第17話・疑念
5月13日、今日も一日の授業が終わり、皆それぞれ帰る準備や部活に行く準備をしていた。
僕も今日はバイトがないので、早々に帰りの準備をしていた。
その時ふと、日比谷の席の方を見た。彼はすごく不機嫌そうに頬を付いていた。
日比谷の事件から数日たった。
あれから彼らは大人しくなり、僕に嫌がらせをすることもなくなった。
でも、僕の心はあの日から一向に晴れていない。むしろモヤモヤとした気分が日が経つにつれどんどん大きくなっていた。
――本当にあんな方法で彼らを止めてよかったのだろうか? 他にも方法があったんじゃないのか?
何か、もっと平和的な方法が……。
日比谷達はあれから何もしてないけれど、逆にそれでやけにイライラしてるのは少し見ただけでわかる。
これでは何も解決してないんじゃないか?
そう僕はこの数日で思うようになった。
「ユウ〜どうした浮かない顔して」
敬一が僕の顔を覗き込んで言う。
「な、なんでもないよ」
「ホントか〜、お前表情隠すの下手だからすぐわかるぞー」
「だ、だからそうじゃなくて……」
「よし! 俺今日部活ないしポラリスでも行くか!
あ、せっかくだから秋奈も呼んでこいよ、この前の事件の功労者だしな」
「あ、うん……」
結局敬一に乗せられるがまま、僕は秋ちゃんを呼び、どうせ一緒の方向ということで冬路も連れて学校を後にした。
〈喫茶ポラリス〉
席に着いた僕らは、とりあえず全員コーヒーを頼み、適当に談笑していた。
「それにしても動画を録って黙らせるなんて、あんた結構やるんだな」
「そ、そうかな? あの時は必死だったし……」
「まぁとはいえ秋奈、アンタのおかげでユウは助かり、日比谷のヤツらも大人しくなって、めでたしめでたしだ!」
敬一と秋ちゃんは楽しんいるのを見ながら、僕はコーヒーを少し飲んだ。
……苦い、砂糖少なかったか。
「? 春崎どうした、来てからずっとしゃべってないぞ?」
僕の隣に座っている冬路が僕を見て心配そうに言った。
「うん、その……」
「何だよユウ〜言っちまいなよ。せっかく誘ってやったのにお前が暗いと意味ないぞ」
「でも……怒らない?」
「俺の心は太平洋より広い! 怒らねぇよ」
「じゃあ、言うね」
僕は少し間を置き、この一週間思い詰めていた事を口にした。
「日比谷達のこと、あれでよかったのかなぁって思ってた」
全員の顔、特に敬一は「はぁ?」と言ってるようになった。
「ユ、ユウ、これでよかったのかってどうゆうことだ」
「だからその……もっと別の方法はなかったのかって」
「ユウちゃん……?」
「最初は特に感じなかったけど、……もっと、平和的に解決することができたんじゃってだんだん考えるようになって,それで……」」
「甘ったれるな!」
敬一が口調を激しくして、テーブルをバンッと叩いた。
「アイツらが易い話し合いではいそうですかって黙るわけねえだろ!
少しでも弱みをつけて、動けなくした方がいいんだよ!」
「でもそれじゃあ本当の解決にはならないよ! ちゃんとゆっくり話し合えば……」
「ユウ! お前いくらなんでも甘すぎなんだよ!
これは小学生が遊びでやってることじゃねえんだぞ! あいつはもう少しでお前を犯すところだったんだぞ!」
「!」
小学生の……遊び? それって……。
「そう、敬一はあのことを遊びだって思ってたんだね?」
「あのこと? ……いや、そんなこと……」
「もういい! ……僕帰る」
僕は怒りまかせに玄関を開き、ポラリスを出た
……バカ、敬一のバカ……!
「何だ? 春崎がこんなに怒るなんて、……初めて見たかもしれん」
「…………」
「優ちゃん、ずいぶん様子が変だった。
……夏木君、あの事って?」
「……ワリィ、俺も帰るわ。少し頭冷やすよ、じゃあ」
そう言って敬一もポラリスを出た。
残された秋奈と冬路はただ呆然と見てるしかなかった。