調整
「【道化師】様!! こっちは大丈夫です。【黒猫】さんが少し驚いただけで、異形は撃破しました」
ネスティスの声が俺に届いた。先程の叫び声に心配をかけさせないためというのもあるだろう。
【黒猫】とネスティスが進んでいる本来の道でも異形が出現している。
コング兄弟達が倒した異形が復活する可能性も当然ある。おかしくはないのだが……
「分かった!! こっちにもいたが、そっちに向かうかもしれない。注意してくれ」
俺もネスティス達に声が届くように叫んだ。そのせいで異形が戻ってくる可能性もあるが、その時のために逃げる準備はしておく。
一、二、三、四、五……数を数えてみたが、謎ゴブリンの姿は見えない。更に奥に行った感じだ。
「……行くか。待ち伏せするにしても、隠れる場所はないはず。小型ランタンをもう一つ取り出しておくか」
【殺戮】が近道に小さな横穴を作ってたら、そこに隠れる事が出来るかもしれない。
調整する前に小型ランタンは消えそうなので、六番で新しいのを取り出しておこう。
「調整も今のうちにしておかないとな。こういうのは爺さんに怒られそうなんだが」
俺の場合、道具の調整は爺さん達のような職人とはやり方が違う。
勿論、そのためにスキルを複数使うが、道具の場合は事前に性能、効果等を詳細に知っておく必要がある。
「……よし!! 二人の前では隠したいからな」
調整終了。両手が使えるようになり、俺は六番から取り出した小型ランタンを拾い上げる。
編集者独自のスキルなだけに隠しておきたい。【黒猫】、所長の方がそれを知りたがってるからな。それで余計な仕事を押し付けられても面倒だ。
「銀の箱から取り出すんじゃなく、直接使えるようにしたいな。次の進化でそう出来たら、こういう場面でもスキルを使うのが楽になるんだが……」
俺のスキルは【開眼】や【閲覧】で目を使うわけだが、他にも両手を使用する。
小型ランタンや他の道具を持った状態では使えない。武器や盾なんて以ての外だ。
そういう意味でも武器を持たないようにしている。
だからこそ、銀の箱に命令して、道具を自動で使ってくれるようになれば、戦闘の幅が広がる。
俺だけじゃなく、全員がそうなるわけなんだけど……
「ソロだと俺のスキルは殆ど役立たずだからな。異形相手でも、仲間がいてこそだし……とはいえ、簡単に見せるわけにもいかない」
単独行動を選んだのは俺自身だが、戦闘になった時、仲間がいないと何も出来ないんだよな。
ゴブリンとの戦闘も役に立ってなかったが、久し振りにスキルを試してみたけど、以前通りで良かったとは思う。




