有望株のハンター
「おっ……ネスティス発見。すでに爺さんから貰った装備を着けてるな。ちゃんとしたハンターの姿に見えるもんだ」
ネスティスは帝都の門の側にある噴水ではなく、少し離れた大きな木の下で俺や【黒猫】を待っているようだ。
噴水は多くの人の待ち合わせ場所になっているからこそ、目立たないようにしてくれているんだろう。
新しい勇者の情報は帝国で流れているが、彼女だとはそこまで認知されてはいない。すでに活躍している勇者達を記憶しているはずだ。
「【黒猫】の方はまだのようだな。いや……俺がネスティスに話し掛けるのを遠目で見てそうではあるか。どっちみち、俺から話し掛けるしかないからな」
門は帝都に入るための入口でもあり、外の世界に繋がる出口でもある。
帝国のハンター達はここから異界に向かうわけで、今も俺達以外のハンター数人が待ち合わせてをしているわけだ。
こんな姿だからといって、別のハンターと勘違いされてもおかしくない。
ネスティスが一人で待っている事で、先に声を掛けるハンターが出てくる可能性もある。
彼女が【道化師】なのかと相手に尋ねたとして、『そうだ』とは答えないだろう。一緒にされたくないという意味で。
「ん? ネスティスが手を振ってるな。知り合いでもいたのか? 初の異界探索だ。見送りに来る奴がいてもおかしくないか。ここはその相手が離れるまで様子見だな」
それにしても、ネスティスにハンター仲間がいたのは初耳だな。だとしても、本部の依頼であり、救助となると、そのハンターをパーティーに加える事は無理だ。
所長はあるとして、師匠である俺に黙っている事はないだろう。……ないはずだ。
単なる知り合い? 孤児院の住んでいる子供達か。
見回してみるが、それらしき子供達もいなければ、孤児院の院長らしき人物もいない。
「おっ!! アイツか? 男という事は【黒猫】じゃない。ネスティスが変装してる【黒猫】に気付けるわけがないか」
彼女と同年齢ぐらいの男のハンターが近寄っていく。あちらも手を振り返しているぐらいだ。
確か……ランク2のラーン=アメンだ。職業は魔法使いだったはず。ハンターとしては有望株で、今のところはソロだったか? 助っ人としての異界参加が多い。経験値を積んでいて、異界も三つは探索済みのはず。
魔法ギルドで知り合った? ネスティスも泊まり込みでスキルを手に入れてたからな。教えてくれてたのが、ラーンという可能性もある。
依頼が決まった後、彼女は職人区を訪ねている。爺さんと会う前に魔法ギルドに寄ったとしてもおかしくはないか。そこで彼に話をしたのか。
もしくは、ラーンがネスティスの姿を見て、爺さんと話をしているのを盗み聞きしていたとか……それは結構ヤバい事になるわけだが。
「あっ……」
ネスティスが動き出した。けど、ラーンを素通りしていく。彼の事に全く気付いてないようだ。そもそも知り合いじゃなかったのか?
ラーンの方は彼女の行動で固まっているだが……




