仲間が無事だとほんとうれしぃ
「では、これから17時までグラディエーター体験コースを始めたいと思います。まずお二人の安全を確保するために、健康診断をしていただいた上、こちらで用意するバトルウェアに着替えていただきます。ではこちらへどうぞ。」
「「はい。」」
個室で裸になってカプセルに入ると2分で検査が終わり、ついでに昨日つけた擦り傷まで跡形も無く治療されてしまいました。
私がバトルウェアに着替えを終えて個室から出ると同時に隣の個室から雪が出てきました。
「お二人のバトルウェアについて説明させていただきます。ウェアに付属するプロテクター。これは発泡ポリエチレンと言うものでできておりまして、素手で子どもが殴るくらいのエネルギーは吸収しますが、このように、刃物に対する抵抗力はありませんのでお気をつけください。今日は体験ですから・・・」
・・・その”体験ですから”のあとの、てんてんてんがなにか切実に知りたいと思った私です。
・・・でも怖くて聞けませんでした。村田さんってニコニコ微笑みながら、すごいプレッシャーをかけてくるんです。
「はいっ!分かりました。よろしくお願いします。」・・ぇっ雪ちゃん見掛け倒し防具なんだよ?
「まず、アンドロイドの”あんどーさん”を見本として準備運動をいたします。ちなみにネーミングや音楽、それと体操のセンスについてはくれぐれも話題にしないようにしてください。
ボスの目が・・ グウァッ」・・どこからともなく飛んでくるナイフを避ける村田さん。
思いっきりへんてこな体操をへんてこりんなリズムに合わせて30分。スーパーハードです。
これを毎日1年間続けると、世界が変わるらしいです。
「では、まず安全のための受身を・・・・・・・」
・・・・
・・・
・・
・
「このあと、とっさのときの行動力の検査をしてからお昼ご飯になります。」
「とっさのとこの行動、ですか?」
「そうです、たとえばあんなふうに・・」
”あんどーさん”が2本の槍を構えています。
「え?」「ええっ!!」
”あんどーさん”から伸びる二つの黒い光!ダン!!!!
私の胸に突き刺さる槍・・
雪ちゃんは・・倒れてるけど、槍は後ろの村田さんがつかんでいます。
え?ぇえ??
「死亡率50%ですか、優秀です。」
雪ちゃんの顔が悲しみにいがむ・・・って私なんで余裕ぶちかましで見渡してるんだろう?
「プロテクターは見掛け倒しですが、競泳用の全身水着に見えるインナーは表面の第一層がダイヤモンド並みの高度を誇るカーボン単分子繊維を編んだ布に、瞬間衝撃硬化ジェルを含ませて柔らかさと硬さを両立させた鎧、中層が衝撃エネルギーを熱として逃がすラバー層、そして内側が、汗をかいたり、お漏らしをしてしまっても大丈夫な特殊ポリマー層となっておりますので、対戦車ライフルの連射にさらされても、傷ひとつ負わないように設計されております。なお試合で身に着けるプロテクターもインナーも見掛け倒しを使用します。水着以上の強度はありません。」
「では先ほどの個室で、シャワーを浴びてください。バトルウェアは新しいものを用意いたします。」
・・・あとで聞いた話によると80%以上の人がもらしているらしいです。かわせた人も槍を突き刺した仲間が無事なのを確かめて、緩んじゃうらしいです。これは絶対不名誉なことではないと思います。絶対です。
殺気を吹き付けて避ける余裕を与えながら、危険がないように必殺の槍を操作したのはあいつです。
血の一滴も流れておりませんが、いかがだったでしょうか?
雪ちゃんやっぱりいい子ですのでどろどろの愛憎劇にはなりません。
次回、どんな目的で槍が投じられたのか、ぜひ読んでやってください。
泥臭い進行ですがそうである必然性があるのです。
本日18時に次話追加します。
次だけでもぜひ読んでやってくださいませ。