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「それじゃあ、話しかけてみようか!」
<モチ子ちゃん?私は隠れてるからね?私が出ていったら完全にパニックになるから>
「うん!」
モチ子は先程から倒れている女の人の所へ行くと…
「うぅ…はらへったネ…食べ物欲しいネ…」
「…あれ?大丈夫?!えっ?生き倒れ?!」
…モチ子はかなりの棒を読みで近づくが、女の人は天の助けが来たかの様にキラキラとした目で、モチ子を見る。
「おぉ、人ネ!こんな森の中で人に会えるなんて幸運なのネ!」
「あの?ここで何をしてたの!」
「実は私はネ、格闘家ネ!森の中で修行してたんだがネ…食べる物が無くなったのネ…」
「…それで倒れてたんだ!」
「そうネ!」
「あの…もし良ければ、これ食べる!」
モチ子はポケットに入っていた小さなクッキーを女の人に手渡すと…女の人は目をキラキラとさせ、クッキーの袋を開けて食べ始める。
「美味しいネ!甘いものなんて久しぶり過ぎて涙が出てくるネ!」
「それは良かった!…もし良ければお家に来る?何か食べさせてあげるよ!」
「本当ネ!?私ついて行くネ!」
「それじゃあ!走るから付いてきてね!」
「わかったネ!」
モチ子は少しゆっくりと、女の人が付いてこれる様に走り出した。
しばらくすると、モチ子達が通って来た可部の穴までたどり着いていた。
「…大丈夫?」
「はぁ、はぁっ貴女本当に子供ネ!?山道をあんなに速く走るのは大人でも普通は厳しいネ!」
「そうかな?…とりあえず、こっちだよ!」
モチ子はそう言うと穴を潜って中に入ると…女の人も潜ろうと頭を穴から出す。
「これ子供だったら行けるけどネ………って!抜けないネ!」
「ちょっと!何してるの?!一回戻って!」
「無理ネ!がっちりお尻がホールドされてるネ!」
「……心様?…」
「「あっ」」
その時、私達が騒いだせいだろう…一人のメイドさんが洗濯籠を持って現れると……ビックリした表情を浮かべ、洗濯籠を落とす…
「し、侵入者ですわ!!だ、誰か!!来て下さい!!侵入者ですわーー!!」
メイドさんは、その場で大声で叫ぶと…屋敷の中から数人の足音が聞こえ…こちらに向かって来るのが分かる!
「ヤバいネ!早く引き抜いてなのネ!」
「わかってる!でも、お尻がぁー!」
「いた!痛いネ!お尻が割れちゃうネ!」
「大丈夫!元から割れてるから!」
「そう言う問題じゃないネ!?私はお尻に傷が付くって言ってるネ!?」
「それじゃあ、捕まってぼこぼこになるか捕まる前にここの穴の中にハマりながらぼこぼこにされるのどっちが良い?」
「どっちも嫌ネ!!」
「侵入者!覚悟しろ!この屋敷に侵入した理由を吐かせるまでは、警察にも渡さない!」
モチ子達が言い争っている間に、10人程の帝一族専門の警備員と執事さんとメイドさん大勢が青い顔でモチ子達を見つめていた。
「心様!危ないので離れて下さい!」
「心様!あれほど、皆様に迷惑かけるような事を為さらずにと言いましたのに!」
「心様はこの屋敷での唯一無二のお嬢様です!侵入者!心様に傷一つ負わせたら容赦はいたしませんよ!」
「…何か話がややこしい方に行ってるね!」
「それは貴女が説明しないからネ!」
「だって、皆人の話聞かないから!」
「説明しない貴女も同罪ネ!」
「今のうちに!心様を離させろ!」
「「「「は!!」」」」
そんなモチ子達が話していると、警備員達がモチ子を離させ様と走って近づいて来る!
「もう!やけくそだぁーーー!!」
「いだだだだ!!痛い、ネーーーー!?」
モチ子が馬鹿力を出したおかげだろうか…壁から脱出した女の人は、そのまま空中を舞うように…一人の警備員の顔面に蹴りを入れる。
「がっ?!!」
「「「「田中ーーー!?」」」」
「い、痛かったネ…」
「この!」
女の人は少ししゃがみ込みながらお尻を擦っていると、警備員の一人が女の人を取り押さえ様と覆い被さるが…女の人はそこから足を後ろに出し、溝内に蹴りを入れると…警備員はあまりの痛さに倒れ込む。
「己れ!!」
すると、別の警備員の拳を振りかざすが…女の人に止められ…すると、警備員は腕を捕まれると…勢い良くクルッと一回転し、女の人は仰向けになった警備員の溝内を思いっきり踏みつけると…警備員は痛みのせいかその場から動けずにいた…。
「この!!」
「はい!!ストップーー!!」
「心様?!何故、止めるのです?!」
モチ子は女の人に更に攻撃を加えようとしている警備員を止めに入る。
「あのね!この人!森で生き倒れてた女の人!私助けてあげるために連れて来たんだよ!」
「「「「「はい?!」」」」」
ーーーーーーそれから、モチ子は状況を一つひとつ説明し、皆に納得(抜け出した事は)かなりメイドさん達から叱られたけど…)それから女の人は一様、警備棟にて嘘発見器(極秘)にかけられたが…本当に修行中の格闘家だと証明され…モチ子の友人として、今は遅めの昼食を取っていた。
「美味しいネ!私の祖国にはこんな美味しい物はなかったネ!」
「そう言えば自己紹介がまだだったよね!私は…まぁ、あだ名でモチ子だよ!」
「私は!周 夢華!漢字で書くと面倒ネ!カタカナでモンファで良いネ!中国人ネ!」
「モンファ!かわいい名前!」
「モチ子ってあだ名もかわいいネ!私好きネ!」
「ありがとう!…それで、モンファ…一つ提案が有るんだけれど?」
「何ネ?モチ子の為だったら大体の事は平気ネ!」
「提案って言うのはね!…って……」
ーーーーーーその夜、自宅に帰って来たハルさんとアリナ、巧とモチ子とモンファは夕食を一緒に取っていた。
「いやいや、モンファさんはかなりお強いとか」
「そうでもないネ!私はまだまだ修行が足りないネ!」
「あらあら、向上心があって素晴らしいわね」
「全くだ!モチ子もモンファさんの爪の垢を煎じて飲ませてもらえ!」
「それって美味しいの?巧兄ちゃんは変な趣味してるね!」
「誰が!そんな趣味してるか!」
「それにしても、日本の料理は美味しいネ!私、感動ネ!」
「…それで!春さん!私お願いしたいことが有るんだけれど!」
「お、なんだい?モチ子は冬に誕生日だがら何でも願いは叶えるよ」
「実は…このモンファを私の武術の先生として住み込みで雇ってほしいの!」
「モンファさんを?」
「うん!出来れば、モンファさんが暮らせる様に道場が欲しいんだけど…無理なら屋敷の何処かの部屋を…」
「いいよ」
「えっ?」
「道場の建設とモンファさんが暮らしやすいように平屋の日本家屋を建てよう、費用もかなり安いし、私は大丈夫だよ」
「本当に?!春さん良いの?!」
「あぁ、問題ないよ」
「ありがとう!春さん!」
「ありがとうネ!モチ子のお父さん!」
「私の事は春さんで良いよ、モンファさんも今日からここの住人兼家庭教師だからね。家族だと思って構わないから」
「本当に!私、日本に来てからこんなに優しくしてもらったのは初めてネ!これからよろしくネ!」
「こちらこそ、あっ後モチ子と巧以外にも兄弟が居てね。今は別々に暮らして居るが冬には帰って来る筈だから紹介はその時にでもね」
「はいネ!」
こうして、モチ子の提案した案は見事に春さんに通り、モンファは家庭教師として住み込みで雇う事になったのだ…。
そして、モンファの平屋が出来る間までは、モチ子の部屋の隣で生活してもらう事になった。
ーーーーーー夕食を終え、部屋に戻ったモチ子ははぁーっとため息をつくとベッドにダイブしてゴロゴロとし始めた…。
「はぁーっ…今日は疲れた!」
<まぁ?あれだけ動いたりしてればね?>
「でも、モンファから武術習えるのは嬉しいな!春さんじゃなかったら多分、武術の家庭教師なんて許してくれないよね!」
<モチ子ちゃんのお父さんは寛大でよかったね>
「うん!……」
<…もしかして、寝るのが怖いの?>
「…うん、毎日あの光景を見て…あまり気分が良いもんじゃないからね…」
<……モチ子ちゃん?…>
「んっ?なに?」
<もしかしてだけど…>
「コンコン、」
紅が何かを言おうとしたその時、ノックの音が聞こえ紅は部屋の隅へと隠れる。
「どうぞ!」
「失礼します。心様、浴室にて洗身の時間となります」
「うん!ありがとう!」
モチ子は…紅の言おうとしていた言葉を気にはしたが…メイドさんに不審に思われると悪い為、部屋を後にし浴室に入りに行く。
浴室から部屋に帰ると、紅はモチ子が作った小さな家に既に入っている様子だった…
「紅、さっき私に何って言おうとしたの?」
<何でもないよ?モチ子ちゃんは気にしないで>
モチ子の言葉に紅はそう言うと、…小さな家の中の電気が消されてしまった…
「…変なの、…さて…張り切って寝よう!」
モチ子はそう言うと、電気を消しベッドに潜り込むとゆっくりと目を瞑り…そのまま、深い眠りへと入っていった…。