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また後で

「嬢ちゃんに渡すのはこれだけだ。依頼が終わっても返す必要はないからな。トレードマークを着ける時はタダでいいが、それ以外は金を取るぞ。安くはしてやるがな」


 爺さんはネスティスの装備を全て渡し、相談室から出ていこうとする。


 いや……俺の装備は? 爺さんに貰えると思って、装備は最低限の物しか持ってきてないんだが……


「あの……途中まで一緒に行きませんか?」


 帝都の入口である門と職人区は繋がってない。距離的にはすぐに別れる事になるはずなんだが……


「残念だが、先約がいるからよ。ソイツはあまり人と会いたがらない奴でな。一緒に行ってやれないんだよ」


 先約というのは多分……きっと、俺の事だろう。【道化師】と知られたら、ついて来ると言い出しそうなのを察してくれたわけだ。


「うぅ……先約がいるなら仕方ないです。私は先に行きます。師匠もまた後でお願いしますね」


「おっ……おう。無事に帰ってきた時、報告に来てくれ」


 ネスティスの予想外の言葉に返答が遅れてしまった。


 爺さんが一緒に行けないのなら、俺ともう少し話すか、門まで見送りに来て欲しいと頼むかと思ってたぐらいだ。


 それが足早に爺さんよりも先に相談室から出て行ってしまった。


「……前から嬢ちゃんの事を知ってたのか?」


 爺さんはネスティスがこの場からいなくなった事で、疑問に思った事を聞いてくる。俺が【道化師】だと知ってるんだから、当然ではある。


「残念だけど全く知らない……覚えてないのが正しいのか? 誰かと勘違いしてるわけではなさそうなんだよな」


 ネスティス自身、【無法者】メンバーの姿を知っていて、【道化師】と名指ししたぐらいだ。間違ってはいないんだろうが、俺の中では全く記憶がない。


 あるとすれば、彼女がハンターになる前の話になる。でなければ、ハンターオタクの俺が忘れるわけがないと思うんだが……


「正体がバレているという事は? 嬢ちゃんを失望させたくなくて、黙ってやってるんだが。気を使うの結構疲れるんだぞ」


「黙っていってくれたのはそういう事か!? 失望というのも大概失礼なんだが……助かった。正体は知られてないはず。疑われている……知っている感はあるにはある。だが、師匠と【道化師】を別個にしてただろ?」


「そう言われたら……そうだな。師匠も知らないとは言わないか」


「それだ。ネスティスは【無法者】の話を俺にするんだが、俺が【道化師】であるのかを尋ねられた事はないんだよ」


【道化師】の正体が俺だと知っていたら、最初にでも聞いてきそうなんだが、全くないから。


 とはいえ、俺を相談役に選んだ事だけでなく、師匠呼びした理由も謎だ。【道化師】と知った上でなら、理解は出来るんだが……


「それは単にお前が誤魔化すと思ったからじゃないか? 出来る限り、正体を隠してるんだろうが」


 確かにそう!! 確固たる証拠がなければ、俺は誤魔化すと思う。間違いない。


 例えば、爺さんが正体を話したとなれば、証拠になってしまうわけだったが。


「それとも……お前が嬢ちゃんの事を思い出すのを待っているかだな」

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