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逃亡

「そんな期待した目を向けるなよ。そこまでの情報でもないんだからな」


 俺が【閲覧】だけでなく、【開眼】も使用して、ゴブリンの状態を見ただけ。


 あのゴブリン達の行動は明らかにおかしかった。実力差があると分かった時点で、逃げるなり、隠れたりするはず。


「【閲覧】で新しい情報が入ったわけ? 相手のパラメーターを見る事が出来るだけよね。私達と異形では違ったりするの?」


【黒猫】は俺の【閲覧】のスキルを知っている。知っていなければ、彼女のスキル選択を出来るわけがないからだ。


「一緒だな。ただし、見る時間が長ければ、深く覗き見る事が出来る。他にも条件はあったりするんだが……」


 相手が無防備な状態の時に限る。状態異常の時に見やすくなる程度。警戒心が強ければ、最低限の情報を見れるぐらいで留まってしまう。


「【道化師】様は何が分かったんですか? ゴブリンがは単に私達を襲ってきただけですよね?」


 ネスティスは異形との初戦闘で、おかしな部分があるとは思わないだろう。


「普通はそう思うだろうな。異形が襲い掛かってきただけだと。本来、ゴブリンは警戒心が強く、襲い掛かってくる時は集団でやって来る事が多いんだよ」


「確かにそうね。私達が不意討ちとか、先に見つけた場合は単体もあるけど、あちらが先に仕掛けてきた時は十体はいるわ」


 ゴブリンが俺達の匂いに気付き、襲撃するにしても、三体は少な過ぎる。全員の匂いを嗅ぎとっていたのなら、それ以上の数を連れてくるはず。


「それは先に来ていたコング兄弟さん達がゴブリンを倒していたからじゃないですか? 死体が消えているとはいえ、すぐに復活するものですか?」


「異形というよりも、異界次第ね。数時間の時もあれば、数日後の時もある。ゴブリンの数を考えると、一日二日ではなさそうよ。それと数が増えるのは、死体が消えてたから。元の数までは把握してないけど、異界に入る人数が制限されているように、異形の上限も決められている説があるわね」


 俺もそこまで詳しくは知らなかった。盗賊ギルドの情報網なのか、もしくは協会の可能性も。【黒猫】が美人秘書なら、所長や本部から【盗み聞き】していてもおかしくない。


「だったら」


「言っただろ? ゴブリンは警戒心が強いと。人数差で勝負が出来ない以上、増えるまで隠れている。もしくは、俺達が来るのを待って、不意討ちを狙ってくるのが関の山だ」


 俺達の匂いに気付いたのなら、待ち伏せしておけば良い。流石に遠くからだと、性別までは判断出来ないだろうから。


「……なるほどね。何となく予想は出来たけど、結論を言いなさいよ。変に時間を掛ける必要もないんだし」


 時間を使う事で、ドンドン達が倒しであろうゴブリン達が復活されても面倒臭い。


「分かってる。結論を言えば、ゴブリンの状態は恐怖による混乱。俺達の存在に気付いたわけじゃなく、逃げてきたんだよ」

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