表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世知識は最強!異世界改革!  作者: Nami


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/10

第6話 執事の正体と、耕運機イメージ


 翌朝。

 俺は全身の筋肉痛で目を覚ました。

 体の節々が悲鳴を上げている。昨日、調子に乗って張り切りすぎたツケが回ってきたようだ。

 10歳の体には、荒地の開墾はハードすぎたらしい。

「うう……痛い……」

「お目覚めですか、リック様。湿布をお持ちしましたよ」

 セバスが涼しい顔で入室してくる。

 この老執事、昨日あれだけ働いたのに、疲れた様子が微塵もない。どうなっているんだ。

 ***

 2日目の作業現場。

 今日は「うね作り」だ。土を盛り上げ、作物を植える列を作る。

 だが、昨日柔らかくしたとはいえ、広大な荒地をすべて手作業で成形するのは骨が折れる。

 30人の農民たちも、さすがに昨日の疲れが残っているのか、ペースが落ちていた。

(……効率が悪い)

 俺は腕組みをして考え込んだ。

 人海戦術は美しいが、限界がある。

 前世なら、トラクターや耕運機を入れるところだ。だが、ここにはそんな機械はない。

 代わりにあるものといえば――。

「……そうだ。魔法だ」

 俺はセバスを振り返った。

 この世界には魔法がある。貴族や一部の才能ある者しか使えないとされるが、エネルギー源としては優秀なはずだ。

「セバス。相談があるんだけど」

「はい、なんでしょう」

「この畝作り、魔法でなんとかならないかな? 『土魔法』で土を動かせば、一瞬で終わると思うんだけど」

 俺の提案に、セバスは少し驚いたように目を丸くした。

「土魔法、でございますか。確かに理屈としては可能ですが……この規模を制御するには、相当な魔力と技術が必要ですよ? 並の魔法使いでは、小さな穴を掘るのが関の山です」

「並じゃなければ、できる?」

「……ふむ」

 セバスは顎に手を当て、少し思案してから、手袋をキュッと締め直した。

「では、僭越ながら私が試してみましょう。リック様の『効率化』のお役に立てるなら」

 セバスは荒地の中央に進み出ると、優雅に片手を掲げた。

 その瞬間。

 ピリリ、と空気が震えた。

「――大地よ、我が意に従い、形を変えよ。『グランド・シェイプ(地形操作)』」

 ズズズズズズッ……!

 地鳴りと共に、目の前の光景が歪んだ。

 まるで生き物のように土が盛り上がり、一直線に整然とした「畝」が形成されていく。

 それも、1本や2本じゃない。

 視界の端から端まで、10本以上の畝が同時に、しかも定規で引いたように美しく完成したのだ。

「う、うわあああっ!?」

「土が勝手に動いたぞ!?」

 農民たちが腰を抜かして逃げ惑う。

 俺もポカンと口を開けていた。

 レベルが違う。これはちょっとした災害レベルの魔法だ。

「……セバス。君、ただの執事じゃないよね?」

 俺がジト目で問いただすと、セバスは「おや」と悪戯っぽく微笑み、埃を払う仕草をした。

「申し遅れました。私、隠居する前は王都の宮廷で『筆頭宮廷魔法師』を務めておりました」

「宮廷魔法師……しかも筆頭!?」

 国の魔法使いのトップじゃないか!

 どうりで父上(商務次官)が「セバスがいれば安心だ」と言っていたわけだ。

 こんなスーパーおじいちゃんが家にいたなんて。エルガレア家の人材層、厚すぎるだろ。

「若様。魔法というのはイメージが重要です。魔力を練り、結果を強く思い描くことで事象を書き換えるのです」

 セバスが俺に視線を向けた。

 教育者としての目だ。

「リック様にも、高い魔力の素養がおありです。試してみますか?」

「俺にもできるかな?」

「エルガレアの血と、カーラ侯爵家の血を引く若様です。できないはずがありません」

 俺はこくりと頷き、まだ手つかずの地面の前に立った。

 イメージ。想像力。

 それなら負けない。俺の中には、前世の現代知識という最強のデータベースがある。

 セバスのような「波のように土を動かす」イメージじゃない。

 もっと効率的で、もっと強力な機械的な動き。

 そう、イメージするのは――大型ロータリー耕運機だ。

 高速回転する鋼鉄の刃が、土を粉砕し、空気を含ませながら耕していく映像。

(エンジン出力全開。回転数3000rpm……ターゲット、前方の土壌!)

 俺は右手を突き出し、体の中の熱いものを指先に集中させた。

「……耕せ。『ロータリー・ブレイク』!」

 ドガガガガガガッ!!

 爆音と共に、俺の目の前の地面が弾け飛んだ。

 いや、弾け飛んだのではない。

 見えない「回転刃」が地面を猛烈な勢いで掘削し、土を細かく粉砕しながら前進していく。

 セバスの魔法が「粘土細工」なら、俺の魔法は「粉砕機」だ。

 硬い岩も雑草の根も関係ない。すべてを巻き込み、一瞬でフカフカの更地にしていく。

「なっ……!?」

 今度はセバスが目を見開く番だった。

 あっという間に50メートルほどの距離を耕し終え、俺は息を吐いた。

「ふぅ……。どうかな、セバス?」

「……驚きました。土を動かすのではなく、細かく『粉砕』し『攪拌かくはん』する魔法とは。あのような複雑な事象、どのようなイメージを持てば発動できるのですか?」

 元・筆頭宮廷魔法師が冷や汗を流している。

 どうやら、俺の現代知識(耕運機の構造)は、魔法というフィルターを通すことで、とんでもないオリジナル魔法に変換されたらしい。

「よし! これならいける!」

 俺は確信した。

 セバスの「地形操作」で大枠を作り、俺の「耕運魔法」で土を整える。

 このコンビネーションがあれば、残りの作業なんて半日で終わる。

「みんな、聞いてくれ! 予定変更だ! 今日中に種まきまで終わらせるぞ!」

 俺の号令に、呆気にとられていた農民たちが「おおおー!」と歓声を上げた。

 魔法使い執事と、転生者当主。

 最強の「開拓コンビ」が爆誕した瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ