黒猫=美人秘書?
そう思うと、【黒猫】とアカネの声はそっくりだ。体格も同じだし、髪型も似ている。
美人秘書と【黒猫】からの圧も同じ様に感じているかも。
加えて、彼女はイズン支部ではなく、別の場所に出張中だ。それが【廃坑】だったとしてもおかしくはない。現に俺がそうだからな。
とはいえ、それを本人に確認なんて出来るわけがない。ネスティスがいるのもそうだが、【黒猫】は正体を知られたくないわけだ。
それは俺も同じ。聞いたところで答えるはずがないし、下手すれば、俺の正体が【黒猫】にバレる可能性もある。
【黒猫】=美人秘書アカネと思うのは、同じ職場で働いている人物だけ。
その職員の中で一番怪しいとしたら、俺になってしまう。
所長との仲は美人秘書は知ってるわけで、俺のプロフィールに元ハンターとも書かれているのも確認しているはず。
更に言えば、所長が俺に勇者の相談役を任したままになってるのも怪しく思うだろう。
俺だったら、その人物が何者なのかを疑うぐらいはする。
「こっちを見ながら、何で急に黙るのよ。貴方も人の事を言える立場なわけ? 女三人もパーティーにいるんだから、その中で好きになる相手だって」
【黒猫】は反撃とばかりに、俺のパーティーの内情を指摘する。男二人、女三人のパーティーなら、色恋沙汰の一つや二つあるだろうと。
「……本気で言ってるのか? お前も知ってるだろ。アイツ等が恋愛対象になるなんて……正気を疑うぞ」
「……謝るわ。確かにそうだわ。けど、彼女達は貴方を気にいってるのは確かだけどね」
【黒猫】がアイツ等の事は知っている。あんな無茶苦茶な事をするメンバー恋愛対象には厳しいと、【黒猫】は俺に憐れみの視線を向けてきた。彼女自身もそう思っているわけだ。
メンバーは仲間であり、恋愛対象にはならないぞ。アイツ等も俺をそんな扱いしてるわけじゃないから。
【無法者】から誰かを選べと言われたら、俺は【犠牲】を選ぶ気がする。【犠牲】は男だけど、一番性格がましで、唯一ヒロインっぽいかもしれない。
それだけ、【卑怯】【殺戮】【死天使】のキャラが濃いという事だ。
「だったら、ふ……」
「ふ?」
「……何でもないわ。この話は止めにしない。変な緊張感になる。今から異界に向かう空気じゃなくなるでしょ」
【黒猫】は誰の事を言おうとしてたんだ? 【無法者】メンバー以外で、俺が仲良くしてたハンターは全然いないぞ。所長が例外なだけで、まして女性ハンターと仲良くなるなんて……しかも、最初にふが付く人物? 名前を言おうとしたんだよな?
まさか……フレアとか言おうとした!? だから、途中で言うのを止めた。フレアが俺に絡んでくるのを知ってるのは職員だけだ。
それだけじゃない。そう思えるのは俺=【道化師】と疑ってる。高確率で【黒猫】は美人秘書だろ!?
「……そうだな。ネスティスも俺達が付き合ってない事を理解したか? しただろ。この話を終わりという事で」
お互いが身バレをしないためにも、これ以上触れない方がいい。【黒猫】もそう結論付けたはずだ。




