朝の呼び出し
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翌日
「ゼロスト。ここに呼ばれた理由は分かっているな」
「まぁ……昨日の勇者の件でしょ? フレアに伝言を頼んでいたんですが……」
いつも通りに協会へ出勤すると、朝一で所長の呼び出しだ。フレアには所長へ連絡するように頼んでたわけなんだけど……奢るのを拒否したせいで、伝えなかったか?
「彼女から話は聞いている。就業時間が終わり、残業になっていたからだと。彼女からの伝言がなくても、話は聴こえていたがな」
「【盗み聞き】のスキルですか? 所長も元はトップハンター、盗賊のトップだった事もあったから
「昔みたいに言うな!! お前と年齢は然程変わらないぞ。引退したのも一年前だ」
「知ってますよ。俺は異界マニアですが、ハンターマニアでもあります。気になったハンターは調べるようにしてましたから」
「言い方が気持ち悪い……それは俺も分かっている。だからこそ、臨時職員として雇ったわけだからな」
異界探索協会 イズン帝国支部長 ジェフ=セキカワ。年齢は二十三。元盗賊のトップハンターであり、ハンターランキングTOP10にも入った事がある強者だ。主にソロで活動して、パーティーには所属してなかった。
二つ名も【影】を持っていた。誰知らずと情報を手に入れている事から付けられた名だ。
ジェフは現役ハンターでいられる程の体を維持しているんだが……引退した理由は、異界探索時に隻眼となり、片足も失ったからだ。
盗賊とって、目と足を失うのは致命的らしい。今は片足を義足で補い、無くした目には眼帯を付けている状態。
とはいえ、姿は男前のままだし、威圧感もある。小麦色の肌に銀色の短髪。身長も百八十と俺よりも五センチも高い。
ジェフの異界探索の功績によって、国と協会本部から、イズン帝国支部の所長に最年少で選ばれた。
盗賊ギルドの所長もしていた事も選ばれた理由だろう。今は別のハンターが担っているが、繋がりは消えていないはず。
様々な情報の入手は盗賊ギルドか商人ギルドが得意としていて、そこから協会へ仕入れる事も可能というわけだ。
「そうそう!! 俺は臨時職員なわけで……そういうば、美人秘書はどうした? いつも一緒にいるだろ? 」
コイツは所長特権として、美人秘書を補佐として付けている。勿論、影が選んだわけだから、優秀なのは間違いない。名前は覚えてない。
いや、その名前が本当なのかどうか……秘書とではなく、別の形で見た事があったような気がしなくもない。
「アイツは席を外して貰っている。その方がお前には都合が良いはずだ。俺も下手に口が滑りそうになるかもしれないからな。今は所長と臨時職員という関係だろ? 口調は崩し過ぎだ。そこは気にしろ」
俺と所長であるジェフは知り合いだ。とはいえ、友達でもなく、仲間でもなかった。どんな関係と言われれば、説明しにくい。
「はいはい……分かりました。勇者の件は、俺に任せようとするのが間違いでしょ。相談室のメンバーになるのも本当は嫌だったんだ。ハンターマニアだが、本人と直接関わるつもりはない。そんなのはアイツ等だけで十分だから」
ハンターの情報は知りたいが、直接関わろうとは思わない。それで何度酷い目にあった事か。
それが勇者ともなれば、余計に面倒な事が起きる可能性が十二分にある。今もそれに含まれるから。
「勇者からご指名を頂いたんだから、仕方ないだろ。それに……お前だからこそ、勇者の成長に期待するんだ。【無法者】のメンバーが
口を揃えて、言ってる。このパーティーは【道化師】がいなければ、成り立たない。進化したのは【道化師】の力……ゼロストの能力だと」
「その二つ名で呼ぶな。誰が聞き耳を立ててるかも分からないんだから。【道化師】の正体は秘密になってるんだよ。知ってるのは、【無法者】メンバーとジェフ、後は……人数は少ないはずだ」
所長が美人秘書をこの場から外した理由。
それは俺、レイニー=ゼロストが【無法者】メンバーの一人、【道化師】だからだ。そして、一応は【無法者】のリーダーでもある。まぁ……させられていたと言った方が正解だ。




