苦情が届いてます
「話を戻すと言っても、俺とネスティス……勇者の会話は聞いてたのなら、別に俺からの報告は必要ないんじゃ……もしかして、盗賊ギルドから苦情でも入ったのか?」
所長の耳に俺とネスティスの会話が聴こえてたのなら、朝一から呼び出す必要もない。
何か問題が発生したはず。だとすれば、盗賊ギルド関連か?
彼女は相談後、すぐに盗賊ギルドへ向かった。そこで問題を起こし、所長の耳に届いた。情報が来るのが早かったのも、盗賊ギルド元トップであり、今も繋がりがあるからだろうな。
「確かに薦めはしたけど、提示したスキルは二つ。どちらを決めたのは彼女だ。俺のせい、相談役のせいにするのは間違ってるだろ……ませんか?」
一応、口調が強くなったので、言い直してみる。相談役を降ろされる事になったら万々歳だが、臨時職員まで辞めたいわけじゃない。
「盗賊ギルドからは来てない。気さくな奴が多い。男よりも女の方が比率が高いのもある。すんなりと彼女を受け入れたよ」
ネスティスは他ギルド同様、すんなりと受け入れられたらしい。勇者特権があるとはいえ、素直に受け入れられない人間もいるからな。
所長が俺達の話を聞いて、先に根回しをしてくれた可能性もあるか。
盗賊ギルド関連じゃない。問題は別にある。なんせ……
「『盗賊ギルドからは』って事は、別のところから苦情があったのか? それは……魔法ギルド?」
ネスティスは昨日まで魔法ギルドに住み込みで修業をしていた……が!! そこで何かあっても、俺の責任じゃないでしょ。
「苦情があったのは本部……異界探索協会本部からだ」
「……はっ!? 本部から!! 『【無法者】に勇者を任せるな』と苦情が入ったのなら、俺じゃなく、所長が悪いぞ」
【無法者】は本部に良く思われてない。映像偽装で協会が疑われてしまったのもある。それと……色々とあって、厄介者扱いされてる面もある。
「……本部も【無法者】の実力は認めているからな。【道化師】が相談役になった事に文句を言わなかった。……当初はな」
「当初は? 俺は普通に相談を受けただけだぞ。ソロで活動出来るよう、基礎的なスキルを伝えただけで」
「普通なのが問題だったようだな。本部は勇者を早くに異界へ向かわせたかった。そこで活躍させて、ハンターを増やすなり、他の勇者の発破をかけたいらしい。無茶させても、お前なら強くさせると予想したんだろう」
「いやいや!! 本部は俺を何だと思ってるんだよ。勇者に無茶をさせるわけないだろ。どんな目に合うか、ビクビクしてたぐらいだぞ。そんな事が出来るのは【無法者】だけだ」
「だな。お前は正しい。だが、新たな勇者の誕生は世間に知られてしまっている。活躍を待ってる奴等が多い。異界は長くいるだけ、人を成長させる。基礎よりも、その成長を見越してるんだろうよ」
実際はそう。異界探索の成長率は半端ない。異形との戦闘もそうだが、空気自体が違う。
長くいる分、強くなっていく気がする。スキル習得も早い。けど、異界に長くいれば、危険なのは間違いない。死んでしまえば、意味がないからな。
「今回で異界に行かせとけば、良かったわけだ。スキル習得次第、次は異界探索を許可するつもりだから。ソロだとしても、レベル1は大丈夫だと思うぞ」
本部からの通達関係なく、ネスティスのモチベ的にも、次には行かせるつもりだったからな。勿論、危険察知系のスキルを手に入れたらの話だが。
「……って、何で渋い顔をしてるんだ? 本部の苦情に続きでもあるみたいな」
所長は俺の話を聞いて、返事をしないどころか、渋い顔を向けてくるんだけど……異界に行かせると言ってるんだから、文句はないはず……だよな?




