさ。
と、言う訳で。
飛騨は俺の勢力下に落ち着いた。
姉小路から俺へ大量の金が動いたが、俺からも信長に大量の金が動いた。
都に対する影響力は、信長の方が大きいから仕方ないね。
別に文句はないよ。
ともかく、これは成功体験。
他所でも出来る可能性を秘めた、モデルケースとなった訳だ。
狙い目は伊賀や紀伊。
同様にしたいところだが、大和が邪魔だなー。
大和に居るのは松永か。
一応織田に降服した奴だが……。
どうせ後で裏切るんでしょ?
とは思うものの、条件が大分違ってきてるからな。
河内の三好を取込んで、そう簡単には裏切れない体制を作ってみようか?
まあいいや。
こっち側は信長の領域だ。
任せよう。
俺は、若狭を望む。
伊勢の小領土なんて問題にしないレベルでの、海を求む。
その為には、影響力の強い朝倉をどうにかしないといけどない。
滅ぼすのも難しいし、御するのも厳しい。
ここはひとつ、飼い殺しにしてる(当人はまだ気付いてない)将軍様の御力に縋ってみるかー。
若狭守護職・武田元明を確保して若狭をゲットォォーーッッ