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勇往邁進、野を望む

唐突に湧いて出た野心を無視して過ごす、充実した日々。


まあ無視するも何も、現時点で天下を望むとか無謀の域だからな。

ただ俺は、信長にそれが出来る力があると知っている。


実際目にした信長は、その人柄、智謀に勇気。

英雄視する俺の贔屓も含まれてるんだろうが、実に素晴らしい。

物語の主人公って、こんなんなんだろーなーって抱いた想いは憧憬かな。


そんな信長が、道半ばにして死んでしまうとか。

これは許されて良いことだろうか?いや違う!(反語)



幸いにして俺は、実に美味しい地位にいる。

色々失敗しなければ、このまま美味しい場所に居続けることが出来るのだ!



あれ、これってフラグ?


いやいや。

俺はフラグ建築士じゃないから大丈夫だ。




でもやっぱりちょっと不安……。


ならば!そんな不安はサッサと解消するに限る!



Hey!信長サーンッ

ちょっとオハナシしようぜ!




「で、人払いまでして。なんだ話とは。」


目の前には若干不機嫌そうな信長。

美味そうに柿食ってたとこから、強引に引っ張ってきたせいかな。

この甘党め!


「まあまあ。ちょっと大事な話だよ。」


割かし真剣そうな表情で話し始めると、信長も居住まいを正す。

おー、信頼されてるなー俺。



「信長は、何を目指す?」


「何だ藪から棒に。」


「いいから。」


「ったく。……俺は、この腐った世を打ち壊す。

 そして民百姓が安心して暮らせるような、新しい世を作る……」


「その為に、天下を獲るのかい?」


「ッ」



信長に敵は多い。


伯父貴、信長の親父さんは主家を凌ぐ力を持ってる。

当然、主家は面白くない。

どころか、危機感を募らせる。

取って代わられる、下剋上されるんじゃないかってね。


だから表向き褒め讃えたり協力してても、水面下では没落を願い、虎視眈眈と機会を窺ってるような輩が多いんだ。


そんな木瓜茄子どもに、未来を潰させてなるものか。

その為の協力は惜しまない。


けど、先に俺の不安を解消させてもらおう。



「なあ信長。」


「なんだ。」


「俺、天下を狙ってるんだ。」


「……なんだと?」



おっと、信長の目が鋭くなった。

キレッキレの本気モードだな!



「本気か貴様……」


「信長が本気なら、俺も本気で便乗するよ。」


「はっ?」



そんな本気モードに対処するには、微妙にずれた回答をすることだ。


ふふん。

伊達に元服前から共に居るわけじゃないんだぜ。

対・信長戦略はバッチリさ!


虚を突かれた信長の顔は、みるみる苦笑で満たされていく。

本気モード終了のお知らせ。



「全く、貴様は……」


「なんだよー。俺は本気だぞー。」


「分かった分かった。」



よし、解消完了!


これで何かあっても

「いやいや、俺あの時ちゃんと言ったよね?」

なんてドヤ顔で言える。


計画通りって言える!

クックックッ。



「もし本当に貴様が天下を目指すと言うのならば。」


「ん?」


「我が好敵手として、全力で迎え撃ってくれようぞ!」


「なんだ、と……」



まさかのライバル認定?

いやいやでもでも、別に俺はそんな展開望んで……ハッ!


待てよ。


あの織田信長、しかも物語の勇者的主人公タイプの信長と……。

そう。

切磋琢磨して共に頂上てっぺんを目指して行くライバルキャラ的な立ち位置になれるかも?



ィイヤッホォォォゥゥーーッッ!!



よっしゃ、俄然テンション上がって来たっ

だったら当然言っとかないとな!



「ならば信長。共に頂きを目指すとしようか?」


「いいだろう。勝手に脱落など許さぬからな!」



来た!

まさかの展開。

でも嬉しい!



こうして再びハイテンションになった俺は、色々とやらかし続けた。


もっとも今はもう大人であり、城主であり領主でもある。

周囲への言い訳と、ばれないような工作も抜かりはない。


出来心でやらかした以前と、判っててやらかし続ける今回。

その差は歴然。

効果も大きく異なることとなる。


悪巧みって、楽しいね!




さて。

信長最大の理解者であり、味方であった伯父貴が亡くなった。


伯父貴の嫡男は信長なので、当然信長が後を継ぐ。

なのだが、そこに異論を挿む者が出た。


織田信勝。


信長の実弟で、伯父貴と同居してた奴なんだが。

まあ当人は真面目で実直。

とても兄を差し置いて、自分がとしゃしゃり出るタイプじゃない。


つまり、黒幕が居るんだねーこれが。

それは誰か?


織田広信。


信長にとっては本家筋にあたり、清州城を拠点にした尾張守護代だ。

因みに、守護職の斯波さんを傀儡にしてるのがコイツ。


伯父貴は勢力ではコイツを圧倒してたのに、最後まで下剋上はしなかった。

そのせいでこんなことになってしまったのだが……。


まあ細かいことはいいか。

ともかくコイツが信長の勢力を減衰させるべく、色々と策動してるって訳だ。


なんでそんなに詳しいのかって?


俺が、コイツと通じてるからさ!



まあ落ち着け。

これも計略の内だ。


俺が保持する戦力は、実は結構でかい。

流石に信長には及ばないが、広信や信勝なんぞ優に凌ぐ。


今は亡き親父が、守護代の後見をしてたってのも大きいな。


あ。


そうそう、実は尾張には守護代が二人居るんだ。


広信は下半分の守護代。

親父が後見してた守護代は上半分の方なんだ。


因みに、上半分の方が嫡流。

つまり、尾張織田家の頂点に立ってるのさ。

家柄だけな!



ともかく、その関係で俺が持つ影響力はでかい。

伯父貴から預ってた代官領も、嫁の化粧料と言う名目で貰っちゃったし。


なお、その嫁からは

「まさか父上を裏切ったりしないよな、あぁん?」(意訳)

と有難いお言葉を頂いてる。


流石は信長の姉だな!



いや、信勝の姉でもあるんだけどな。

その辺、結構大事なとこだと思うんだ。



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