次のターゲット
司令官の言葉を聞いた瞬間、
滝はこくりと小さく頷いた。
握った棍棒ホルダーが、かすかに震えている
純が横からその肩をドンと叩く
「ほら、行くぞ滝。ビビってる暇あったら動く!」
「……ビビってねぇよ」
強がる声とは裏腹に、滝の胸はまだざわざわしていた
智嬉は腕を組みながら、ため息を落とす
「みづきはともかく、陽仁は今気を張ってんだ
覚悟しとけよ、滝」
「……っくらい分かってるよ」
司令官は滝の歩調が遅いことに気付いた
智嬉の言葉に、滝は小さく喉を鳴らした。
陽仁が“気を張る”――それはつまり、
今の状況がただ事ではないということだ
「……っ、わかってるよ」
足取りがほんの少し重くなる
その様子を黙って見ていた司令官が、ゆっくりと歩いてきた
「滝」
滝は思わず背筋を伸ばす
「前だけ見ろ。お前の不安は、後ろの三人に全部伝わる」
滝はハッとする
「…………すみません」
「謝るな。迷うなとも言わん。だが 歩みを止めるな。お前が止まれば、そこで全部崩れる」
硬いようで、不器用な優しさを含んだ声だった
純がぽりぽり頭を掻きながら、
「だーかーらさぁ、滝。不安なら、不安って言えって。俺も智嬉も司令官もいるんだよ?」
俺がいたのを滝たちは忘れていたらしい
「俺もいるんだけど!??」
──バンッ!!!
情報支部へ続く扉が勢いよく開き、
三人+司令官が同時にビクッと肩を跳ねさせた
「……っ!?」
そして、ゆっくり顔を向ける
扉の向こうで腕を組んでいたのは、
金髪を揺らした…俺
頬を引きつらせながら叫ぶ
「俺もいるんだけど!?!?お前ら、堂々と俺の前で“いない扱い”すんな!!」
純が「あっ」みたいな顔で後頭部をかく
「いや陽仁、お前静かだからさ。気配ねーんだよ」
「は???情報支部の人間が気配消すの当たり前だろ!!仕事舐めんな!!」
智嬉は隣で笑いを堪えて肩を震わせる
「いや、悪い、悪いって! 陽仁、これがその資料だよ」
「……どれどれ」
まだ頬をふくらませながら資料をつかむ
だが、紙に視線を落とした瞬間、
表情がスッと引き締まった
仕事モードの俺だ
「……おい、司令官」
「なんだ」
「この数値、本当か?」
司令官は腕を組み、淡々と答える
「数値というよりは、我々が出した意見のほうを読んで欲しい」
「ああ、記憶の中に入り込む戦いのやつですね?」
資料の下段を読み始める
すぐに顔色が変わった
「ああ……これ、あれか。“記憶の中に入り込む戦い” のやつですね?」
純は頭をガシガシ
「ったく、俺は苦手なんだよなこういうの」
みづきが小さくため息をつく
「純。あなたは覚えてないの?前にも一度あったでしょう。滝の記憶層に敵が入り込んで、現実と同じ反応を引き出した件」
純も資料を覗き込み、ひゅ〜っと口笛を吹いた
「おいおい滝、これマジか。
青いオーラ、普段の倍以上跳ねてんじゃねぇか」
「こ、これは…っ 俺の記憶に、敵が入り込んだからだ! そのオーラで、敵に気づいたんだ!」
その言葉に、情報支部の空気が一変した
「……自分で気づいたんだな?
“異物”が入ったって」
俺は滝に静かに聞く
「……ああ。 最初は、夢かと思った……でも違う。あいつの声が、俺の“中”にいたんだ!」
純は一瞬、滝の背中へ手を伸ばしかけ――
でも触れずに拳を握り直した
「……っ滝、落ち着け。それ以上暴れたら、また倒れっぞ」
智嬉は険しい顔で資料をめくる
「敵が記憶に入り込むってのは分かった。
でも、お前を狙った理由が分かんねぇな」
「理由なんざひとつだ」
司令官が低く言った
「滝の情が深いことを、奴は知っている。
“揺さぶれば折れる”。そう思われている証拠だ」
滝はぷるぷる肩が震えている
「俺…一刻も早く、ヴェルクを倒したい!」
司令官は情報支部のモニターのキーボードをカタカタ
「む? またレーダーが反応してるな」
「また!?」
「次は… いかん!!」
滝は司令官の声にビビってしまう
「誰なんだよ」
純は腕を組みイライラ
「……瞳がターゲットだ」




