勇者の性質
「ネスティスには悪いけど、ここからは私が先頭を進むわ。【道化師】は変わらず後方ね。何か気付いたら、教えて。貴方が一番異界に詳しいまであるんだから」
「了解。ネスティスは真ん中だ。俺だけではなく、ネスティスも違和感を感じたら、教えてくれ。気になる事は何でもだ。異界では通常の事でも、お前の為にもなるからな」
彼女は【黒猫】よりも異界の侵入に敏感だった。異界の中でも進化した何かに気付く可能性もある。それが勇者の性質なのかは分からないが……
「分かりました。あの……このゴブリンにトドメを刺してもいいですか? かろうじて息をしてます。回復されても面倒だし」
ネスティスは俺達の話を聞きながらも、ゴブリンの息遣いに気付いたようだ。
それは【黒猫】の【ポイズンダガー】を受けたゴブリン。仲間に踏まれてながらも、死んではいなかったようだ。
【ポイズンダガー】の効果も痺れで、時期に動き出す可能性もあるが、その傷は致命傷に近い。
「そうね。けど、そんな汚れ仕事は私が」
【黒猫】が代わりにすると口にする前に、ネスティスがトドメを刺した。
映像を見る側からすれば、どう映るのか。間違ってはいない行動だが。
「ネスティス……」
「どうしたんです? 異形は人の敵ですよ。確実に倒さないと危険ですよね? 私は汚れ仕事だとは思ってないから、大丈夫ですよ」
彼女はゴブリンにトドメを刺した後、俺達に笑顔を向けるぐらいだ。
銀の箱は後方にあり、その表情が映像に流されないのが救いか。
普段のネスティスには違っている。異形に対する敵対心が強いが分かる。それが勇者の特質なのか、彼女の過去に何かあったのか。
【閲覧】や【開眼】のスキルがあっても、人の過去や心までは読み取る事までは出来ない。
勇者の相談役だとしても、そこまで踏み入れる事はしなかった。
ただ……【無法者】に憧れる理由はこれにはあるのか。数多くの異形を倒しているのが【無法者】だから。
けど、俺……【道化師】は異形を倒した事は一度も……いや、数回はある程度だ。他メンバーなは分かるが、俺が尊敬されてる理由が分からない。
それと……思った事がある。彼女は孤児院出身だ。そうなった原因が異界化にあったのなら……
【都市】等の人々が住む場所で、突然異界化すれば、逃げるのは困難であり、大勢の犠牲が出る。ネスティスの家族はそれに巻き込まれた可能性が十分ある。
それなら、彼女が異形を恨む理由は分かる。
俺達がそういう異界に参加した時、彼女と会ったのかもしれない。
「【黒猫】……」
「分かってるわよ。最悪な時は……ね。けど、貴方がどうにかしなさいよ」
【黒猫】も今のネスティスの姿で察したようだ。
彼女が異形相手に暴走する可能性がある事。
さっきは俺の言葉でゴブリンを殺すのを踏み留まったが、あの行為を見ると危険な面がある。
その場合、異形を相手にしながらも、俺や【黒猫】が彼女を止めるしかなくなってしまう。
異界の進化だけでも面倒なんだが、今知れただけマシだと思っておこう。




