俺の勲章
「……ああっ!! なるほど……そういう事か。よく見ているな。確かにそれは俺だけかもしれない。勿論、外すつもりもないが」
ネスティスが俺に手を見せた意味が分かった。
爺さんが持ってきた装備を身に着けてはいるが、【道化師】が本来着けているのもある。
それは指輪だ。手の指十本に指輪を嵌めている。貴族のように変装するためではなく、【道化師】として必要だからだ。
指輪には耐性が付与されている。属性から状態異常までが全て揃っている。
それがないとまともな装備が出来ない【道化師】が高ランクの異界に挑む事なんて以ての外だからな。
爺さんもそれを新しく用意するのは無理らしい。耐性を付与するための魔力を【死天使】に頼んでいたのもある。だったら、そこだけは昔の装備を使うしかない……というわけだ。
常に身に着けてるわけじゃなく、異界に行く時だけ。映像に映っても、じっくり手元まで見る奴なんているのか? と疑いたいけど、目の前にいたわけだ。
確かに全部の指に指輪を嵌めるのは特徴的ではある。それが出来るのも【道化師】……俺だけだ。
何の効果もない指輪なら可能だが、耐性付きの指輪。勿論、耐性を得るのだから、体に影響はある。属性は相反する物もあり、全属性耐性を付けるのは体の負担が膨大になる。それに加えて、状態異常もだ。
それを俺は体が慣れるように一つ一つ耐えに耐えていった。そうでもしないと、まともな防御が出来ないからだ。
だから、この指輪は俺の勲章でもある。
まぁ……慣れたといえ、指輪なしで耐性があるのかといえば、全くないままなんだが……
「君が【無法者】のファンなのは認めるよ。そこまで好かれるようなパーティーじゃないんだが……以前に俺と直接会った事があるのか?」
レイニーとしてじゃなく、【道化師】として、ストレートに聞いてみる事にした。本人を目の前にして、流石に言うんじゃないか?
次に会う機会があるのか、分からないわけだし。実際は機会はいくらでもあるわけだが……
「それは」
「おい!! そこの見るからに怪しい奴。彼女から離れろ。お前みたいな奴がナンパするような相手じゃないぞ」
ネスティスの言葉に被せるように、俺と彼女の間に誰かが割って入ってきた。それも俺からネスティスを守るように杖を突き出し、後ろに押しやってくる。
その人物は先程ネスティスに無視されたラーン少年だ。無視された事による硬直が解けて、俺達に近寄ってきたわけだ。
俺が無理に彼女の手を引いたところも見た可能性もある。
それに俺の声が部分的に聞こえていたとしたら、以前に会った事があるとか、ナンパと勘違いしてしまったのか?
見た目の怪しさに関しては、俺は何も言い返す事が出来ない。俺自身も少し思ってるぐらいだ。だとしても、所長が用意しようとした服よりかはましだからな。




