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怒涛の如く


「レイさん、レイさん!! 私が昨日休んでる間に何かあったんですか? レイさんが別支部にヘルプへ行かないと駄目とか。勇者のネスティスさんがついに異界へ行く事になったらしいのに、レイさんがそれを見ないとか。それに」


「待て待て待て!! 出勤するなり、怒涛の如く、話題を振ってくるなよ」


 昨日、フレアは仕事が休みだった。何があったと言えば、それは俺と勇者、所長の三人だけで、他の職員達は普通に仕事をしていただけだぞ。


 二日前の出来事も忘れてそうだ。俺が昼休憩を一緒に行かなかった事に怒ってた事や、八つ当たりをしたせいで、先輩の受付嬢に説教された事も。


「それに……俺に対して怒ってただろ? 先輩に説教もされたと聞いた。俺の事を嫌に」


「そんな事はないですよ。二日前は二日前。今日は今日。レイさんを嫌う事はないです。レイさん成分は私にとって必要なんで」


 嫌われてなかったのは良い事だが、普通に聞くと怖い事を言ってないか? ネスティスよりも依存度がヤバい気がするのは……気のせいにしておこう。


「はいはい……それは俺も気が楽だ。出張の事は昨日の聞かされた。ここに寄らず、すぐに行きたいところだったが」


「行く前に私の顔を見に来たわけですね!! 一緒に行くのもありだと思います」


 どこまでポジティブなんだ? 全くもって、そのためじゃないから……


「残念ながら……フレアを連れて行くのも無理だぞ。まだ新人なんだから、そこはきちんとしないと辞めさせられるからな」


 俺も人の事は言えないが。クビにされないために勇者に同行するまである。


「俺が来たのは勇者の見送りのためだ。ネスティスは装備を受けるため、協会に来る事になってるんだよ。顔を出しておかないと、五月蝿いだろうしな」


 ネスティスは爺さんの装備を受け取りに、協会にやって来る。


 そこで俺もネスティスを見送る。彼女の事だから、異界へ行く前に挨拶は絶対するはず。


 俺が協会にいなければ、家に押しかけるなり、帝都内を捜し回る可能性も。それは流石に言いすぎかもしれないが……


 ここで挨拶を済ませておけば、【道化師】=俺だと思わないだろう。


 パーティーの集合場所として帝都の門を所長が選んでくれたのは正解だったわけだ。


「そうなんだ!! あのヤバそうな人は勇者に武器を持ってきた職人だったんだね。まだ開店としてないのに中にいるし、所長が対応してるから、誰なんだろう? と思ってたんだよ。協会本部の人なのかとドキドキしたけど」


「……俺も誰なのか気になる」


 爺さんはネスティスが出発するまでに装備を協会へ持って来るとは言ってたけど、開店前なんて……


 俺も念のためにフロアを確認してみる。本部の人間が勇者の出発を見に来る可能性も全然ある。


 本部の人間が勇者の装備に文句を言ってきたら、洒落にならない。渡す場所を変える必要も出てくる。


 フロアにいたのは……爺さんだ。近くに大きな袋がある。多分、それが勇者の装備だろう。


「おっ? そこにいるのはどう」


「ゼロスト!? お前もここに来たのか? 勇者がこっちに来るまで、こちらに来ておけ」


 俺の視線にすぐさま爺さんと所長は気付いたようで、側に来いと言ってきた。


 爺さんは危うく俺を【道化師】と呼ぼうとしたのを、所長が言葉を重ねてくれたので助かった。

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