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05 濡れ衣×○○


「濡れ衣だー!!僕は濡れ衣だぁー!」

「いやーだって、ねぇ、あんた、万引きしようとしたべ」

「してないです」

「だってほら、あんた右手に納豆もって」

「いやだから違いますって。これ持っててって言われた時どーしてもトイレ行きたかったんですぅ」

「んだったらカゴとか入れて待っといたらいいやないの。わざわざ食品をトイレに持ち込むなんざ、おかしっちゃろ」

「それぐらい我慢できなかったんですよぉ。小便に塗れた納豆と、トイレの臭がついた納豆、どっちがいいてんですか」

「はいはいこちとら忙しいんでね。さっさと調書取って罰金払ってもらうよー」

「罰金!‥おれの、、、おこずかいがぁ…」

「この街の刑法に感謝するけん。金払えば前科つかねぇんだから」


 警察官はそういうと、クリップに挟んだ黄色い紙を僕に渡してきた。


「証拠は、証拠はあるんですか?」

「そこに目撃者おる」


 指さされた方には、さっき自分に納豆を渡してきた女の子がいた。

 

「この人、私の納豆を男子トイレのなかに!!!」

「違う違う!頼まれたから頑張って守ったんですけどぉ!」

「はいはいもう御託はいいから。おじさんだってさっさと仕事片付けてビール飲みたいんやから」

「ちゃんと仕事しろよ警官!」

「じゃぁさっさと住所と名前とサイン書いて一万円ちょいだい」

「濡れ衣だ、これは立派な濡れ衣だ!くそぅ、いつか訴えてやるからな!覚えてろよ!」

「というかねぇ、あんたがあの後素直に事情話してりゃそうもならんかったの」

「えっ?」

「トイレの窓から逃げ出して走っていった挙句に、川に飛び込んで逃げようとしたのを溺れそうになった所を駆けつけた警察官に助けられて身柄確保されたからこうなってんの」

「ぐぅ」

「まぁつまりは、ちょっとした嫌がらせ、ジョークってこった。あんたに対するね」

「…僕のおかげで皆困ったと…?」

「はい一万円。これでちょっとは反省なされ」





 こうして警察署からどうにか開放された僕はびしょ濡れのボロボロだった。ただ適当にスーパーをふらついていたらなんてざまだろう。つーかなんだよ嫌がらせって。あの時はあまりの申し訳なさに閉口して、黙ってお金差し出したけどさ、警察官があんなことやっちゃだめだろ。全くこの街はどうなってんだ。


「だよねー。信じらんないよねー」

「全くだ。こうなったら勉強して政治家になってあいつらの給料ガン下げしてやるぞぉ!」

「そんあことすると警察官があんたの首を切っちゃうかもよ?」

「どうして?」

「この街警察官は皆色々な物に癒着してる概念だから、コネであんたの人生潰れっちゃうかもよ?」

「なにそれ。やーさんですかい」

「警察官は皆から税金ていうお金を貰うことでサービスをしてくれてるの。決してただじゃないんだから。そこらへん勘違いしないほうがいいわ」

「ふーん」


 なるほど、それも最もな話だ。お金が無ければ人は何にもできないというのは悔しいが本当のことだし、だからお金を沢山払ってくれる人に奉仕したり贔屓したくなるのは道理であるのか。


「っていうかあんた、さっき僕から諭吉を奪った納豆少女じゃないか!」

「今やっと気づいた所をみると、あんたは最高に鈍臭い人みたいねぇ」

「鈍臭い、いうな!ってかどのつら下げて僕に会いにきたんだ」

「御礼言いにきたの」

「御礼?」

「中々律儀でいい女でしょ」

「なんの御礼だよ」

「あんたのおかげで色々盗めたこと」

「……」


 思考がフリーズする。


「あんたが持つ天性の概念が色々引きつけてくれたおかげでね、その隙に色々盗めたって訳なのさぁ」

 

 ニコニコと隣で笑っている黒髪の少女はいつの間にか手に持っていたアイスを、長い長い舌を出してぐるぐると巻きつけて、一口で食べてしまった。


「私の名前は泥棒カメレオンちゃん。あんた、面白いからこれから色々利用させて貰うわよ」





 気がついたら僕は宝石店の前にいた。ポケットには刃物が入っていて血がべっとりついている。それから綺麗な宝石のついた指輪や、札束が大量に入った財布。




目の前には血だらけで倒れた髭面の男…



「ち、ちがう、これは濡れ衣だ…僕は何もやってない!やってないんだぁ!」


 僕はそのばから叫んで逃げだした。

 僕の事を、路地裏からほくそ笑んで見ている三つの影があることなんて露も知らずに。


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