異様な行動
「……なるほどな」
「念の為に【ポイズンダガー】を使ったけど……【道化師】が感じたのが何か分かったわ」
【黒猫】はゴブリン相手に少し離れた距離から【ポイズンダガー】が宿ったナイフを投げた。
ゴブリンもそのナイフが見えたはずであり、普通なら回避や防御の行動を取るはずだった。
だが、先頭のゴブリンは両方の行動は取らず、体に直撃しながらも前進していく。
仲間のゴブリンの盾、身代わりになったわけじゃない。【黒猫】も鬼気迫るものを感じたようだ。
とはいえ、【ポイズンダガー】の毒が回り、先頭のゴブリンは痺れを起こして、地面に倒れ込む。倒れ込みながらも進もうとしている。
それを仲間のはずのゴブリン二匹が踏み潰しながら、俺達の方へと向かってくる。いや、その表現は間違っているのかもしれない。
ゴブリンも知能はあるはずであり、目の前で仲間が倒された以上、俺達の事を警戒するはず。
仲間を踏み潰しながら進むのは異様な事だ。
「ネスティスは戦闘に集中しろ!!」
ゴブリンが異様だとはいえ、力は変わってない事は【黒猫】の【ポイズンダガー】のダメージで証明済みだ。
リーチもネスティスの方に分がある。武器を所持しているのもあるが、背の高さもそう。
ゴブリンは小鬼の異形であり、小さな子供と大きさは変わらない。
それを斬る事が出来るかどうか。気持ちの問題でもある。
ゴブリンは武器を構えたネスティスを見ても、直進は変わらない。
先頭に代わったゴブリンは【威嚇】の叫びを放ち、両手を広げる。
【威嚇】は異形が持つスキルの一つであり、格下を竦み上がらせ、動きを止めてしまう。
未熟なハンターには効果抜群。使う異形によってはハンターが全滅する可能性も生まれる。
ただし、ネスティスには通じてない。つまり、彼女の方が実力が上という事だ。
ネスティスは爺さんから受け取った刀で一閃。一振りでゴブリンの胴体と首を切り離した。刀の軽さにより、振る速度が上がり、威力も上がっている。それは【剣刃】以外もそうなる。
それだけじゃなく、ネスティスにゴブリンを倒すのに躊躇いがなかったのもある。
最初の実戦でそれが出来るのは凄い。人でなくても、生物を斬る事になるのに普通は躊躇があるものだ。
ゴブリンは残り一体。前のゴブリンの首が飛んだところで動じるどころか、その隙を突いて、ジャンプした。
仲間の死体を飛び越えての奇襲を行うつもりだったのか。視線はネスティスの方に向けられている。
ネスティスもゴブリンがもう一体後方にいる事は知っているはずで、切り返しで撃ち落とす可能だった。
「殺すのは待った!!」
俺はネスティスが反撃する直前で、その行動を止めるように叫んだ。
その声にネスティスはカウンターを踏みとどまるが、それは彼女自身を危険に晒す事になるわけだが……




