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無茶振りが凄い

「お前が勇者に言わなくても、本部……国から指名で依頼が出されるようだ。勇者は特権があるのを許されている代わりに、余程の事がなければ、断る事が出来ない」


 勇者は優遇されているが、デメリットも存在する。国から依頼されたら、断る事がほぼ不可能という事。


 他国の場合は話は別だが、イズン帝国からの依頼を本部は受け取ったわけだ。もしくは、そういう風にして貰ったか。


「はぁ……それなら仕方ないか。俺も文句が言える立場じゃないし……ちょっと待て!! 嫌な予感がするんだが」


 所長が俺にそれを言わなくても、彼女から相談しに来るんじゃないか? それを先に教えるのには理由があるはず。


「何処の異界までは聞いてないし、依頼内容の情報は入ってない。ただし、向かわせるのはレベル4にするとだけ。それも明日には連絡が行き、三日後までには行かせるようだ」


「馬鹿なのか!? ツッコミどころが満載だぞ。所長もそこは言い返せよ。無茶ぶりが過ぎるわ。俺達以上の仕打ちだろ」


 流石の俺もドン引きするぞ。最初の異界探索はレベル1か2にしろよ。ネスティスにパーティーを組ませても、レベル3が限界だ。危険度はレベル4から一気に引き上がる。本部と現場の温度差があり過ぎだ。異界は本部に起きてるんじゃなくて、現場に起きてるんだぞ!!


 それもスキル習得を途中で止めされる事になる。三日後とか、時間が無さ過ぎる。装備や道具も、異界次第で変わるんだからな。


「……拒否する事も出来ないんだよな。早く異界に行かせなかった俺のせいでもあるのか。せめて、パーティーを組ませるように指示してくれよ。下手したら、彼女はレベル4でもソロで行きかねない。ソロの集まりも一緒だぞ」


 ネスティスがレベル4に行こうものなら、パーティーは必須だ。ハンターランクも高くなければ、逆に彼女の足を引っ張るだけになる。


 ソロだけを集めたとしても、全員が単独行動をしたら終わりだ。勇者を死なせないような編成にしないと駄目だ。


「俺は単なる相談役だし、パーティーを組むようには何度も促してたからな。それでも拒否したぐらいだ。そちらで指示するしかないぞ」


「分かっている。どの異界なのか判明次第、こちらで勇者のパーティーを用意するさ。だが……【無法者】のメンバーを借りる事は」


 所長は【無法者】のメンバーの誰かを勇者の臨時パーティーに入れたいのか。苦情もそうだが、そのために俺を呼んだ可能性もあるな。


「無理だぞ。アイツ等は帝国から離れて、ソロで修業している。呼び戻すのは不可能だ。いたとしても、逆に勇者を危険にさせるだけだな」


 アイツ等の一人をパーティーに組み込んだとしても、単独行動をするだろう。信頼してない奴の言う事なんて聞くはずがないし、守ろうともしないだろう。


「そうだよな。……分かった。話は終わったから、戻っていいぞ。次に彼女が相談室に来た時、俺を呼ぶように受付嬢達にも伝えるように言っておいてくれ。どうせ、勇者はお前を選ぶだろ」


 所長はシッシと手を振って、戻るように指示する。余計な話をしたから、三十分は掛かったか?


 俺が所長室から出ると、入れ替わりのように美人秘書が中に入っていく。俺が出てくるのを廊下で待ってたのかもしれない。


 彼女とすれ違う時の圧が凄かった。あれは所長が怒られるパターンだろう。


 流石にそれを聞きたくもないので、すぐにその場所から離れた。


「あっ!! レイさん。朝から所長に怒られたんですか? 報告を怠るからですよ。私はちゃんと言いましたからね」


 フレアは受付準備のために裏に来ていて、俺の顔を見るなり、呆れた顔をしている。


「あれは仕方ないだろ。時間を過ぎての相談だったんだから。それよりもだ。俺の机に大量の書類が置かれてるのは何だ?」


「アカネさんが置いていったんだよ。『仕事の遅延を今日中に取り戻してください』だって。そう言う、笑顔が逆に怖かったんだから」


 アカネは所長の美人秘書の名前だ。所長だけじゃなく、俺にもきっちりと罰を……トラップを用意していたようだ。

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