放置します
「さっさとここから離れるわよ。勇者の初陣をこんなので汚したら、本部が許さないわ。【道化師】も目立ちたくはないんでしょ」
【黒猫】は勇者が周囲に見られないように、人の視線来る方向に立ち、盾となっている。
「確かに……彼はどうするんだ?」
俺達はここから離れる事は出来るが、ラーンは意識を失っている。誰かが運ぶしかない……って、こういう場合は俺になるのか?
ネスティスに運ばせるわけにもいかないし、【黒猫】も嫌がりそうだ。
「置いていくわ。こうなった責任は彼にあるんだし、勇者のせいにする事もないでしょ。私達が証言可能だし、協会……所長もすぐに分かってくれる。貴女もそれでいいでしょ。コイツに面倒をかけたくないわよね」
「……は、はい!! 【道化師】様に迷惑をかけたくないです」
ネスティスはキョトンとした顔になっていて、彼女の声に反応するのが少し遅れた。
彼女の気配に気付けなかったのか、ラーンが倒れた事に驚いたのか。
それにしても、【黒猫】は彼女の扱いを分かってそうだ。【無法者】、【道化師】のファンだという事を知るハンターはいないはず。
所長や協会の職員にでも話を聞いているのか?
「勇者からの了承も得たし、行くわよ。貴方も私の側から離れずについて来なさい。【気配遮断】と【視線誘導】を使うわ。異界以外でスキル使用は基本的に駄目だから、貴女は真似しないように」
「分かった。ネスティスは声を出すな。【気配遮断】時は静かに動く必要がある」
ネスティスも俺の言葉に頷き、【黒猫】の後ろについて行く。
【気配遮断】は単独で効果を発揮するわけだが、【黒猫】もそれを使い続けた事で周囲の人間、パーティーメンバーまで範囲を広げる事が出来るようになってたみたいだ。しかも、パッシブ効果になってるのも凄い。
【気配遮断】 AP【2】 パッシブ&アクティブ
パッシブは存在感を消すだけで、周囲から見えてないわけではない。アクティブになると周囲から気配を消す効果は強くなる。持続時間は【十分】であり、複数人だと【三分】。先に知られてる場合は効果が薄くなってしまく。
これは【黒猫】の【気配遮断】の内容だ。時間や全体に効果があるのは、彼女特有になる。
先に見られている場合、効果が薄くなるのは強化されていない。俺達はすでに視線を受けている状況。
それを【視線誘導】のスキルで帳消しにした。ラーンを放置したのも、周囲の人達の意識、視線を向けさせるためだ。
ラーンが突然倒れた事で周囲の意識がそちらに向くよう誘導して、俺達の存在をリセットさせた。
【視線誘導】 AP【2】
周囲にいる者達の視線を【誘導】する。それは印象的な物程効果は強く、引きつける事が可能。
流石、ランク7であり、所長の右腕だったハンターだ。今は異界で全然見なくなったが、実力は衰えてないみたいだ。
とはいえ、【気配遮断】の効果は俺とネスティスを含めてしまうと三分だけ。急いで移動しないと駄目になる。




