応援拒否
「まずは分かりやすいところから。帝都に帰るにしても、馬車が戻ってくるのは明日の朝。それを待つ、自分の足で行くにしても時間が掛かり過ぎる」
「……そうでした。応援を呼ぶにしても、時間が掛かりますよね」
「時間と言っても一日だけ。許容範囲ではあるんだけど」
異界の進化の速さを警戒すると、時間が惜しいのは間違いない。応援が来るのであれば、一日ぐらいは十分待てる。
【黒猫】が【気配遮断】や【危険察知】で【廃坑】の情報を少しでも拾う時間にあて、応援に来たハンターと一気に攻略する。
「それは応援が来るのが確定している場合だな。今の状況だと、協会から応援を呼ぶ理由が弱いんだ。進化という証拠がない。あるのはネスティスの違和感と、俺の経験から来るものだけだ」
「貴女が勇者だとしても、異界探索は初めて。違和感だけで、協会が応援を許可するわけがない。【道化師】に関しても同じ。彼が一度、異界から遠ざかってるのもあるわね」
「ハンターが異界に出向く時、証による映像が協会に送られるのも、状況の確認するため。つまり、一度は入る必要がある。俺や【黒猫】の映像は流さず、ネスティスの映像を見るという話だった。つまり、応援を呼ぶにしても、ネスティスが【廃坑】に行く必要がある」
本部は異界の状況を把握しなければ、応援を出す事はないだろう。まして、勇者が戻る事自体許すかどうかだ。
それにだ。これが一番の問題でもある。本部が応援を寄越さない理由。
「異界を見る事によって、進化を確認する。それ次第で協会が応援を呼ぶ。高ランクハンターをその場所に向かわせる。そういう流れがある。そこで違和感を感じないか?」
「あっ!! 今回の依頼がコング兄弟と他二人の救助。途中で映像が途切れたわけだから、進化してる可能性を本部は知ってるんだ」
「そういう事。進化していると分かっていて、貴女を向かわせたの。その時点で新たに応援を寄越す事はないわけよ」
俺達がコング兄弟達への応援ともなるわけだ。所長が高ハンターの【黒猫】を呼んだのは正解という事になる。
「進化してもレベル4。まずは一段階上げるだけ。ランク5がいても足手まといがいたのだから、思うように動けなかっだけと捉えてもおかしくはない」
「……納得しました。私達で何とかするしかないんですね」
「映像を流す以上、貴女が危険になったら、協会が救援を出す可能性はあるわ」
勇者の映像を流すのであれば、彼女の身の危険に協会は何もしなかった……と、人々には思われたくないはず。
応援を求めるのであれば、異界内で時間を稼ぐしかない。それも身を危険な状態にしてだ。
「それをするなら、一気にコア破壊をした方がいい。コアを破壊すれば、異形も出てこない。すでに出現しているのは別だが」
だからこそ、救助よりもコア破壊を優先しなければならない。
コアが残った状態が続くのなら、人数の少ない俺達がジリ貧になる。




