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ーーーーーモチ子が部屋に案内すると、三人は恐る恐るではあるが、部屋の中に入ってくれた。
「好きな所に座ってね!…はぁー!疲れたー!」
モチ子は全員が部屋に入ると仰向けでベッドに倒れこむと…ゴロゴロと左右に動く。
「…何を?」
「ん?疲れたから、現実逃避?」
「……それよりも、私は話したい事がある」
「ん?そう言えば!私も聞きたい事があったんだよね!」
「?聞きたいこととは?」
「あの時、私のこと"リリアン"って言ったよね?」
「!なっ…」
「…私、一部だけど…前世の事を思い出したの…ねぇ?時風様は…私と"レクターバル"世界で会ってるの?」
「私は…、会っている…君の言った"レクターバル"世界で」
「…やっぱり、…時風様?貴方の名前を教えてくれない?」
「あぁ、私の名は……"ベル・ヴァルフェスタ"だ」
ーーーーーモチ子はその名前を聞いた瞬間…驚きのあまり叫んでしまった…。
「え、はぁ?!"お父様"!!?」
「「なんですって?!」」
ーーーーーーーーーー
ーーーーー
ーー
「時風様!何故そのような大事な事を私達に教えて下さらなかったのですか?!」
「そうだ、俺達は時風様のお付きだ。…大事な事を教えても良かったんじゃないのか」
「いや、しかし…私も話すのを忘れて…」
「「忘れないで下さい!!」」
…先程のモチ子の言葉により、何故か時風は太助と与助から…既に10分ほどお説教をうけていた…
「…なんか!お母さんと子供みたい!」
「「「違う!絶対に!!」」」
「っと、話が随分とそれてしまったな…それと、まだ伝えていない情報を教えよう。私は君の元養父であり"レクターバル"世界"ロロスタル魔国"第45代"魔王"だ」
「「「……」」」
「…何故、固まる?」
「…時風様?貴方は人を怒らせる天才なのでしょうか?いや、皇太子にこの様な事を申し上げるのは無礼だと存じますが、しかし私もあまりの時風様の体たらくさに流石に怒りが治まる兆しがありません。時風様はどう思っているか知りませんでしょうけれども私たちお付きの者は貴方様の無自覚の行動に対して怒りを覚えてなりません。そもそも時風様は」
…その、怒りのマシンガントーク&鬼の形相が出来上がって行き、時風は黙りながら床に正座した……そして、下をを向いて青い顔をしながら黙って太助の説教を聞いていた…
「「…恐!!」」
「た、太助があんなにぶちギレてるのは久しぶりだな…」
「太助さん!滅茶苦茶こわい!お母さんと同じくらい恐い気がする!」
「アリナ様はあれほど恐いのか?」
「普段は女神の様な微笑みを向けるお母さんだけど…怒ると、背後に般若が現れるよ…」
「…それは……恐いな」
「恐いって感情じゃない!あれはもう…龍と蛙のいきだよ!」
「……アリナ様には一生、勝てない気がする…」
「誰が龍と蛙かしら」
「「えっ?」」
…モチ子と与助が振り返ると…そこには、扉を開けてニッコリと優しく微笑んでいるが……その背後から黒いオーラが見え隠れしていた…
…そして、アリナについて来たメイドさん達は…泣きながら後ろの方で((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブルと震えており、アリナとは一定の距離を空けていた。
「いや、あの…お母、さん?」
「私の教育が悪かったのかしら?それともモチ子さんの本音しか言えない性格が問題なのかしら?…モチ子さん、少しお母さんと人生について語り合いましょうね」
そう、アリナは言うと…モチ子の首根っこを掴むと…その細い体から何処にそんな力があるのかと思わせる程の力で…暴れるモチ子をズルズルと引きずりながら部屋を出る。
「あ、アリナ様…」
「メイドの皆さん、モチ子と私が戻るまで皇太子様とお付きの方々をよろしくお願いしますね。……付いて来てはなりませんよ?絶対に、ね?」
「「「か、かしこまりました…」」」
「ちょ?!誰も助けてくれないの?!よ、与助さん!助けてーー!」
「…すみません、心様……俺はまだ、死にたくない…」
「「「…左に同じくですわ…」」」
「こ、このー!裏切り者ーーー!!」
…モチ子は太助とメイド達に叫ぶがそれは届かず…モチ子は黒いオーラを放ったままのアリナと共に…屋敷の何処かに消えて行った…
「「「「…アーメン」」」」
太助とメイドさん達は、二人が消えて行った方向に向けて、…キリスト教信者ではないが…祈りの言葉を小さく送る事しか出来なかった…
ーーーーーーーーーー
ーーーーー
ーー30分後…。
「それで、心様は…黒いオーラを放ったアリナ様に連れて行かれた訳ですね」
「そうなるな…」
「私も気がついて少し横目で見ていたが…あれは、眼を背けたくなるほどだった…」
「…時風様、私のお説教ちゃんと聞いていましたか?」
「き、聞いていた。だから、そんな鬼の形相で睨むな…」
…太助の時風への説教は10分前に終了し…先程まで部屋にいた筈のモチ子の姿がなく、与助が不思議がって部屋の隅で怯えていた、メイドさんと与助に話を聞いたのだ…
「…しかし、アリナ様のお説教は…長そうですね」
「お前が言うか?」
「私とアリナ様は怒ると系統が良くにている様子ですし…何となく分かるんですよね」
「「……」」
……そんな会話をしていると…部屋の扉が静かに開けられ…そこには、スッキリとした顔で微笑んでいるアリナと…
げっそりと…遠くを見つめて疲れはてて入ってきたモチ子の姿だった…
「時風様、モチ子をお借りして申し訳ありませんでした。後は、煮るやり焼くなり好きに使って下さい、…お付きの方々もごゆっくりとなさって下さい。メイドの皆さん、退室しますわよ?」
「「「…かしこまりました」」」
…メイドさん達はビクビクしながらも、アリナの言葉に従い、アリナと共に部屋を退室して行った…
「…心、様?」
「……」
「……駄目だ、完全に意識が遠退いてる」
「……ごめん、…10分でもとに戻るから…ベッドで休ませて…」
…モチ子はそう言うと…ベッドに仰向けで倒れ込み…1mmも動かず…死んだように動かなかった…
「…どうする?」
「とりあえず、10分で復活すると言ってますし…お茶でも飲みながら待ちましょう」
「そうだな」
三人はモチ子が回復するまで、部屋の備え付きのポットを使い、緑茶を飲みながら待つことにした…
ーーーーー8分後…
「モチ子!!ふっかぁぁあつ!!」
「「「復活するの、速!!」」」
…ーーモチ子はアリナの恐怖の語り合い?から復活を遂げ、ベッドの上でででーんっと立っていた。
「もう、大丈夫なのか?」
「うん!心配かけてごめん!お母さんのお説教は久しぶりで慣れない!」
「「慣れる方が可笑しいと思いう(ます)」」
「さて!何処まで話したっけ!」
「私が父親…まぁ、養父って言う事と"レクターバル"世界の"ロロスタル"魔国第45代魔王だった…所までは話したな」
「その"ロロスタル"魔国って…他に魔国って物が存在するの?」
「あぁ、"レクターバル"世界には3つの魔国があった…
東の果てにある魔国"トルラス"
南の果てにある魔国"ナーリスラ"
北の果てにある魔国"ロロスタル"
そして、西と中央には人間達が各々国を造り、生活の拠点としていた」
「魔国同士は仲が良かったの?」
「魔国同士はとても仲が良く、貿易をするまでの間柄だった…しかし、人間達は魔国を良いようには思わなかった…その為、"魔の付く人間の一族"を火炙りや虐殺を繰り返していた…」
「…私も、"魔の付く人間の一族"だった…」
「そうだ、…私は他の魔国と協力し、保護を開始したが…"ロロスタル"ではリリアンしか保護出来なかった…私がもっと早く、行動を早めていたら…」
…時風は、あの時の記憶を思い出してしまった為か…少し下を向いて泣いてしまっていた…。




