身体検査
二人の関係性。ここまで爺さんがネスティスに心を許すのは予想外だし、違和感がないわけでもないが……それはそれ。
ネスティスを孫のように感じたのかもしれないし、彼女が爺さんの話を素直に聞いたんだろう。
今回の依頼内容、どの異界なのか、パーティーメンバーの話をネスティスはしたらしい。
当然、彼女の口から【道化師】の名前が出てきて、【無法者】の話になる。そして、【道化師】の正体は!! って、そうなる展開じゃないのか?
なのに、その話題に一切ならない。俺が【道化師】と知ったら、ネスティスはすぐに飛び付くと思ってた。
けど、ネスティスはいつもと変わらないし、爺さんは俺を『お前』と呼び、【道化師】と呼ばないようにしてくれている。
それが違和感でしかない。とはいえ、バレずに済んでいるのを、聞き出そうとするのは馬鹿のする事だ。
今は一旦保留にしておこう。
爺さんはネスティスのお陰で機嫌がすこぶる良い。彼女に合った装備だけじゃなく、俺の変装用の衣装も頼めるかもしれない。
「……八割方というのは、他にする事があるわけだろ。それの続きをするのか?」
何事もないように、俺は話を進めていく。
「そうだ。そのためにお前を待ってたまであるからな。嬢ちゃんの力を言葉や口だけではなく、その目で見る必要があるだろうが。俺もそうだが……相談役なんだろ?」
「……そういう事か。体は大丈夫なのか?」
爺さんは俺をキッと睨む。それで爺さんの考えが分かった。勇者の相談役としてじゃなく、【道化師】の俺に見せる必要があると考えての行動だろう。
「伊達にこんなに筋肉を付けておらんわ。それとも代わりにやってみるか? その方がお前も分かりやすいのなら、構わないぞ」
「それは無理。攻撃に耐えられる自信は全くない。装備する事自体無理だろ」
爺さんが何をしようとしているのか。俺はそれを知ってるし、見た事がある。
「あの……何をするつもりなんですか?」
ネスティスは今から何をするのかを分かってない。
「爺さんがネスティスの攻撃を受け止めるんだよ。それで癖とかを把握して、装備の調整をする。勿論、この機会に俺もネスティスの動きを見させてもらうぞ」
身体検査の続き。爺さん自身が、依頼者の攻撃を受け止める。職人の中でそんな事をするのは、爺さんぐらいだ。
直接受けるからこそ、ハンターの力を一番分かっている職人で、爺さんの名が挙げられる事が多々ある。
普通の職人では無理だから。そのために体を鍛えないと駄目だし、大怪我もする。回復魔法で治療し、何度も繰り返す必要がある。
【卑怯】や【犠牲】の時は、爺さんも本当にヤバかった。【死天使】がいなかったら、死んでたぐらいだ。
けど、爺さんはそのやり方を止めようとはしない。ハンターが本気で挑戦をしなければ、相手にもしない。
勿論、そのための装備を爺さんをするし、渡す武器も考えられてはいて、死ぬまでには至らない。例外はあるけど……
ここでのネスティスの反応で、爺さんの対応が変化する可能性もある。だからといって、爺さんがいる前で助言も出来ない。
「分かりました!! 私も全力を出します!! 異界前に師匠に動きを見せれるのは嬉しいです」
俺が心配するまでもなかった。彼女は猪突猛進。全力でぶつかるタイプだったわ。




