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…そんな話をしていると、部屋を誰かがノックする。
「失礼いたします、お料理をお持ちしました」
失礼いたします、失礼いたします、っと次々と店員さん達が料理をテーブルの上に置いていく。
…まぁ、料理は高級店だけあってかなり良い食材を使っているって言うのは一目で分かった。
「「「凄っ!!」」」
直、巧、光が思わず声をあげ、料理をキラキラとした瞳で見つめている。
(兄ちゃん達って案外図太い精神の持ち主だよね…)
「さぁ、冷めないうちに食べよう」
「「「「「いただきまーす」」」」」
モチ子達は中華料理を満足するのであった…
ーーーー1時間後ーー。
「ふー、満足したー」
「僕もお腹一杯」
「そうだな」
直、光、巧はそれぞれ満足したように、言葉を言って“蘭”のオーナーに挨拶をしてモチ子達は店を後にした。
その時、モチ子はフッと空を見上げると…何やら赤色の球体がゆっくりと下降していき…裏路地の方に消えて行った。
(あれ?…今の……!私!知ってる気がする!)モチ子は居ても立ってもいられず、隣にいたアリナにモチ子は…
「…ねぇ!お母さん!」
「どうしたの?」
「ちょっと迷子になってくる!」
「えっ?…って?!モチ子!」
モチ子はアリナに言うと、全速力で赤色の球体が落ちた所へと向かう。
「え?!」
「おーー!?」
「あのっ馬鹿!」
「モチ子?!どこに行くんだい?!」
「「「「「心様ーー!!!?」」」」」
モチ子は…そんな家族やメイドさん、執事さんの言葉などつゆ知らずか、…風のように大道りから姿を消していた。
(確か…こっちに落ちて行ったはず……いた!)
モチ子は裏路地を進むと、少し開けた公園のような場所だ…生い茂った木に赤色の球体が止まっているのを発見した。
近くに寄ってみると…それは小さな羽根を生やした小さな人の様だった…しかも、大分弱っているのか…凄く顔色が悪い。
「そこの赤色の球体さん!少し待ってて!」
モチ子の言葉の意味が分かったのか…その赤色の球体が驚きの表情をする。
「んっ!よっと!」
モチ子は猿が木を登るように、…物凄いスピードで木をよじ登っていく。
そして、赤色の球体がいる木の枝まで来ると…赤色の球体を服のポケットに入れる。
「ちょっと、待ってて!今すぐ降り」
ボキッ!
すると、枝はモチ子の体重を支えきれなかったのか…まっ逆さまに体が地面に行くのをモチ子はスローモーションの様に見ていた…
…そして、モチ子は気づいてしまった…
…先程まで下に居なかった…10歳位の黒髪の少年と二人の男性が居ることを…
「ぎゃぁああ!?避けてーー!!」
「「「え?」」」
ドサッ!!
…モチ子は自分の体があまり痛くない事を感じ…そっと…目を開けると。
「い、…痛い…」
モチ子は盛大に少年をお尻で踏みつけ、少年はあまりの痛さに、言葉が掠れ声しか出せない様で…そのまま気絶してしまった…
(…ヤバい、多分この子は貴族だ!…どうする?…取り敢えず、春さんに連絡取らなくちゃいけないよね?)
モチ子が少し考え事をしていると、二人の男性が我に帰り、モチ子のお尻に敷かれている少年を見て…
「あわわぁ!!時風様ー!」
「時風様!気をしっかり!」
男性二人はモチ子の下から黒髪の少年を引きずり、地面に仰向けに寝せて…懐から扇子を取りだし、黒髪少年に風を送る。
(…貴族の人達って、皆過保護なのか?)
「貴女!時風様になんて事を!」
男性二人のうち一人の綺麗なブルーなジャケットを羽織った優しそうな男性がモチ子に対して険しい表情を向ける。
「って言われても…まさか、落ちた所に人が居るとは思わなかったし…うん!ごめんなさい!」
「ごめんで済むなら警察はいらないって、昔から言うだろう!」
モチ子の返答にもう一人の男性…上下黒のスーツを着た長身の男性が睨む。
「えーっそれじゃあ、どうすれば?」
「取り敢えず…連絡先聞いても?」
「…それが、私…今日こっちに引っ越しして来たばかりで…携帯ももってないです」
「…それは困ったな」
「…それに、迷子だし!」
「「迷子!?」」
モチ子の言葉に男性二人は驚きの表情を上げ、そのあとは…取り敢えず少年が起きてから、モチ子の親を探しに行くことになった…
「そう言えば、三人はどうしてこんな所に?」
「…私達は時風様のショッピングの護衛をしていまして…少々疲れたのでここで休むはずだっのですが…」
「まぁ、俺たちの頭上から落ちて来るとは思わなかった…」
「私は、木に居た猫を見つけて助けようと思って登ったんだけど…枝が折れてまっ逆さまです」
「…ある意味、時風様が貴女の命の恩人ですかね」
「時風様って…もしかして貴族の人です?」
「…そうだな、…貴族は嫌いか?」
「…よくわからないです。…私の知り合いにも貴族は居ますし、あまり偏見はないと思いますよ?…ただ、その知り合いがいい人でも、他の貴族がいい人だとは限らない…」
「…君のこと年相応だと思って居たけど…考えを聞いて見ると…何だか、大人びてますね」
「…私の家がちょっと、複雑でして…」
「…もしかして、貴女…貴族では?」
「私が貴族に見えます?」
「…いや…しかし、貴族は曲がりにも色々居るからな」
「まぁ!変わった人ってことで!」
「…言い換えれば変わった子ですけど…」
そんな会話をしていると、ムクリッと少年が起き上がる。
「あれ?…私はいったい…」
「時風様!!目が覚めたのですね!」
「太助……弥助…」
(へー。優しそうな人が太助さんにちょっと怖そうな人が弥助さんか…って…あれ?)
「なんか、…二人とも名前が似てません?」
「あぁ、俺と太助は兄弟なんだ」
「きょ、兄弟?!似てない!」
「私と弥助は異母兄弟です、私が6つで弥助が5つの時に…一緒に暮らすことになったんです」
「太助、弥助…私はいったい…気絶してしまったみたいだが…」
「時風様、こちらの少女が木から落下しまして…下敷きに…」
「少女?……?!うそ…だろう…」
少年が何故かモチ子を見た瞬間、驚いた表情を見せて固まってしまう。
「時風様?…」
「り、っリリアン…」
少年がモチ子を見ながら言うとその場でボロボロっと泣き始めたのだ。
「と、時風様?!何処かまだ痛い所でも?!」
「ち、がう…違うのだ……貴女…名は?」
「えっと…持越 心です」
「…心か…いい名だ…、後日私が探して会いにいこう。今日はもう帰りなさい」
「時風様?!」
「えっ…良いの?」
「あぁ」
「…それじゃあ、俺が繁華街の大道りまで送ろう」
「はい!」
モチ子は弥助さんに連れられ、その場を後にするのだった。
「…ここまで来れば、あとは交番までは真っ直ぐだ」
「弥助さん、本当にお世話になりました!」
「気にするな。時風様が後日、伺うらしいが…何分忙しいご身分だ…もしかしたら、数週間掛かるかもしれない…それと…今度会ったときにあまり、びっくりするな」
「わかりました!それじゃあ!」
モチ子はそう言うと意気揚々と与助の元を後にした。
「…本当に変わった子だな、…この機会に時風様と友人になってくれると助かるんだが…戻るか」
与助さんはそう言うと、来た道を早足で戻っていく…だが、その途中何故だか慌てた様子の太助が走って来たのだ。
「どうした?」
「よ、与助!あの子は!」
「大道りに送ったが?」
「急いであの子を!…あの子は…“申し子”だ!」
「!まさか!…それじゃあ…」
「うん、…多分、時風様と同じ世界、同じ時代を生きた者だよ…取り敢えず!早く探さないと!私は先に時風様の所に!」
「おう!俺はさっきの子を連れ戻してくる!」
与助は急いで繁華街に戻り、モチ子が行った交番に向かったが…既に親が引き取りに来た後だった…
モチ子は二人と別れた後、交番にたどり着くと事情を話した…すると、ちょうど私を探していた執事さんが通りかかり…「心様!よくご無事で!」と泣きつかれてしまった…。
…その後、交番を後にしたモチ子は…家族皆からこっぴどく叱られる事になったのだった…。