表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

滝の居場所

大悟は拳を下ろし、深く息を吐いた

「……まだ終わっちゃいねぇな」

陽仁は膝をつく

「兄貴が……死んだ、なんて……」

圭介は言葉を失い、震える手でモニターの残像を見つめていた

カルテー二はその肩に手を置く

かつての敵だった男の手は、今は誰よりも温かかった

「……圭介…まだ、諦めてはいけない 私は行く」

「どこへ」

陽仁が顔を上げる

「司令官のもとだ 事実を確かめる」

圭介は立ち上がろうとするが、大悟は停めた

「今動けるのはカルテー二だけだ……お前らは休め」

カルテー二は小さく頷く

焦げた空気の中で、黒いオーラが揺れる

「滝がどうなったか……司令官なら、必ず何かを掴んでいる」

右手をゆっくり掲げるとカルテー二はテレポートを始めた

「すぐに戻る 必ず知らせる」

その言葉を最後に、カルテー二の姿は光に溶けるように消える

圭介は拳を握りしめたまま、崩れた壁を見つめた

「兄貴が……本当に……」

声は途中で途切れる

陽仁は立ち上がり、息を整えた

「泣くのは、全部終わってからだ 圭介」

「こんなこと、信じたくない!! やっぱり、俺たちも行かなきゃ!! 俺はただ1人の…兄貴の弟なんだから!!」

と圭介は涙を浮かべながら、陽仁に訴える

大悟は黙って二人の間に立った

「兄貴を信じてたんだ! あんな終わり方……納得できるわけないだろ!!」

ただひたすら叫ぶ圭介

陽仁は黙って圭介が殴り掛かるその拳を受け止めた

熱い衝撃が手のひらに伝わる

「……それでも俺たちは、動く時を間違えちゃいけねぇ」

圭介は顔を上げた

「俺だって信じたくねぇ でも突っ走って全員死んだら 滝が悲しむだろ」

「だからこそ、カルテー二が司令官に会う 俺たちは……生き延びて待つ」

陽仁に言い返したくなりながらも、圭介は俯いた

「……くそっ」

大悟が口を開く

「滝が死んだって言葉 一度も信じちゃいねぇさ けど……真実を知るまでは、俺たちは俺たちの現場を守る」

圭介は涙を拭いながら立ち上がった

「兄貴が生きてるなら……俺たちの声 きっと届くはずだ」

大悟は頷き その背を軽く叩いた

「あいつが負けるはずないんだ 絶対…なにかやの事故に違いない」

陽仁は二人を見回した

「……カルテー二 頼んだぞ」


能力者本拠地では司令官室に、カルテー二が歩いていた

「……懐かしい匂いだな」

彼は一歩踏み出し、奥へと進む

重厚な扉の先

広い部屋の中央に、司令官 シルヴァ・トラーズがいた

「来たか、カルテー二」

かつてはカルテー二は敵でありながら、

「陽仁たちは?」

「無事だ だが……滝が」

カルテー二は苦い顔をしたのを気づき、司令官は察する

「……その話か」

部屋の奥にあるホログラム装置が、青い光を灯す

滝の姿が、一瞬だけ浮かび上がった

「これは、エアンの仕業ではない」

「滝は消えた だが、死んだとは限らない」

カルテー二は顔を上げた

「どういうことだ」

司令官は装置の光に手をかざす

「封鎖領域が再び動き始めた 滝は…その中に囚われている可能性がある」

その言葉に、カルテー二は息を飲む

「……滝が、生きている?」

「確証はない だが我々が感じた“反応”は、確かに彼のものだ」

「シルヴァ…その封鎖領域とは」

司令官はモニターを見ながらカルテー二に話す

「封鎖領域……それは、かつて滝が戦った“記憶"が生まれた場所だ」

司令官の視線がモニターの光に反射し、部屋全体を青く染める

「異界とこの世界の狭間 本来なら、私の力でも干渉できない領域だ」

「では、滝は……そこに囚われたと?」

司令官は頷く

「正確には、“記憶”として閉じ込められた可能性がある」

モニターには崩れた地形が映し出される

どこかで見たような世界 しかし、何かが決定的に違っている

「この場所を初めて観測したのは三日前だ」

司令官は画面を指で拡大し、中心の光点を示す

「この反応が出た瞬間、この現代のエネルギーが一時的に乱れた」

「……それが、滝の反応」

「では、救出は可能なのか」

司令官は返事を返す

「……可能だが、代償は大きい」

「封鎖領域に侵入するには、異界との結界を一度“解く”必要がある」

「異界とは、シルヴァの世界の、だな?」

「いかにも イーストフロンティアへと行き来する次元を解くのだ」

カルテー二は頷く

「……滝を救うために、またあの闇を呼び戻すというのか 私が自ら開いた闇を」

司令官は肘をデスクに置く

「そうだ だが 我々には、もう選択肢がない」


カルテー二は、シルヴァの話を聞いて、思わず呟いた

「また、滝は囚われているのか…貴明の死を」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ