自宅警備員の日常は異世界で
異世界、転移もの大好物です。
お暇なときに見ていただければ幸いです。
見上げれば、澄み渡る青空。
耳を澄ませば、小鳥達の可愛い歌声。
周りを見渡せば、何処までも続く・・・
樹海
どうもこんにちは、先日仕事をクビになり自宅警備員になった甘梅カリン<アマウメカリン>です。
親は海外事業のため海を渡り、残された家を守るべく、独り堕落した毎日をおくっていたのですが・・・
神様!これが天罰ですか!!
この未開の地に家ごと迷子になり、早2ヶ月。不思議なことにライフラインは途切れることもなく、食料や生活雑貨、その他もろもろ何故か繋がるネット通販で即日納品!しかもタダ!
初めの3日は怯えて部屋に引きこもっていたが、よくよく考えれば、働かなくて自由に好きな物を買えて過ごせて、あれ?最高じゃね?ってことで、今ではこの生活を満喫しています。
只一つ言えるのは・・・
人とのコミュニケーションがとりたい!!
そう!こんな樹海じゃ人っ子一人いやしないのです。
<人>以外ならいるけどね
「あ、きたきた。おはよーユニさん、ハピーさん」
目の前の茂みと上空から現れたのは、ユニコーンのユニさんとハーピーのハピーさん。
初めてであった時はユニコーンの神秘さと思ったよりすごい馬面に微妙な空気を醸し出したり、明らかにその猛禽類のごとく逞しいおみ足で獲物しとめますよね?なハーピーに悲鳴をあげながら逃げたり・・・
今ではいい思い出です。
「そーれ、ユニさんには最高級お野菜のサラダ人参マシマシ。ハピーさんには国産黒毛和牛てんこ盛り。たんとお食べ。」
おぉ、いい食べっぷり
そんな2匹を眺めながらポツリと・・・
「・・・人に会いたい」
これがいけなかった
あっという間に御飯を食べ終わった2匹は、私の顔を見つめ
『ぶるるるるっ!』 『ピューイッ!』
え、何そのアイコンタクト。ハピーさん?何処行くの。
ハピーさんが去った空を眺めた。
しばらく、ユニさんのタテガミで遊んでいるとハピーさんが帰ってきた。
足に立派なお土産をぶらさげて。
『ピュピューイ♪』
どさっ
ピュピューイじゃねぇ!ハピーさん?!何しとめてきたの!え、あげる?いらねぇぇぇっ!!あきらかに人じゃん!会いたいって言ったけど、生きてる人ね!生命活動停止の人じゃないからねって・・・この人まだ生きてる?
「あ、あのー大丈夫ですか?言葉分かりますか?どうしよう、生きてはいるけど意識が・・・はっ!」
こ、このひと!でかい!おっぱいが!!
褐色の肌に白銀の髪。ビキニアーマーが良く似合う素晴らしいプロモーション・・・
く、くそったれ!泣いてなんかいないぞ!やめてユニさん、そんな目で見ないでっ
「とりあえず傷の手当しないと。ハピーさんこの人裏の縁側まで運んでくれる?」
今まで様子を見ていたハピーさんは大きな翼を広げまかせろと言う様に胸をはった。
お、重い!女の人だから楽勝だと思ってたら意外とこの人でかい・・・あ、身長がね。これ、敷布団足りるかなっと、たりねぇや。まぁいいか。
さて、手当てっていっても簡単なことしかできないし・・・あ、赤チンでもいいかな・・こう、ちょいちょいっと塗って包帯と絆創膏つけて、着けてる装備とか脱がしたいけど外し方わかんないからこのままでいいかな。あとはこのまま寝かせとくか。
・
・
・
・
・
「・・・っ・・な・・んだここは・・・私はいったい・・・」
ギルドからの依頼で東の森で暴れている魔獣を討伐にきたが、トドメを刺すときに油断をしてしまった。息を引き取る寸前の魔獣に突き飛ばされ気を失ってしまった。
ここは近くの村の民家か?それにしては見たこともない調度品と草で均一に編まれた床、それにこの上質な寝具・・・上流階級の者か?
布団から上半身を起こした時、誰かが入ってきた。
「あ、気づきました?具合はどうですか?」
「・・・誰だ」
「えーと、甘梅カリンといいます。カリンでいいですよ。あなたは私の友達がしとめ・・・いや、運んできて・・・」
「この手当てはお前が?」
「はい、素人がやったので簡単にしかできなかったんですが。あ、ほら、ここ包帯が緩んじゃってる・・・」
んん?あれ、傷がない?怪我してないところにまで赤チン付けちゃったのかな・・・いや、でもまてよ。ここもここも・・傷がなくなってる?!
「ちょ、ちょっとすみません!包帯とってもらってもいいですか?」
「あぁ、かまわないが・・・」
やっぱり、体中にあった擦り傷や打撲跡が全部消えてる・・・
「おい、どうした?」
「傷が消えてて・・・」
「傷?・・・・っ?!お前いったいどんな高価な薬をつかったんだ!古傷も消えてるじゃないかっ」
あ・・・・・・赤チンすげぇぇぇぇぇぇっっ!!!
正式名マーキュロクロム液すげぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!
「いったい何者なんだ?こんな高価な薬を私なんかに使うなんて。」
いや、ドラックストアで税込み432円でしたが。
「そ、それより!あなたのお名前はなんていうんですか?」
ここはややこしくなる前に話をかえよう。
「あぁ、私はアーシェ。フリーの傭兵だ。」
「傭兵?ここには何をしに?」
アーシェさんは包帯を外しながら答えた。
「この森で暴れてるという魔獣を討伐しにな。Cランクの依頼だったから簡単だと思っていたんだが、油断をしてしまってな、このざまだ。」
魔獣?え、もしやそれってハピーさんのことじゃ・・・
私の背中に冷やりとした汗が流れた。
「・・・ちなみにその魔獣というのはどんな生き物で・・・」
「名は、グランドベアーという。凶暴な性格で、人を襲う。大きさはそうだな、4リントルぐらいか」
セェェェフッ!!ハピーさんじゃなかった!!!ごめんよハピーさん疑って!
「どうした?急にだまって」
「いえ!なんでもないですっ!そんなことよりお風呂に入りませんか?」
「風呂があるのか?!やはりどこかの貴族・・・」
「お風呂に一名様ごあ~んなぁ~い!」
よけいなこと聞かれる前にさっさと移動してもらおう。
アーシェさんの背中を押しながら早足でお風呂場へと向かった。
「アーシェさんお風呂の使い方分かりますか?うちのお風呂、たぶん他の家とは違う感じなんですが。」
「すまないが、教えて貰えないか?」
その後、シャワーや、シャンプー等のあらかたの事を教えて、私は今リビングに置かれたパソコンの前にいる。何故かって?アーシェさんの着替えを用意するためだ。
「えーと、まずは下着でしょ~って下はともかく上のサイズわかんないや」
見た目的にはE・・・いや、Fか?うおぉぉぉぉっわからん!適当に選べる大きさじゃないしどうしよう・・・うーむ、仕方ない。パッド付のタンクトップにしとこう。あと、服もサイズ分かんないからジャージでいっか。背が高いから男性用で。
「よし!これで完了!クリィーック!!」
カチッ
{ご利用ありがとうございます。5秒後に納品いたします。}
ゴトッゴトッ
おー、はやいはやい。そして箱から下着や服を出して、お風呂場に向かった。
「アーシェさん、着替えここに置いときますね。」
「ん、すまない。」
しばらくしてアーシェさんがお風呂から上がってリビングにやってきた。
「どうでした?さっぱりしましたか?」
「あぁ、こんな贅沢は初めてだ・・・」
とろん、とした顔になっている。
あ、髪の毛濡れたままだ。はーい、座ってくださーい。乾かしますよー。大きい音なりますけどきにしないでくださいねー。はいはい、魔獣の鳴き声じゃないですよードウドウ。
ドライヤーを片付けているとアーシェさんのお腹が鳴った。頬を赤らめるとか可愛すぎか!
「これ、お口に合うかわかりませんが、よかったら食べてください。」
時計を見るともうお昼過ぎだったので、服を届けに行った後、再びパソコンと向き合い注文しといたピザだ。手料理?こんな短時間でできませんよはい。ぶっちゃけ私が食べたいからねっ
最初は怪訝そうにピザを見ていたが、一口食べるとあら不思議。今ではハムスターのように口いっぱいにピザを頬張っている。
「んぐっんぐっうまいなこの料理!上にのっているトロトロの伸びるやつと赤いソース、そして野菜が全てうまい!!」
そうかそうか、お気に召していただいてよかった。あぁ、口の周りトマトソースだらけ・・・
お腹も膨れて満足したのか、アーシェさんはとても幸せそうだった。
「カリン、お前は私の命の恩人だ。しかもこんなにも良くしてくれた。是非お礼をさせてくれ。今は手持ちが少ないが、街に帰ればいくらでも・・・」
「いいですよ、困ったときはお互い様じゃないですか。」
「いや!それでは私の気がすまない!」
おおぅ、そんな力まなくても。それに実際にはハピーさんが見つけてつれてきたんだし・・・
「アーシェさんを見つけて運んできたのは私の友達ですから本当にいいんですよ」
「そういえばさっきそう言っていたな・・そうだ、その友人にも礼をせねばな、すまないが会わせてもらえないか?」
やべ、墓穴掘った
アーシェさん魔獣を討伐に来たっていってたよね?ハピーさんって魔獣だよね?あれこれ詰んだ?
「そそそんな!友人も気にしてないですよっ」
「たのむ、ここで何もしないで帰ると私はこの先ずっと後悔してしまう・・・カリンお願いだ・・」
そんな顔で私を見るなぁーっ!ちょちょいちょいちょい!やめてぇ!あなたとハピーさんを会わせたらバッドエンドなんだよ!唯一の友達がっ
わたしの心情を知ってか知らずか、ついには私の目の前まできて跪いた。
「カリン・・・」
「あー!もう!!わかりましたよっ!でもお願いがあります。さっきのお礼として私の言うこと聞いてくれますか?」
「っ!あぁもちろんだ!それで願いとは?」
「・・・友達を・・友達を傷つけないで下さい。どんな姿であっても、絶対に。」
「可笑しなことを言うな。命の恩人に手を上げるなど。もちろんだ」
「約束を守っていただけるなら友達に会わせます。こちらです、ついて来て下さい。」
アーシェさんを庭に連れ出して一呼吸し、ハピーさんを呼んだ。
「ハピーさーん!おいでーっ!」
シバラクすると、上空から大きな羽音が聞こえ、庭にいる私の隣に降り立った。
『ピューイッ』
よんだー?首をかしげ見てくる。激しくモフモフしたいです!
「離れろカリンっ!そいつはハーピーだ!殺されるぞっ」
「えぇ、そうです。ハーピーのハピーさん。私の大切な友人です。そしてあなたを運んできたのもこの子です」
「そいつが?!いや、友人と今・・・」
そりゃ驚くわな。
「この世界で一人ぼっちだった私に優しくしてくれた誰よりも心の優しい子です。アーシェさんを襲ったりしませんよ」
『ピューイ?』
ハピーさんはじっと、アーシェさんの顔を見てゆっくりと近づいていった。
『ピュイッ!ピュピュイッ!!』
「もう大丈夫か?って言ってますよ」
「あ、あぁ、もう平気だ。傷一つないよ」
『ピュイーっ♪』
嬉しかったのかハピーさんはその場でピョンピョン跳ね回った。
・
・
・
・
「すまなかった、お前の友人に酷い事をいってしまって・・・」
「いいですよもう。今はハピーさんを倒そうとかおもってないでしょ?」
「もちろんだ!それにしても驚いたぞ。ハーピーやユニコーンとも友人だなんてな。」
あの後ユニさんも出てきて今では二匹で遊んでいる。
「さて、そろそろ私は待ちに帰るとするか」
「え、もう行っちゃうんですか?まだゆっくりしていったらいいのに・・・そうだ!今日はうちに泊まって明日の朝帰るとか!」
「すまないな、ギルドにグランドベアーの討伐報告をしなければならないんだ。」
そっかー・・・行っちゃうんだ・・仕方ないよね、お仕事だもん。
それからアーシェさんはあのセクシーなビキニアーマーを装着し、ハピーさんと森への入り口まで来た。
「世話になったな。」
「いいえ、ハピーさん途中までの道案内お願いね」
『ピュイッ』
寂しいなぁ、せっかく人間と出会えたのに・・・
下を向いてションボリしている私の頭に手を乗せて綺麗な笑みを浮かべてアーシェさんは言った。
「そう悲しそうな顔をするな。そうだ、カリン、私と友人になってくれないか?そして今度は傭兵としてではなく、お前とこいつらの友人として遊びに来てもいいか?」
ばっと顔を上げ
「もちろんです!!」
こうして、初めての人間の友達アーシェさんは帰っていった。
「楽しみだねユニさん。次ぎに来た時は皆で遊ぼうね」
『ぶるるるっ』
ユニさんの頭を撫でながら森のほうを見ながらふと思った。
「あれ?そういえばアーシェさん街から来たっていってたよね?え、この近く街あんの?ていうかこの世界のこと全然聞いてない!まってぇぇぇぇ!!!戻ってきてぇぇぇぇっ!!!!!」
こうして、ここがどこなのかも、何故この世界に来てしまったのかもわからないまま私の自宅警備員生活は続いていく。
最後まで見ていただき、ありがとうございました。