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プロローグ−黄金の雪原
あの人は笑わない。
何故かって…
そういやあ何故だろう。
笑わないから笑わない。
あの人の笑顔を、
僕は見たことがあっただろうか。
出会ってから、
全く見たことがない気がする。
それくらい、
思い出せないくらいに、
あの人は笑わないんだ。
あぁ、
一度だけ、
一度だけあった。
いつも仏頂面のあの人が、
いつも無口のあの人が、
僕の顔を覗きこみながら笑っていた事が。
あれはそう。
いつだったかな。
真っ白な雪が、
あの人の金色の頭の上に、
降り積もっていた。
僕はそれを、
綺麗な雪原だなんて思いながら、
目を閉じたんだ。