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編集者という職業

「勇者もお前の存在に気付いているんじゃないのか? 【無法者】メンバーになりたいと言ってる程だぞ。師匠とも呼ばれているのだろ?」


 所長にとって、【盗み聞き】はお手の物。協会にいた時、俺とネスティスの会話を逐一聞いてそうだ。


「……それはないぞ。【無法者】メンバーで異界を攻略したり、全員で行動する時、素顔を晒した事はないから。アイツ等は別だけど」


【無法者】は異界攻略の映像は、協会内だけでなく、ハンター勧誘の宣伝として使われた。


 当然、その中に俺……【道化師】の姿もある。その時、マスクを被り、素顔を見せないようにしていた。声色も変えていたぐらいだ。


「それに派手な行動なんて一度もした事がない。いや、殆ど……全く、何もしてないぞ」


「知っているさ。【無法者】の映像は何度も見た。お前は物理、魔法、防御、回復、補助のスキルを何一つしてないように見える。装備もお粗末な物。行動も逃げ回ってるぐらいか? だからこそ、異様なんだよ。【道化師】という存在が。お前がいるいないで、別のパーティーになるからな」


 異界には適正もあるだけでなく、人数制限を課せられる場合もある。勿論、俺が【無法者】として、参加しなかった事は何度もあるわけで。それと比較されてもおかしくはないか。


 アイツ等も途中から俺を強制的に参加させるようにしてきたんだよな。


 異界マニアではあるけど、異界は死と隣り合わせ。常に危険が付き纏う。【無法者】はそこに一日二日、一週間も滞在するなんて当たり前。アイツ等は攻略するまで帰りません精神が凄いから。


 俺は【無法者】のリーダーとされてるが、アイツ等はろくに人の話を聞いてくれないし。


 異界やハンターは安全な場所で、映像を見るのに限る。


 今の生活に満足だ。臨時職員じゃなくて、職員にしてくれても構わないぐらいだからな。


「だからこそ、お前に勇者を任せたら、どうなるのか。【道化師】の一旦を知る事が出来るんじゃないかってな。俺がそれを知りたいというのが一番の理由だな」


「買いかぶり過ぎなんだよ……なんですよ。正体がバレた時、職業とスキルは教えたはずだし、証で確認もさせただろ?」


 ハンターの証である銀の箱は、持ち主の能力を記憶する。本人の許可があれば、他者にスキルや職業を見せる事が可能となっている。


「編集者……職業だろ? スキルは【閲覧】や【修正】【解析】【編集】等、異界探索には不必要な物ばかりだった」


「そういう事。職業の事を考えると、ここが理想の職場まであるわけだ。臨時じゃなく、本当に雇ってくれても」


「それはない。お前はハンターが似合ってるからな。そんな事すれば、協会はアイツ等を敵に回す事になりかねないのもある」


 俺の職業は編集者。それは間違いではなく、所謂、事務職であり、協会等の裏方作業が一番の職場じゃないだろうか。


 それを所長だけでなく、アイツ等も認めない。俺はハンターが似合ってると。辞めさせてくれないのだ。


 今のこの状況、【無法者】のメンバーが別行動をしているのには理由がある。


 俺が協会で臨時職員をしているのも、その理由が関係しているわけだが……自由を満喫しているに等しい生活だから。


「話が脱線してしまったか。早々に済ませないと、アイツに怒られてしまう。席を外すのも文句を言われたからな」


 所長がアイツと言ってるのは、美人秘書の事だな。彼女が怒るのも無理はないかもしれない。


 彼の机の上には書類の山が一つ、二つ。朝一の段階でこれだ。つまり、仕事が山積みになってるわけで、美人秘書としては、所長が俺にかまってる暇はないと言いたかったんだろう。


 所長も書類の山という現実を見て、溜息を吐いてるし。

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