死体の行方
「異界の養分、元に戻ると言った方が正しいかもしれないか。死体が消えるのは異界に放置した時だけだ。異界の宝が消えないように、死体を外に出せば、消滅しないぞ」
異界が再度異形を形成するためなのか。進化するための養分にしているのか、そこまでは分からない。
死体や体の一部を外に出せば、消滅は免れる。【死天使】は何度か試した事がある。どの異形も消える事はなかった。
本部の人間も試した事はあるはずだ。
加えて、依頼にも異形の一部を持ち帰る物がある。それを切り取っても消えないのが証拠にもなる。ゴブリンのアレがそうだ。
「そうだったわね。依頼に異形の一部があるぐらいだから。死体を持ち帰る奇特な奴がいたお陰かもしれないわ」
それは暗に【無法者】の事を言ってるのか。もしくは、本部の事を言ってるのか。所長の右腕であり、盗賊でもあるから、それらの情報は入手出来るのかもしれない。
「なるほどです。異界にあれば、異形の死体は消滅して、養分となるわけですよね」
「予想だがな。だからといって、異形の死体を外に持ち帰るのも普通は嫌だからな。数によっては不可能に近い」
異界の養分になるのを阻止するために、死体を外で運ぶ。異界でどれたけ異形の出現し、倒す事になるのか。ハンターにそんな体力も気力もないだろうな。それが無駄の可能性もあるのだから、尚更だ。
「だったら……ハンターが異界で亡くなった場合はどうなるんですか?」
そう質問するのは、ネスティスも救助者の数が減っている事に気付いたのか。敢えて、言葉を濁しているのかもしれない。
俺と【黒猫】の関係を変に疑ったが、察しの良いところはある。
「異形と同じよ。時間の経過と共に消えるわ。証が協会に戻ってきた時点で分かる事だから。パーティーが全滅した場合はね。仲間がいれば、外に運ぶ時もあるだろうけど」
パーティーが全滅した場合、誰も死体を運べない。異界に吸収される事もあれば、異形に喰われる事もある。後者は【黒猫】も言う必要はないと思ったんだろう。
「装備品が残るのが救いだな。それを形見とする事もある。それを取りに行く依頼もあるぐらいだ」
パーティー全滅は免れ、一人になったハンターは、大半が引退してしまう。だとしても、仲間の墓を作るため、形見を取りに行って欲しいという依頼もある。
俺や【黒猫】が【廃坑】にいる人数を知った時、死体を探そうと口にしなかったのは、ネスティスの事もあるが、消滅している可能性も十分にあったからだ。
装備品が落ちていたとしても、彼等の分なのかは分かるはずもない。
証が戻ってる時点で生死は判明している。証拠となる物を持ち帰らなくても問題ないという事だ。
「話はここまでね。【気配感知】が反応したわ。こちらに近付いてくるのが三……戦闘になるわ」




