トイレ待ち
「ちょっと!! いつまで掛かってるわけ!? 長いと……何を言わせるつもりよ!! 返事をしなさい」
【黒猫】のスキルを考えるのに没頭してしまっていた。けど、ほんの数分。十分は掛かってないはずだぞ。
「ちゃんといるぞ。何かあったわけでもない。すぐに戻るから」
流石にどっちかだったかを言う必要もないか。【廃坑】の進化もあるし、【黒猫】の【危険察知】に何か反応があった可能性もあるか。
「すまないな。気を使ったつもりだったんだが……」
戻ってみると、二人に何も変化なし。【黒猫】が少しイラッとした雰囲気になっているのと、ネスティスがソワソワした感じになってはいる。
俺はマスクの口部分に指を当てた。【黒猫】なら、どういう意味か察するはず。
「ああ……なるほどね。私には必要ない。異界の入る時は抜く事にしてるのよ。何が起きるかも分からないから。別に真似をする必要はないからね」
「確かにそういうハンターもいるな」
異界の臭いはそれぞれで気持ち悪くなる時もあったり、異形の一撃により吐く時もある。お腹を空にした方が楽になる事もあるのは確かだ。
俺達マスクマン……正体を隠す側にしたら、それが正解かもしれない。
とはいえ、俺は食事が必要なタイプだ。【無法者】メンバーがそれだからなのかもしれないが。特に【卑怯】は食べ物に関しては厳しいから。
「彼女が貴方の戻りが遅いのを気にしてたから」
「いえ……【道化師】様の凄さは分かってるのに、勝手に心配してしまって」
ネスティスがソワソワしてたのはトイレに行きたいのかと勘違いしてしまった。俺を心配してくれてたのか……
「それと……ゴメンなさい!! 私も行ってきます」
ネスティスは何処かへ走り去っていく。多分、トイレか……それもあったみたいだ。
「一応、彼女にはパンを食べさせたわ。最初は体力の方が必要だから。言っておくけど、何かを仕込んだわけじゃないわよ」
俺がいない間に、【黒猫】がネスティスに食事を与えたようだ。俺や爺さんも食事を必要とは言ってなかったからな。
【黒猫】も所長に言われたのか、念の為に用意しておいたんだろう。本人は食べないと言ってるわけだしな。
「そこを疑う必要はないだろ? 所長が選んだ奴なんだから」
「それは貴方も同じだと言いたいわけ? ……そこはいいわ。彼女がいない間にスキルの確認をするから。私が選んだのはこの五つよ。【道化師】は見えるんでしょ。変更点があれば教えて」
「分かった」
所長が絡むとヒートアップしそうな感じだったが、【黒猫】もぐっと抑えた。俺が【無法者】メンバーの一員として、評価している事もあるのだろう。
【黒猫】が選んだスキルを【閲覧】で見る。その五つのスキルはロックしていると分かるように、錠前が掛けられている。
【キュア】【ライト】【気配感知】【気配遮断】【分身】の五つだ。




