スキル【剣刃】
「……なるほどな。力がまだ足りてないか。速さで補うにしても、初期武器よりも軽くするべきだな。だとしても、【剣刃】のためだけとなると……」
ネスティスは【剣刃】を爺さんに向けて放った。当然、爺さんは避けもせず、受け止める。それも一歩も後退はしていない。
彼女の【剣刃】の威力が足りてないからだ。ハンターになりたてなのだから仕方ないところではある。力もそうだが、良い武器も持ち合わせてない。
とはいえ、それだけじゃない。【剣刃】は速さも重要になる。
迅速な斬り払いと文章化されているんだが、彼女の振りはそこまでに達してなかった。
その振りの速さで放たれる真空刃の速度が変わる。速度が上がれば、威力も追加される。
「待て待て。そこまで細かく見るべきじゃない。見る必要はないんだけど……」
思わず、独り言が漏れてしまった。流石にネスティスも力試しに集中して、こっちの声は聞こえてない事を祈るしかない。
「……五秒か。立ち直りはまだ早い方か。けど、戦闘中だと厳しいな。集団戦となったら、尚更……使いどころだな」
ネスティスは【剣刃】を放った後、即座に爺さんに追撃を仕掛けたわけじゃない。そうするべきなんだが、彼女の体が動かない。
スキルの使用後、一時的に体が硬直する事がある。それはAPの消費が原因であり、体が重く感じるのだ。
それの確認もあって、ネスティスは最初に【剣刃】を使用したはず。
近距離では使えない。遠距離、しかも不意討ちでようやく使えるぐらいか。異形に当てるには速さが重要になってくる。
「ふぅ……ふっ!!」
ネスティスは一息入れた後、一気に駆け出して、爺さんとの距離を詰めた。そのスピードは申し分ない。
勿論、彼女はそのスピードに乗っての一撃を狙っているわけだ。
その威力は当然【剣刃】を上回る。八十%ではなく、百%近くは行くはずだ。
「そんなもんか? なりたてのハンターなら問題はないんだがな」
爺さんは大盾で防御して、それを難なく押し返す。
押し返す事で体勢を崩すものだが、ネスティスは【身のこなし】により、倒れる事もなく、攻撃を継続させる。
渾身の一撃で駄目なら、手数で押す。剣の攻撃だけでなく、体を痛めるのを承知で蹴りも織り交ぜる。何度も衝撃を与えて、盾を落とさせるつもりか?
「発想は悪くないが……」
爺さんが耐えれる事は分かってる。大盾を落とす事はない。職人の体力、特に腕の力は凄い。爺さんに関しては、並のハンターでは太刀打ち出来ない程だ。
「怒涛の攻撃だな。俺はそういうのは嫌いじゃないぞ」
爺さんは勇者の攻撃に後退し始めた。言葉とは裏腹に余裕がないと、彼女は受け取るかもしれない。
だが、爺さんの後退は押し負けたわけじゃなく、誘い込みだ。
広場、闘技場には無数の穴が開いている。そこから色液弾が前後左右、上下から発射されるようになっている。
ネスティスは攻撃だけに集中して、色液弾を回避出来るか。その行動次第で、爺さんも装備を考える要素の一つに入れるはずだ。




