無法者というパーティー
「師匠には言いましたよね!! 私は【無法者】のパーティーに入りたいんです。他のハンターと一緒にするのは浮気するみたいで嫌なんです!!」
ネスティスにはお目当てのパーティーが存在する。
【無法者】。そのパーティーの名前を知らないハンターはいないだろう。
【道化師】【卑怯】【犠牲】【殺戮】【死天使】の二つ名を持つ五人。
二つ名持ちは有名ハンターの証みたいな物。とはいえ、ろくな名前じゃないのは確かだ。
それでも、全異界探索協会のランキング、パーティー部門で一位を取った事がある。それも勇者パーティーを抑えてだ。
ネスティスのようにハンターに成りたてでも知っているのは、異界探索の映像が世界に流される事があるから。
各地の異界対策にハンターを募集している。その宣伝のためにも、彼等の映像を流す必要があった。
主に流すのが華のある映像。ランキング上位のハンター、注目の新人の映像等。
ソロであれば、勇者の映像が多いが、パーティーであれば【無法者】が映し出される事が多かった。
その映像は人気があった。他のハンター達では不可能とされる事を、彼等は何度も魅せるからだ。
それも途中から【無法者】が拒否して、流される事はなくなったけど。
他のハンター達から加工された映像だと苦情が殺到したのもある。
協会にも迷惑が掛かったりもしたぐらいだ。
なので、【無法者】嫌いのハンターも多い。そんな中で、そのメンバーになりたいというのが珍しい。
それも周囲に期待が上がる勇者がだ!!
相談を受ける身となっては、迷惑この上ないからな!!
「いや……【無法者】は活動を止めてるだろ? 再結成するかは分かってないはずだ。それを待っていたら」
しかも、【無法者】のパーティーは現在活動をしていない。そのパーティーで異界に入った映像が送られてくる事は今のところない状態だ。
だからといって、彼等が突如として消えた。メンバーが異界で死んだ……という事はない。
全員ではないが、ソロで活動しているメンバーもいて、その映像は届いている。
「大丈夫です。【無法者】の皆様は私と同じで、修業してる最中なだけだと思います。再結成するまでに強くなって、アピールする必要があるんです」
この会話も彼女に何度もした。
ネスティスは相談の最初から言ってたからな。考えを変えない頑固者だ。この件に関してだけは、提案を受け取らない。
「はぁ……結局、この話の繰り返しになるんだよな。異界に行くのはまだ早い。ソロで行くつもりなら、回復か罠等の危険察知、どちらのスキルはあった方が良い。俺が薦めるのは」
回復系は神官のスキル。危険察知は盗賊のスキルだ。勇者特権で、ギルドによる勉強は可能のはず。
習得するのが早いとはいえ、どれかは遅くなっても問題なし。苦手なのが判明するわけで……
「危険察知は……職業、盗賊のスキルですよね?」
勇者として、イメージ的に盗賊は印象が悪いか? 覚えられる最初のスキルが危険察知系とも限らない。【罠感知】なら良いけど、【鍵開け】や【盗み】の可能性も十分ある。
彼女には一応踊子の【身のこなし】のパッシブスキルがあるから、ある程度は回避出来てもおかしくはないと思う。
俺が薦めようとしたのも回復の方だし。
回復用の道具はあるが、それにも限界がある。荷物は出来る限り少なく。異界の宝物を狙う場合は余計にだろう。
「そうだな。勇者としてのイメージを考えるのも分かる。俺としては」
「盗賊の危険察知系スキルにします!! 【無法者】に盗賊はいなかったですもんね。そのスキルは所持しておくべきです。ありがとうございます!!」
「ちょっ!! はぁ……これは俺のせいじゃないから」
俺の話を最後まで聞かないで、ネスティスは早々と相談室から出ていく。明日から……いや、今日の内に盗賊ギルドに突撃しそうな勢いなんだが……
結局、決めるのは依頼者本人。俺は全然悪くない。
「結局は残業して、この結果か。さっさと上がろう」
就業時間は過ぎ、三十分の残業だ。勇者からの相談は、所長にだけは連絡しなければならない。
ネスティスの相談役になる面倒事の一つでもある。協会からしても、勇者の扱いは重要なわけだが、それはそれ。
「後は任せた。所長に報告するのは明日にでもすると言っておいてくれ」
「私ですか!? 貸しですからね。報酬が入ったら、何か奢ってくださいよ」
「相談役を押し付けようとしたんだから、それでチャラだぞ」
俺は裏に行き、退勤のスイッチを押す。アイツに呼ばれる前に、フレアへ連絡を押し付けて、退散退散。




