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その瞳に  作者: 伊咲 知里
番外編
4/5

さくっと短いです。

職場の小屋からミサを連れ出すと、ミサの儚い足ではこの野蛮な森を抜けられないことに気づき、抱き上げた。


「きゃっ! なに?!」


落ちると思ったのか、ぎゅっと衣服を掴む姿に、頼られる喜びを知る。


ああ、なんて可愛いんだ。


「この森は危ない。慣れないミサでは怪我をしてしまう」


そう言ってしまうとミサは疑う様子は一切見せず、「重くない?」と俺の体を気遣った。なんて優しい女の子なんだ。


「ミサは軽すぎる。このままでは、風で折れてしまう」


真剣に抗議したのにミサはクスクス笑ってから「大袈裟」と一言もらした。


「家ってシルさんのお家にむかってるの?」

「ああ。あの小屋は職場として作ったもので、俺の家は森を抜けて町にある」

「町があるんだ。へー」


言葉からは特に興味があるとは感じ取りにくいが、覗き込んで瞳を見てみると爛々と輝きを放っていたので、町に興味があることは一目瞭然だった。そんな反応が小さな子供のようで、本当に年齢を疑いたくなる。…いや、昨夜歴とした淑女だということは理解してはいるのだが。


「…町に寄ってみるか?」

「え?! いいの?!」

「ああ。どうせ夕食の食料を調達しなければならないし」


ミサの服や日常品も調達しなければならないな、と頭の中で考えているとミサが「そういえば」と声をかけてきた。


「シルさんクマの姿にならなくていいの?」

「ああ。すっかり忘れていた。森を出てしまう前に気づいてよかった。ミサ、ありがとう」


そう言って、一度ミサを地面に降ろし、ヒト型から獣へと姿を変えた。


「うわー。やっぱり熊さんだ」

「ミサは熊の方が好みなのか?」


もし熊の姿が好みなら、このまま情事は行えないだろう。ミサの好みに合わせることが出来ない自分の身体が憎い。


「うーん。熊さんはもふもふしてて好きだけど、シルさんはどっちの姿でも似合ってるよね。違和感がないと言うか」


なんて可愛いんだ!


「きゃっ!」


抱きかかえ、肉球でミサの頭を撫でると頬を体毛に摺り寄せてきた。あまりの可愛さに、口から涎が出た。


「シルさん! 涎! 涎出てる!」

「…ああ、すまない」


ミサが訝し気に見つめてきたので、今後このような失態をしないよう心に誓った。


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