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前世知識は最強!異世界改革!  作者: Nami


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第15話 王都攻略と、魔法のカラーチラシ



 「鉄板亭」と「エルガレア百貨店」のオープンを控え、俺は執務室で父ロイドに熱弁を振るっていた。

「父上。領内の客だけでは不十分です。領内でお金が回っても、領地全体の総資産は増えません」

「ふむ。つまり?」

外貨よそものを獲得するんです。王都の貴族、他領の金持ち、そして帝国の商人。彼らをこのエルガレアに呼び込み、金を落とさせる。いわゆる『インバウンド戦略』です!」

 ロイドは頷いた。

「だが、ここは辺境だ。王都の貴族たちは『エルガレアなど煤煙ばいえんと田舎者が住む場所』と見下しているぞ。わざわざ来るだろうか?」

「来させますよ。そのための『招待状』を作りました」

 俺は机の上に、束になった紙をドンと置いた。

 それは、ただの紙ではない。

 表面がツルツルと輝く、最高級の「光沢紙(コート紙)」――に見立てて、紙の表面をスライムの粘液を加工したニスでコーティングしたものだ。

 そして何より、そこに描かれている絵が異常だった。

 輝くガラス張りの百貨店。

 光の夜市で笑顔を見せる人々。

 そして、シズル感たっぷりの焼きそば。

 それらが、写真のように鮮明な「フルカラー」で印刷されているのだ。

「なっ……なんだこの絵は!? 画家が描いたにしては精巧すぎるし、色が……!」

「僕が開発した『写しコピー』の魔法です。風景をそのまま紙に焼き付けました」

 文字情報だけの地味な羊皮紙が当たり前のこの世界で、この「カラーチラシ」のインパクトは核兵器並みだ。

「これを、王都と近隣の有力貴族たちにバラ撒きます。セバス、ワイバーンの準備は?」

「万端でございます。最速の個体を用意しました」

「よし、行くぞ! 日帰り王都出張だ!」

 ***

 数時間後。

 俺とセバスは、王都リンデンバルドのカーラ侯爵邸――つまり、祖父バーノンの屋敷に降り立っていた。

「おお、リック! また会えて嬉しいぞ!」

「お祖父様、急な訪問ですみません。今日は商務大臣であるお祖父様に、ビジネスの話を持ってきました」

 俺は単刀直入に切り出し、持参した「カラーチラシ」と「VIP招待状」をバーノンに見せた。

 バーノンはチラシを見るなり、目を見開いて固まった。

「……これは、本当にエルガレアの絵か? この光り輝く城のような建物はなんだ?」

「これが新しく作った『エルガレア百貨店』です。壁はすべてガラス張りです」

「ガラス張りだと!? バカな、そんな技術が……」

 信じられない、といった様子のバーノンに、俺は畳み掛ける。

「事実です。そして、この街には今、未体験の美食と、夜遊びの興奮があります。……お祖父様。王都の貴族たちは、退屈していますよね?」

 バーノンはハッとして、ニヤリと笑った。

「……ああ。毎晩同じような夜会、代わり映えのしない料理に飽き飽きしておるわ」

「なら、刺激を与えましょう。この招待状を、王都の有力者や流行に敏感な令嬢たちに配ってください。『今、最も熱い街』へのパスポートとして」

 商務大臣のお墨付きとなれば、その信憑性は跳ね上がる。

 バーノンはチラシを指で弾き、満足げに頷いた。

「よかろう。可愛い孫の頼みだ。それに、私もこの『焼きそば』とやらを食べてみたくて震えておる。……よし、今夜の夜会で私が直接宣伝してやろう!」

 ***

 その日の夜、王都の夜会は騒然となった。

 商務大臣バーノンが配った「魔法の絵」が描かれたチラシ。

 そこに映る、未来都市のようなエルガレアの姿。

「まあ! 見てこの建物! 全部クリスタルでできているの!?」

「『夜も眠らない光の街』ですって?」

「この茶色い麺料理……見たこともないけど、美味しそうだわ」

「エルガレア商会……聞いたことがないが、あのカーラ侯爵がここまで推すとは……」

 貴族たちの間で、噂が爆発的に広まった。

 情報の飢餓感。

 そして「行かなければ流行に乗り遅れる」という焦燥感。

 俺の狙い通り、FOMO(取り残される恐怖)が発動したのだ。

 ***

 王都での種まきを終えた俺たちは、その足で帰路についた。

 だが、ただ帰るわけではない。

 帰り道にある近隣の領地、商業都市を持つ男爵家や、交通の要衝にある伯爵家にも、ワイバーンで「空からのポスティング」を行った。

 空から舞い降りる、美しいカラーチラシ。

 街の広場に降り立ち、集まってきた人々にセバスが朗々とした声で宣言する。

「来たる週末! エルガレアにて世紀の『大開店祭』を行います! 先着100名様には、特製焼きそばの無料試食券を配布!」

 噂は風に乗り、街道を駆け巡る。

 

 ***

 夕方、エルガレアに戻った俺は、ワイバーンから降りてぐったりと肩を回した。

「ふぅ……。これであらかた撒いたな」

「お疲れ様でした、リック様。王都の反応、上々でしたな」

「ああ。きっと週末は大変なことになるぞ」

 俺は確信していた。

 人は、新しいものに弱い。

 そして「限定」や「招待」という言葉にはもっと弱い。

「父上に伝えて。警備の増員と、食材の追加発注を。……想定の倍、いや三倍の客が来るぞ」

 プロモーションは成功だ。

 あとは、押し寄せる客という名の「波」を、どう乗りこなすかだ。


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