怖くないですか?
「あの……貴方が【道化師】様ですよね? 勇者のネスティスと言います。パーティーを組んで頂き、ありがとうございます」
ネスティスはラーンを素通りした後、俺の目の前で止まり、挨拶をしてきた。手を振ったのも誰にじゃなくて、俺だったのか!?
間違ってはいない。間違ってはいないんだが……
「すまない……ちょっと、こっちに」
俺はネスティスの手を引き、人目が付かない端の方へ移動する。
他のハンターには見られてない。お互いにハンターだと思われる服装をしてるから、気にしないのだろう。
「ど、どうしたんですか? 何か粗相でもしました?」
彼女は何か粗相したと思ってるだけで、人間違いをしたとは思ってない。変装したはずなのに、【道化師】だと分かっているんだが!?
彼女はベテランハンターでもない。いや……【無法者】オタクかもしれないが、普通に歩いてきただけだそ。異界での動きなんて全くしてないのに……
「何もしてないぞ。何故、俺が【道化師】だと分かったんだ? いつもと姿が違うはずだ。所長から何か聞いていたのか?」
所長から聞いていたとしても、どんな姿までかは所長自身も知らないはず。俺は爺さんから変装服を外で受け取り、着替えたんだからな。
「所長? ……協会の所長の事ですか? 違います。姿が違うのは……【無法者】として行動するわけじゃないから、何となく、そうするのかな?って……私以外の勇者の初映像を見た事があるので」
「なるほどな。変装を予想していたのは分かった」
ネスティス以外の勇者の映像。それはハンターでなくとも、協会の宣伝として見る事が出来た。
勿論、メインは勇者の活躍。パーティーメンバーは二の次。そうなってしまう事をネスティスも薄々は知っていたんだろう。
【道化師】と【黒猫】が同行するためには、変装するしかないと。
「だとしても、この姿だ。他にもハンターはいたはずだ。現に門前にはハンター達がいるからな」
「それは私が【無法者】の……【道化師】様のファンだからです。背格好や歩き方で大体は」
「…………」
ファンであれ、オタクであったとしても、それだけで判断するのは怖いぞ。
それに……それだけで分かるなら、俺=【道化師】だとバレてないか? 歩き方とか意識した事なんて全くないから!!
「冗談ですよ。ファンなのは間違いじゃないですけど、【道化師】様のトレードマークとなる物があったからです」
「トレードマーク? いつもと違うマスクだぞ。【無法者】のドクロの紋章も服には描かれてないはずだが」
【疾風のブーツ】を履いてるだけで、【道化師】と決めつけるのはない。これを利用してるハンターは結構いるからな。
「【道化師】様の印象に残るのはマスクなのは間違いないと思うけど、実はもう一つあるんです」
ネスティスはそう言い、俺に見せるためなのか、両手を前に出した。
左手には爺さんが渡したガントレットと、右手には手袋。手袋は彼女が用意したようだが……




